■■■■■ 2012.11.30 ■■■■■

  イスラエルはどうするつもり

ガザ地区の停戦協定は、今のところ機能しているようだ。
数年おきにこんなことが繰り返されて来た訳だが、イスラエルとしてはこれしか手が無いということだろう。
しかし、いよいよ、このやり方もこれが最後になるのはないか。

素人から見れば、今の状況は以下のように映る。

 ○米国の脱中東路線本格化
イスラエルとの同盟を機軸とした中東での積極展開方針を放棄。紛争の仲介者の役割を捨て、地域の国々に任せる方向に急旋回中。軸足はアジア。

 ○トルコは反イスラエル化
米国の中東からの撤退を歓迎。
イスラエルとの友好関係を断ち、地域覇権国を目指す動きが目立つ。NATO加盟国であるにもかかわらず、ついに、イスラエルを「テロリスト国家」と非難。

 ○EUから親イスラエル的発言消滅
マーストリヒト条約発効から20年経過し、対イスラエル姿勢は、大きく変わった。CNNの報道によれば、国連総会でのパレスチナ国家認定へ一歩進める動きに、欧州では、スペイン、デンマーク、アイスランド、フランス、スイスが参画。(スイスはEUとは異なり、ハマスのガザ統治を承認している筈。)当然のことながらドイツは採択棄権になるが、ここまでくると、流石の英国も自国だけ反対という訳にもいかなくなる。今や、ほとんどの国が、親イスラエルに映る動きを封じている状況と言ってよいだろう。トルコは未加盟とはいえ、すでに実質的には欧州の一国と見なされており、「テロリスト国家」との言葉はEU全体に大きな影響を及ぼすことになろう。

 ○エジプトは非米姿勢
今迄表に出てこなかった宗教勢力が主導する国になったため、外部からは、この政権が国益をどのように考えていそうかさっぱりわからない。為政者にしても定見など無いというのが実態かも。従って、しばらくは、どう動くか予見しにくいのでは。ただ、イランとは対立的。と言っても、米国の中東からの撤退歓迎という点では両者の考えは一致する。もっとも、米国からの援助頼みだから、オバマ政権がオープンな交渉姿勢で臨んでくれるなら、それで十分満足といったところ。ガザとの自由流通化を認めないところを見ると、大統領はリアリスト的人物だと思われる。イスラエルがガザ地上侵攻したら、国内情勢から、イスラエルとの平和条約破棄やむなしとオバマ大統領に伝え、どうやら停戦にこぎつけることができたということだろう。エジプトが動けば、ヨルダンもそれに従わざるを得ないから、イスラエル国境は全面戦争状態に陥ることになる。イスラエルもそこまで踏み切れなかっただけの話。

 ○カタールは宗教勢力を強力に支援
ハマスはイランのミサイルをシリア経由で入手して使用しているが、カタールはハマスを支援し続けている。自由シリア軍のスポンサーでもあり、この一帯の宗教組織への影響力を強めていることは間違いなさそう。イランの影響力強大化阻止を第一義的に考えていそう。

 ○サウジは静か
実質的には国王は不在だし、王族内部や国内で様々な摩擦が発生しており、積極的に動くことはなさそう。ただ、中東のどこだろうが、シーア派の勃興を抑えるのに役に立つと思えば、徹底したバラ撒きを行っていそう。

 ○大国シリアは滅茶苦茶
シリア政府軍は強大であり、イスラエルにとっては唯一の軍事的脅威として残っていたが、自由シリア軍が優勢となっており、それはほぼ取り除かれた。

 ○レバノンのヒズボラは好戦的
ヒズボラはイスラエルと全面戦争開始可能な状況。本格的開戦となれば、イラン聖職者がこれをシーア派の聖戦と見なす可能性が高く、そんなことにでもなれば、地域全体が一挙に戦争突入という最悪のシナリオも現実性を帯びてくる。

 ○ガザのハマスは意気軒昂
膝を屈するつもりなど毛頭なく、戦闘意欲満々。イスラエル承認の可能性はほとんど無く、和平を望む必然性はない。民衆の反イスラエル/反ユダヤ感情は極めて高く、事実上の軍事独裁体制下でもあるから、戦闘要員は無尽蔵と見て間違いなさそう。

 ○西岸のPLO代表府はハマスとの和解へ
選挙で選ばれたPLO代表だが大衆からは指導者と見なされていないらしい。そのため、曖昧な方針しか打ち出せない状況。しかも、組織の腐敗が進んでおり、大きな一歩を踏み出せる力が無いことは周知の事実。従って、和平交渉派が主導権を獲る可能性は低い。しかも、国際社会が動くのは、ハマスのイスラエル攻撃の時だけ。当然の結果として、好戦派への支持が集まることになり、下手をすれば交渉派は叩き出されかねない。ファタファはハマスと和解しないことには、どうにもならない状態まで追い込まれてしまったと見るべきだろう。国連での動きとは、その切欠作り。

 ○まとめ
イスラエルを表立って支持する国は、世界を見回しても米国のみになってしまった。
しかも、裏でなら交流可能そうな政権や党派が中東から消えてしまった。
イスラエルは孤立状態。
トルコ、エジプト、カタールは明らかにハマス支持である。当のハマスだが、なんらかの意義があれば停戦協定に応じることはあるが、和平に乗ることはなかろう。

こうなると、イスラエルの運命は、イスラエル自身の出方次第。一般に、国際的に孤立した国家は暴発する可能性が高いので気がかり。これはチャンスとばかり、挑発する勢力もいそうだし。


(C) 2012 RandDManagement.com    HOME  INDEX