■■■■■ 2012.12.10 ■■■■■

  アサド政権後がどうなるか気がかり

いよいよシリア内戦は大詰め。
6日に、クリントン国務長官が、ロシア外相、国連・アラブ連盟共同特別代表と会合を持った。ついに、自由シリア軍が政府軍の飛行場を制圧できるところまで来たのだろう。ダマスカス周辺での戦闘激化のようだから、政府軍の防衛ラインが切れ始めていそう。こうなると、何時でも、首都進撃が開始可能となる。その気になれば全面市街戦化も厭わずとのシグナルをアサド政権に送っている真っ最中なのでは。

○ロシア
トルコ政府が全面的に自由シリア軍に梃入れに踏み切ったのだから、こうなるのは時間の問題。それは、ロシアもわかっていた筈。強大な利権を抱える以上、アサド政権打倒には踏み切れなかっただけの話。従って、艦隊派遣は、大国としてのご都合主義そのもの。
兵器を調達しているアサド政権からすれば、ロシアの支援に映るが、実態はロシア人救出作戦発動以上のなにものでもない。圧倒的な軍事力を保有している政府軍がそう簡単に敗れる筈はないから、暫く様子見ということ。
それに、自由シリア臨時政府を作っても、同床異夢集団にすぎないから、利権確保交渉は簡単ではないだろう。しかし、ここまで来ると、現状維持路線を転換せざるを得まい。

○米国
米国から見れば、内乱最終局面での、NATO軍事介入の地ならし開始そのもの。外人部隊への毒ガス使用を公言するアサド政権軍事施設への空爆開始への準備は着々と進んでいると見て間違いなかろう。ただ、ことはそれに留まらず、イスラエル国境のゴラン高原での戦乱が始まるから、これに巻き込まる可能性が高かろう。

○アサド政権崩壊後は?
政権放棄は地域の「ドミノ現象」の始まりというアサド発言は真っ当。それに、政権崩壊で化学兵器がどう流れるのか予想がつかない。これをどう防ぐかが、米露交渉で決められていくことになるのだろうが、機能するとは思えない。
新政権への権力継承がスムースに行くならよいが、そうでないとえらいこと。すでに中東地域一体には、イランやリビアからの武器が広範に流れ込んでいると言われているのに、それに輪をかけるような動きになりかねないからだ。

○シリア不安定化歓迎勢力
独裁政権が消滅しても、民主的な政府が統治可能な基盤が存在している訳ではない。国内はバラバラdし、国境とは、地図上で線引きしただけのものでしかない。抑圧されてきた勢力にとってはまたとない飛躍のチャンス到来。その上、大量の武器が流れ込んでいる。抗争が生まれなかったら奇跡。当然ながら、こうした動きを煽ることで、政府内で優位に立とうとする人達も大勢存在する。一方、ジハードを叫ぶ、根無し草原理主義者が国境を越えて動き回っているのでだ。専門家でも、この先どうなるか読みようがなかろう。
唯一見えているのは、すでに各地に強力な組織を保有している勢力が、圧倒的な力を持つようになるということ。言うまでもないが、民衆を基盤として、産油国から資金援助を得ている宗教を基盤とする組織である。
オバマ政権は、こうした組織がトルコ型に変貌していくと期待しているようだが、その見方には、なんの根拠も無かろう。外野から眺めれば、サウジやカタールの地域大国化を目指す野望に、しかたなく付き合わされているようにしか見えない。

○イスラエル
周辺の脅威は、イランの武器供給経由地でもあるシリア(アサド政権)、ガザ(ハマス)、南レバノン(ヒズボラ)と、イランの武器供給拠点があると言われているスーダンだが、ハマスとの戦乱で対ミサイル防衛網が機能したから、こうした勢力とたとえ全面戦争になっても十二分に戦えるとの自信をつけたようだ。
ただ、安全保障上の一番の関心事は、言うまでもなくイランの核開発であり、核施設攻撃の可能性は高まっていそう。なにせ、イランは遠心分離器施設完成を表明している上に、濃縮ウラン貯蔵量を着々と増やし続けているのだから、遠からず看過できなくなる。12月のIAEA協議が無内容と判断すれば、腹をくくる可能性があろう。オバマ型対話路線に露骨に不快感を示してきた訳だし。

○パレスチナ
時あたかも、ガザ地区ではハマス創設25周年集会。予想通り、イスラエルと妥協無き戦いの狼煙を上げた。一方、外交的解決をなんとか図ろうとする西岸地区の解放機構は、国連での活動頼み。イスラエルと支援する米国は、国連で孤立化してしまったが、こうした動きを進めれば進めるほと、外交交渉派は国内的に追い詰められていくだろう。
クリントン国務長官が、国連でのパレスチナ代表部の動きは米国型の和平に障害というのはその通りだからだ。パレスチナが「負け犬」として静かにしているなら一時の安静が保てるが、少しでも動きはじめればイスラエルが厳しい対応をとることになるからだ。それは、パレスチナ民衆にとっては、実質的には生活状況悪化を意味する。そんなことしかできない政権を支持する訳がなかろう。産油国からの巨大な資金援助を取り付けることができなくなれば、外交交渉派はたたき出されることになろう。

アサド政権後がどうなるか、気がかりである。

(記事)
As noose tightens on Assad, rebels ask: what comes next? by Martin Chulov The Observer 9 December 2012
Hamas leader Khaled Meshal says group will never recognize Israel By Joel Greenberg Dec 08, 2012 09:34 PM EST The Washington Post
ハマス指導者が45年ぶりガザ訪問、対イスラエル「勝利」集会も 2012年 12月 7日 16:27 JST ロイター
米国務長官、シリア問題でロシア外相と協議 2012年 12月 7日 9:18 JST WSJ日本版(AP通信)
コンスタンチン ガリボフ: ロシア シリア問題で積極政策に転換 2.12.2012, 11:30 The Voice of Russia
(当サイト過去記載)
イスラエルはどうするつもり(2012.11.30)


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