H7N9型鳥インフルエンザの症例が公表されたそうだ。これによると、初期診断でインフルエンザと見なされなかったそうである。当然ながら、抗ウイルス剤の投与時期を失してしまった訳だ。呼吸困難もなかったのだが、発熱後七日目に急速に病状が悪化し、その翌日死亡してしまった。鳥インフルエンザとしては重篤なものではないが、このヒト感染例だと、1週間ほどで突然劇症化している。
まことに不可思議な疾病である。しかし強毒性ウイルスに変質したとの専門家の意見が出てないようだから、当該ウイルス耐性が弱い人は劇症化することもあるということなのだろうか。もう少し情報が溜まらないと、なんとも言い難し。
当初から予想されていたことだが、近親者感染が確認された。ヒト-ヒト感染発生の可能性は高そうだが、現時点までの接触者調査結果から見て、空気感染の可能性は極めて低そう。従って、家禽市場対策を的確に進めれば、大規模に罹患者が発生する事態は考えにくかろう。
ただ、散発的に患者が発生し、感染地域が広がるのは間違いない。家禽とヒトが密接な社会だから、当面、収まる気配はないかも知れぬ。発生当初に即時防疫対策を打たなかったツケが回ってきただけのこと。と言っても、パニックの方がよかったとも言えないが。
パンデミック云々の報道をよく見かけるが、現時点の情報を見る限り、日本国内では、強毒性のH5N1型と同じように危険視する必要はなかろう。家禽類が海峡を越えて飛んでくることも考えにくいし。
通常の季節性インフルエンザにしたところで、日本での死者数は、はっきりわかないものの(肺炎死亡者等に含まれるインフルエンザ罹患者の推定方法が今一歩ということ。) 、年間1,000人レベルでもおかしくない。ワクチン接種運動を推進していても、この程度は避けられないのが実情。
この数を減らす努力そっちのけで、H7N9型鳥インフルエンザだけ特別視しなければならぬ理由は無かろう。
ただ、強毒性ウイルス化や、ヒト-ヒト空気感染発生が、突然、明らかになったりした時にどう対処すべきかは、予め決めておく必要があろう。冒頭の症例が、一般的なものだったとすると、抗ウイルス剤の予防的投与も不可避になるのかも知れない。そんなことが可能なのか、検討くらいはしておいた方がよさそうである。
(日経メディカル オンラインの記事)
中国のH7N9型鳥インフルエンザ、死亡例の臨床像が明らかに 発症から1週間と非常に急速な経過、最後はARDSを呈し死亡 関西福祉大学 勝田吉彰氏 2013. 4. 12
H7N9型鳥インフルエンザに共通する症状は発熱、咳、呼吸困難、AST、CK、LDH値の上昇 中国で死亡した3人の臨床症状とウイルス遺伝子配列を分析 NEJM誌から 2013. 4. 16 大西 淳子=医学ジャーナリスト
(中国の報道)
多地出現人感染禽流感病例−H7N9禽流感感染病例 看看新聞網