■■■■■ 2012.10.23 ■■■■■

  トッププロの真似ができるか考えさせられた

「80歳になっても夢を捨てなければ立ち上がれることを示したい。限界まで挑戦し、その結果として(2013年に、エベレスト)山頂にたどり着ければ最高の幸せだ」と三浦雄一郎さんが語ったという。70歳で初登頂し、75歳で再登頂だから、なんと3度目。
そう言えば、故三浦敬三さんも、77歳でキリマンジャロ滑降、88歳でアルプス・オートルート完全縦走、99歳でモンブラン山系氷河滑降と、驚異的な記録を残している。自宅で日課の筋力トレーニングをしながら、「いくつになってもスキーを滑り続ける」と意気軒昂な様子をテレビ番組で拝見したことがあるが、その意志の強さには感嘆させられた。
トッププロフェッショナルの自負心とはたいしたものである。

そんなこともあり、高年齢の一流人材の姿勢を描いた、最近出版本を読んでみた。ライターが集まって作った極く軽い本なので、アッという間に読了。若者への人生論的な調子で描いている部分は通俗すぎてイマイチだが、なかなか面白い。

ここで取り上げて見たくなったのは、三浦型のピカ一志向者はスポーツ界では当たり前なのかも知れぬと感じたからでもある。おそらく、目標はあくまでも高くないと気がすまないのだ。これはなかなかできることではない。
ヘナチョコアマチュアがこれを真似すると無謀な挑戦になりかねないことが知られているからである。一流のプロになると、自分の力量をしっかり把握しており、限界ギリギリの目標を設定する能力を身につけている訳だ。残念ながら、その辺りのスキルを磨くヒントになりそうな話は無い。ただ、年齢とともに下がらない手の能力開発をしていそうな感じはする。それを武器に、若いバリバリの人の身体能力と比べれば劣っていても、十分やれると見ていそうだ。
そこら辺りが、トップの地位を守る秘中の秘かも知れぬ。
例えば:
  ○70歳 ボートレーサー
・・・70歳の人間がですよ、子供や孫のような20代、30代の子たちとノーハンデで目いっぱい、真剣勝負ができる世界がほかにありますか?・・・それはもう楽しいですよ。
  ○46歳 プロボクサー
・・・自分はまだ強くなっている。・・・だから練習量も落としていない。
そして、経験という最大の武器を身につけています。・・・20代30代の自分が相手だったら・・・お前なんかとレベルが違うよ、ってね。

しかし、肉体的に衰えるのは避けがたいものがあろう。そこで、それを前提として、プロとしてやっていける方法を考案していそうな方もいらっしゃる。「経験」を生かし、頭で勝負する訳だ。流石。
例えば:
  ○85歳 調律師
さすがに低い音と高い音がだんだん聞き取りにくくなってきた。・・・耳は悪くなったが、それなりのよさが出てきた
  ○85歳 サックス奏者
(動脈瘤の手術後)音が半分になった。・・・悔しいけどそれも受け入れるしかない。自分ができることをやるだけさ。・・・明日も新いものを吹いてやろう
  ○97歳 チェリスト
(90歳を過ぎて)やっと譜面に人が入り込む隙間ができた気がした・・・理解力は年とともに増えていっても、技術が衰えていく。・・・体力的にかなり難しい・・・でも、だから生きるってのは面白いのでしょう。

こうして眺めてみると、老人は肉体的な衰えはあるものの、頭脳は落ち込むことは無いのでは。筋肉が衰えるから、反応スピードは落ちるに違いないが、鍛錬を続けているなら判断力は逆に向上するものかも。高齢になってもの覚えが悪くなったと語る方が多いが、それは、合理的判断をする上で無駄と思われる情報を、無自覚のうちにできる限り切捨てているということかも。したいことがあり、それに向けて全精力を傾注すれば、それに合わせた記憶の取捨選択が行われるから、プロは若者に伍してやっていけると見ることもできるのでは。
つまり、一般人がボケがちなのは、記憶の取捨選択が出鱈目だからということではないか。それが、進めば、無意識で身体を動かしている領域でも発生し始め、滅茶苦茶な取捨選択が始まるのかも。

実は、こんなことを考えてしまったのは、電車のなかでこの本を読んでいたから。座っていたすぐ前が通路を遮るドアだったため、人が通るたびに、気になって読書が中断したのである。
それがどういう関係があるのだ、と言われそう。

驚いたことにドアを開けることができない人が何人もいるのだ。どうやれば開くのかわからないのである。・・・ソリャお年寄だと、自動ドアのセンサ部分はすぐにわからないだろう、などと邪推しないように。そういう事例が無いとは言えないが、これまでの経験からして、小生はその見方には否定的。
それではどういうことかといえば、ヘッドホンをかけて、スマホを手に持ち、ファッショナブルな服装できめているような人がドアを開けるのに苦心しているのである。開けられないのは、すべて若い人。一方、高齢者はなんの迷いもなくドアを開けて通るのだ。
ご想像がつくと思うが、このドア、自動の横開きではない。それに気付かないと、壁に貼ってあるラベルの「押す」を力まかせに何回も押すことになる。おかしいと思っても、思い込みを変えることができないのである。
それを見て、ふと思ったのである。これって、ボケ症状と違うかネ。

(記事) 三浦雄一郎さん80歳でエベレスト挑戦「人類の限界超えたい」 2012年10月12日 18:55 スポニチ
(本) 徳間書店取材班「最高齢プロフェッショナルの条件」徳間書店 2012年9月30日


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