■■■■■ 2012.11.19 ■■■■■

  まともなシンクタンクが欲しい

雇用を支える基幹産業の状況を見れば、この先、不況風が強まること間違いなしというのに、衆議院選挙である。
トンデモ人材だらけの民主党政権だったが、3年2ヶ月もよく持ったもの。自民党型バラマキ政治はもうご勘弁ということでの政権交代だったが、結局のところ元の木阿弥。
なにせ、自民党新総裁は、早速、建設国債大増発で全国にカネをばら撒くと言い出す始末。政権を失った理由など何処吹く風。政権を奪還したら以前にもましてバラマキに精を出すようだ。日銀を打ち出の小槌にして。
もっとも、民主党の大バラマキ公約で政権を奪取されたとの「真摯な」反省感に基づく提起と見るべきかも知れぬが。立て、全国の土建屋さん、いざ、集票に邁進せよと檄をとばした訳だ。

だが既存政党に期待はできないと言っても、新興政党が一挙に政権を取れる訳もない。地盤というか、選挙を支える組織は無い上に、カネも無いとくるのだから、常識的にはほぼお手上げ。マスコミ支援での、浮動票集めだけが頼りだから、実に心もとない。しかも、小選挙区制というのにミニ政党だらけ。余りの数の多さで、どんな党が何を主張していて、どんな候補者が出るのかさえ、皆目わからぬ。そもそも、ミニ政党の名前も、おぼえられたものではない状況。もう滅茶苦茶。
と言っても、参議院での法案可決にはこうしたミニ政党の賛同を得ない限り過半数には達しない。衆議院選挙で政権を奪ったところで、混迷状況は変わらないのだから、実にこまったもの。ちなみに、政党を並べてみたら、なんと14勢力。漏れていないか心配になる。それにしても、なんだかね。
 (現与党)民主党[野田佳彦代表]、国民新党[自見庄三郎代表]
 (旧与党)自民党[安倍晋三総裁]、公明党[山口那津男代表]
 (現与党大型分裂)国民の生活が第一[小沢一郎代表]、新党きづな[内山晃代表]
 (古典的ミニ野党)社民党[福島みずほ党首]、日本共産党[志位和夫委員長]
 (小さな政府派ミニ野党)みんなの党[渡辺喜美代表]
 (旧型ミニ野党)新党大地・真民主[鈴木宗男代表]、新党改革[舛添要一代表]
 (新型ミニ野党)みどりの風、減税日本[河村たかし代表]
 (下馬評高きミニ野党)日本維新の会[石原慎太郎代表]

ミニ政党が、いったいどんな政策を打ち出しているのか、他とどんな違いがあるのか、多少は気になったので、チラと覗いてみた。
以下は、その一例:
  1. デフレの克服・経済成長
  2. 社会保障の充実
  3. 原発に依存しない社会の構築
  4. 外交問題の立て直し
これで他党の違いがわかるものかネ。わずかに感じられるのは、付随文書のニュアンスだけ。
  ・(解散先送で生じた)師走の選挙は国民にとって大変迷惑
  ・民主党政権のガバナンスのなさは厳しく糾弾すべき
  ・ナショナリズムに訴えることなく、
   バランスのとれた形で(外交を)立て直す
  ・国際社会の一員として品位ある政治をとりもどすべき

これが政権構想に絡むような「改革」的な政策提言だと考えているとしたら、どうにもなるまい。なにを争点にすればよいかさえ特段考えていないのでは。危機感のキの字も無さそう。もっとも、吐露してない訳でもない。
このミニ政党の代表曰く:
<政治学研究者として最初に取り組んだテーマを思い出して>
 ○ 全体主義の特徴に留意すべし
   永遠の革命、つまり常に、コマネズミのように動き回り、
   次々と革命の対象を広げていくこと
   それこそがファシズム運動
 ○ 最近のポピュリスト政治家たちの言動はそれに当てはまる
   まさに恒久革命を行っているかのよう
   マスコミによる増幅作用を通じてポピュリズムを刺激
<問題>・・・「一億総白痴化」を推進するマスコミ
 ○ 日本の再生のためには、
   まず、第一に、ポピュリズムの克服が不可欠である。
 ○ 第二は、敵を措定することでしか、
   自分の価値をあげることができないような政治家には、
   日本国を導いてもらいたくない。
<課題>・・・薄っぺらな大衆煽動主義に終止符を

コレ、ここだけ見れば当たってはいるが、社会の動きの本質を見ていないのでは。
国力が落ち、現状の水準の社会保障を支えることも難しいことが見えているのである。それを直感的にわかっているから、没落を止めるためには、変化が必要という流れが生まれていると見るべきだろう。従って、「変革の障害」をはっきり言い放ち、実際にその障害を取り払っている姿勢を見せる政党に人気が集まるだけのこと。
小沢新進党、鳩山民主党、橋下維新/石原太陽がウケるのは、官僚政治打破を掲げたから。
しかし、当たり前のことだが、政策を効率的に実行するには、緻密な統制が効く官僚組織は不可欠。こういった組織を抜きにして動けば、至るところで齟齬が発生するのは当たり前。外交分野だと、日本独自のスタンスを突然主張すれば、米国との摩擦が生まれる。そんなことは、初めからわかっている話。それをいかにおだやかに進めるかという技術が政治家に問われる訳で、稚拙だと、えらいことになる。それだけのこと。変化の流れをつくりたいなら、官僚の姿勢転換を図る仕掛け作りから始めるのが当たり前なのに、何の準備も無いのだからお話にならない。

そもそも、「既存」の政権政党が官僚と対立すること自体が自己矛盾そのもの。政権党には、それを支える組織基盤ができあがっており、脱官僚政治をいくら叫ぼうが、官僚組織は政権党の組織基盤層にメリットがある施策を進めているにすぎないからである。当然ながら、その推進のために、デメリットを受ける層からの反撥を和らげる手も打つ。いわば、マドルスルー的に推進するしかないのである。与野党対立が社会的分裂につながらないように、両者の落としどころを探る役割を担ってきたとも言えよう。これを止めさせたらどうなるかは自明。
要するに、政権党を支える基盤が変わらない限り、脱官僚政治などあり得ないのだ。

そこら辺りがわかってくると、それじゃ、今のままなら日本沈没必至だゼ、と考える人が大量に生まれる。しかし、残念ながら、この症状に対応できる処方箋を書ける人がいないのである。
さすれば、一番簡単なのはナショナリズムを煽って全体主義化を図る手が生まれる。これなら、官僚を思う存分使えるからである。官僚にしても、国粋主義者も存在する訳で、そちらが主流になるだけのこと。効率的な全体主義的統治に向かって突っ走ることになる。
そんな流れを止めたかったら、官僚の力を使って、現状維持路線を方向転換する方策を考案する以外に手はない。どこから手をつければよいかじっくり考えること。本来、政治学者が考えるべきはソコ。日本には、そんな知恵袋を擁するシンクタンクが欠落しているのである。

(記事)
安倍氏、建設国債の日銀引き受け言及 総裁には「インフレターゲット論者に」2012.11.17 15:38 産経新聞
「舛添レポート」都知事選出馬も選択肢! 敵をつくることで自分の価値をあげる「大衆扇動政治家」を排し、「恒久革命の呪縛」を解くために by 舛添要一 2012年11月13日 現代ビジネス
(HP)
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