ルネサス・エレクトロニクスが従業員の2割削減を進めるそうだ。まあ、致し方あるまいというのが大方の感覚だが、その状況に関する報道を見て驚いた。
想定の早期退職応募人員は5千数百人だったが、現実の応募者は7,511人にのぼったというのである。
開示情報は少ないから、実態のほどはわからないが、深刻な問題を孕んでいそう。
と言うのは、一般に、この手の事業は技術競争力の根源がエンジニア集団だからである。人員削減が適正人員化や少数精鋭化をもたらすならよいのだが、この数字を見ると逆の可能性を感じてしまう。そんな方向に進めば、組織的に知恵が生まれなくなってしまう。下手をすれば、ドンガラ作りの企業になりかねない訳だ。組織は、一旦歯車が狂えば、悪循環がとまらなくなる。そんな兆候でなければよいが。
といって、簡単な解決策は無い。
もともと、経営不振に陥った理由は、この企業独自の問題とも思えないからだ。一番厄介なのは、半導体発注側の電機産業の体質。かつて繁栄していた頃の、行け行けドンドン型モデル開発の仕組みを続けており、これに対応していれば、当然ながら、その赤字のツケが回ってくる。いかんともし難いものがあろう。
自動車用半導体で圧倒的なシェアがあるから、なんとか持ちこたえることができるといったものではないのである。というより、こちらはこちらで、かつて世界に羽ばたいた半導体事業の夢を追いかねない体質も一部に抱えていそうだから、堅実に事業を進めていたかはなんともわからぬところ。
もし、そんな状態だとしたら、スリム化では困難を乗り切るのは容易なことではなさそう。抜本的に、事業構造を変え、体質転換を図るしかないと思うが。
ともかく、競争力を勘案して、無理なものは諦めるしかない。鉄則である。
できないとわかっているにもかかわらず、皆で鉢巻を締めて夜鍋して頑張るというのは、問題の先送り。誰もが、このままでは打開できそうにないと思っているから、浅知恵しか生まれない。エンジニアはどんどん疲弊していく。
時間稼ぎが奏功する可能性は滅多にない。
それよりは、困難でも、チャンスに賭けることでは。プロなら、そんなチャンス到来に気付いていない筈がなかろう。
もちろん、失敗すればすべてが瓦解する。間違いなくハイリスク。しかし、緊張感が張り詰めれば、まともな組織なら、壁を乗り越えるための画期的な知恵が生まれてくるもの。スリム化によるコスト削減での当座の生き残りではなく、スリム化を口火にした挑戦開始であって欲しい。
(WSJ日本版の記事) ルネサス、18%の人員削減に伴い特別損失850億円計上へ 2012年 10月 4日 7:28 JST