最近採用している優秀な人材は、自分なりの新しい見方ができないのではないか、との話を耳にした。
間違えてはこまるが、アイデアが出ない訳ではない。それなりの質で、気の利いた発言を連発する能力は十分すぎるほどあるらしい。しかも、勉強熱心で真面目。大学のコネで異分野の様々な情報も仕入れており、視野も広そうだと言うのだ。ただ、創造性の息吹をさっぱり感じさせないらしい。
こういうことではないか。・・・
豊富な知識を生かし、手早い分析で情報を整理するのはお得意。素早く仕上げるから、中味は比較的新鮮。周囲から見れば、新しい領域を切り拓いていく能力があるように見えるから、流石エリートだけのことはあると一目おかれることになる。当人も、自信を持ってしまう。しかし、これは情報収集力と分析能力が高いだけで、創造性の観点で力を発揮できるか否かはなんとも。
そして、その能力が歴然としてしまうのが、研究テーマや新事業コンセプトの探索話。いかに素早く情報を分析しようが、競争相手もおそらく同じような切り口で考えていると想像した瞬間、誰もが凡庸な考えと見なす。モノ真似と五十歩百歩でしかないから、そんな提案にたいした魅力はない。少しは独自性ある提案はできないのか、と言われること必定。
実際、これではこまるのである。
おそらく、大学での、「独創性発揮」の訓練の方向がおかしいのである。
自分の頭で考えるより、一流人材にアクセスできる「輪」に入ることを優先する学生だらけになってはいまいか。生々しい情報に接する機会を増やし、第一線の状況を知ることは、エリート育成にはプラスではあるが、独創性を磨くことが疎かになっては元も子もなかろう。人的ネットワークを効率的に活用するスキルだけでは、「出藍の誉れ」は決して生まれないからだ。
他人の知恵を生かすスキルを身につければ、確かに、小さな成功には結びつき易い。しかし、それは、誰でもそのうち気付くことを、他の人よりほんの少し先駆けただけ。それを続けていくことは至難の業。独創性で勝負して欲しいものである。
論理的に正しいかは、よくわからぬが、創造性を磨く上で重要なのは異質な人との接触とは、よく言われること。しかし、コネの「輪」を活用して、今迄存じ上げなかった専門家をご紹介頂くことが、それに当たると考えるのは間違いのモト。それは、効率的な情報収集でしかない可能性の方が高いからだ。表面的な視野の拡大でしかないのである。と言うのは、初対面とはいえ、それぞれが相手の立場を意識しているから。すでにコミュニケーションの土台ができており、180度オープンな交流をしている訳ではないのだ。従って、新しい知識を獲得はできるが、新しいモノの見方に気付くことは稀。
それを期待するなら、「輪」の外にポツンと孤立していそうな人と交流するしかない。その場合、「深い」交流は厳禁。同類の発想になってしまうからである。異分野人材との「浅い」コミュニケーションができるかどうかが勝負という訳。好奇心旺盛でないと、こんな姿勢をとるのはなかなか難しい。
これを、是非とも大学で身につけて欲しいものである。