■■■■■ 2012.11.26 ■■■■■

  子供虐待関連研究の信頼性が気になる

先進国ではどこでも児童虐待防止運動が盛ん。当然ながら関係論文も増えている模様。
そんな状況下、どう解釈すべきかまことに悩ましい研究結果が出始めている。

その典型例として、科学好きの英国で、この11月に大衆紙を賑わした記事をご紹介しておこう。信頼に足る話か、なんとも言い難いところだが。・・・「子供を叩くと、大人になって癌、心疾患、喘息発症のリスクが高まる」というもの。論文はJournal of Behavioural Medicineに掲載されるとのこと。
 ○Daily Mail: Smacking or shouting at your children 'raises their risk of cancer, heart disease and asthma later in life'
 ○the Express: SMACKING INCREASES CANCER RISK
 ○the Sun: Study: Kids at risk as smacks cause cancer/'Cancer risk' of smacking kids
 ○the Telegraph: Smacking children may increase risk of them developing cancer
その内容はこんなところ。
・患者に、子供の頃に、叩かれるような虐待があったか尋ねた。
・その割合は、健常者に比べて高かった。
・従って、子供の頃に叩かれたり、怒鳴られたりすると、罹患し易くなる可能性がある。

案の定、すぐに批判記事。
・成人の病人に子供時代を思い出させる手法は、バイアスされた結果が出る可能性が高い。病人は子供時代幸福な生活を送っていないかも知れぬし。
・病気の要因としては、虐待でなく、貧困や社会的孤立の可能性もあろう。
・対照としている集団が治療を受けている病院関係者であり、患者とは条件が異なりすぎる。
For the record "Cancer danger of smacking children" 13 November 2012 Sense About Science

尚、7月に、米国でも類似の研究結果が発表されている。
Study: Children abused by parents face increased cancer risk July 17, 2012 Purdue University News Serice

これが初という訳ではなく、カナダの健康調査データの解析から、身体的な虐待を受けると癌発症のリスクが高まる可能性を示唆した論文もある。
Fuller-Thomson E, Brennenstuhl S. Making a link between childhood physical abuse and cancer: Results from a regional representative survey. Cancer [early online publication]. May 26, 2009.

うーむ。
そんなことがありえるものなのだろうか。


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