「inGenius」という本に目を通してみた。著者は、工学教育でゴードン賞を受賞した有名人。
この本、すでに邦訳版が出版されており、スタンフォード白熱教室講師の著作という紹介が一番通るか。
小生はそのTV番組を見たことが無いないので、その辺りの話はよくわからない。ご勘弁のほど。
ともあれ、序文タイトルが秀逸。
Ideas aren't cheap − They're free
その核心は以下の如し。
The best way to predict the future is to invent it. [by Alan Key]
We are all inventors of our own future. And creativity is at the heart of innovation.
これに同意するか否かで、この本の価値が決まる。もともと、そう思っている人は、様々な逸話を楽しく読むことができよう。たとえ、すでにわかっていることだらけだとしても、かえって意気が上がってくる筈。
しかし、冷静かつ分析的に読もうとされる方はおそらく「つまらん」で終わるのでは。こんなこと今迄語り尽くされている、と感じるからである。
要するに、いかにも米国西海岸流の教育ということ。ベンチャー志向の風土に合わせた、最強の実践本と言い換えた方がわかり易いかも。「ポジティブ・シンキングでなけりゃ、碌なアイデアは出ないヨ」と実感させてくれる書となろうか。
先生のアドバイスを梃子にして、自己変身を図り、一丁挑戦してみようと考える人達向けのもの。
当然ながら、日本の大企業流だとチト違うかナ。比較するとこんな感じではないか。
シーリグ流:
・できると思ったらできる。
・できないと思ったらできない。
日本流:
・やりたい思ったらできるかも。
・できないといわれている理由を考え、
それを突破する方法をじっくり考えてみよう。
それより、企業内での実践教育でなく、大学教育カリキュラムにブレインストーミングの進め方を入れることの方が大きな違いを感じさせる点かも知れぬ。・・・まあ、羨ましい限り。と言っても、それは大学の体質問題ではなく学生の姿勢の話。
彼等は、人生を賭けてやりたい事があるからこそ、教育を受けるべく入学してくるのである。そこで、ミッションを研ぎ澄ませ、挑戦に役立ちそうなことを身につけるべく、全力疾走で学ぶ訳である。「創造的緊張感」の下で学生生活を送っているということ。
必要な単位を取得できるだろうかとか、希望の企業に就職できればよいのだが、といった似非緊張感(実は不安感)しか持てない日本の大学生とはえらい違い、と言ったら余りに失礼だろうか。
(The Book) Tina Seelig: "inGenius: A Crash Course on Creativity" HarperOne 2012/4/17
(邦訳) ティナ・シーリグ(高遠裕子訳):「未来を発明するためにいまできること スタンフォード大学 集中講義II」阪急コミュニケーションズ 2012/5/31