■■■■■ 2012.11.1 ■■■■■

  大半のアレルギー症は文明病だろう

関東地域の2013年春は、対前年比2.3倍の花粉が到来するらしい。この予想が当たれば、首都圏の電車は、マスクをした乗客だらけになるということか。
QOLは最悪。喘息体質に陥った方などえらいこと。フーンで済まされなくなってきたようだ。と言っても、花粉源の林を伐採するのは無理だから、重篤な方はゴーグルと防塵マスク装着しかないかも。コリャ、たまったものではないナ。

昔から、アレルギーで悩む人はいたが、極く少数だった感じ。そのかわり感染症患者は多かった。衛生状態改善と薬物治療の目覚しい進展で、後者が激減した訳だが、それと引き換えに、アレルギー症状がでてきたように思える。

分野は違うが、素人目には、抗生物質耐性菌MRSA問題とそっくりに映る。MRSAは、もともと増殖力が弱く、他の細菌にやられっぱなし。蔭に隠れるように密やかに棲んでいたのに、抗生物質で競合が消されたから俄然大増殖という訳。
健常者なら、どうということもない菌なのに、抵抗力が落ちていると命を奪われかねないから恐ろしい。今のところ、消毒徹底化で対処するしかないそうで、実に、厄介極まる。・・・身体の免疫反応も昔は細菌への対応が主だったが、清潔な環境になってしまったから、花粉のような異物への反応が俄然目立つようになったということでは。

考えてみれば、ことは花粉症にとどまらない。食材でのアレルギー発症者も増えている。しかも、今迄ほとんど耳にしなかった果物アレルギーもポツポツ発生し始めているという。花粉症の交叉現象らしく、類似成分が含まれる果物を食べると咽喉頭閉塞感に襲われるそうだ。
これに限らず、アレルギーを引き起こす食物の範囲は広がる一方でこまったもの。
そして、なんといってもたまらぬのが、子供の頃のアレルギーは大人になると消滅するとの経験則が成り立たなくなってきたこと。成人後の突然のアレルギー発症が増えているようだから、そのうち、老人の方がアレルギーになり易いと言われるようになりかねまい。なにせ、皮膚が痒くてたまらないアトピー疾患も、以前のように子供の病気とも言えなくなってきたようである。医者にかからない人も少なくないので、余り顕在化していないようだが、とてつもない患者数に達している可能性もなきにしもあらず。
ともあれ、今やアレルギー疾患は、なにがなにやら状態。

こんなことを言うと、科学が対応していないように聞こえかねないから一言触れておく必要もあろう。この分野、科学の進歩で沢山の人の命が救われてきた。大成功だったのは間違いない。調べたことはないが、助かった喘息患者の数は膨大だと思う。対処療法ではあるものの、重篤なアレルギー症状をなんとか抑えることができるようになった賜物。しかし、全般的なQOL改善の進展については今一歩。患者数増加で個別指導では対応しきれなくなっているというのが実情だろう。
要するに、アレルギーとボチボチつきあっていくしかない訳だ。たまらん時代。
もしかすると、すでに、小学生が互いに「君のアレルギーは何?」と質問し合う状況かも。

こうなると、ゆくゆくは、アレルギーも生活習慣病的な扱いにするしかなかろう。そう思うのは、どんなアレルゲンに反応するのかの診断が網羅的にできるようになってきたからである。どの手の物質に反応し易いか、自分で知っておいて、自分で対処策を考える時代がもう来ているのだ。当然ながら、時々、IgE量を測定し、アレルギー症勃発のリスクを推定することで、普段の生活をコントロールすることになる訳だ。実に面倒だが、アレルギーを防ぐにはそれが一番手っ取り早そう。

ただ、本来は、そんなことより、アレルゲンが体内に過剰に入らないよう、バリア強化の努力が筋だろう。
例えば、皮膚にしても、ケラチン層-表皮-神経組織のある真皮という構造なのだから、表面が潤っていて細菌が棲みついているほど、アレルゲンが内部に入りにくい訳で、そんなケアに変えていく必要がありそう。
腸にしても、同じこと。腸内常在細菌が上手く活動してくれなければ、多量のアレルゲンを吸収してしまう。免疫反応物質を多量に含む蛋白質や消化に時間がかかる油脂を大目に摂ったり、大食を控える生活に変えるようご指導を頂戴することになりそう。もっとも、正論を言えば、ストレスを減らすことなのだが。なにせ、ストレスで、食欲が一発でなくなったり、長く便秘あるいは下痢したりと、腹の調子が一変することを体験で知っているのだから。腹が不調なら、アレルゲンが大量に入ってくる可能性は極めて高い訳で、そうなれば、過度な免疫反応に繋がらない方が不自然。一度でもアレルギー症状を呈してしまえば、以後、身体は敏感になってしまう。
まあ、いわば文明病。従って、対応は難しそう。

(C&ENの巻頭特集記事) Eating Without Fear: Treatments For Food Allergies Immunotherapies and drugs offer the promise of safety to food-allergy sufferers and their loved ones By Lauren K. Wolf Chemical & Engineering News October 22, 2012
(ウェザーニュース) 2013年花粉飛散傾向


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX