■■■■■ 2013.5.22 ■■■■■

  昆虫食キャンペーンで想うこと

FAOが「昆虫は栄養価が高く採集も容易で、世界の未来のために理想的な食料になる」との報告書を出し、13日に記者会見を行ったので、はとんどのマスコミが取り上げた。

紹介の仕方が各様なのがえらく面白い。

日経の場合、「食用として栄養価が高いほか、環境に優しい家畜飼料用などとして、さらなる可能性を秘めているとしている」と沈着冷静。民間業者は昆虫部門に投資する用意があると専門家が会見で述べたことが淡々と記載さてている。真面目一方。
ブルーグバーグになると、コオロギをメニューに入れているシェフの話で、余計なことは書かず。ハハハ。

ロイターはさらなり。
ダイエットに良いぜとくる。欧州では昆虫をメーンとする料理を提供するレストランも出始めたとのFAOエバ・ミュラー氏談が引用されている。なるほど、ここにブルーグバーグがとびついた訳か。

もちろん、飢餓対策という点に注目した報道もある。The Voice of Russiaである。
朝日新聞ならどうなるかは、ほぼ想像通り。人口爆発に対応し、世界の食糧危機を克服するための一手は「虫を食べること」との趣旨と当たり前の解説だが、結構詳しい。

National Geographic Newsになると、これから訪れるかもしれない昆虫食ブームを先取りして、「世界の食用昆虫、人気ベスト8」という見出し。朝日新聞では、甲虫(31%)、イモムシ(18%)、アリやハチ(14%)、バッタやコオロギ(13%)と昆虫食の実情を紹介しているが、それとは一寸違うのである。

尚、報告書には、日本の昆虫料理研究会の話が掲載されている。初回の昆虫食フェスティバル参加者は30名で、2012年が組織発足4年目だという。その様子は朝日新聞がとりあげ、写真まで掲載。しかも、昆虫食人気で女子会までと持ち上げている。本当かいナ。

はてさて、日本のニュース読者はどんな感想を抱いたのだろうか。どれか一報を読んだだけだと思うが、それだけではたして昆虫食に関心を持ったかが気になるところ。
ブルーグバーグ読者だと、折角だから、試してみるかということになりそうだが、日経だと、あらかたフーンで終わりかも。このニュースで株価が上下しそうな取引推奨銘柄も見つからなさそうだし。朝日新聞読者層だときっとソウダソウダと言い出すのだろう。

他人のことはどうでも、自分はどうかと言えば、これがなかなか難しい。ニュースの中身に新鮮さを全く感じないからでもある。
昆虫食は日本では珍しいものではなかろう。ハネナガイナゴか代替虫の佃煮(甘露煮/大和煮)が有名だし、蜂の子やザザムシ(カワゲラ幼虫か代替虫)の缶詰も売られているからだ。いずれもたいていは珍味扱いの高級品である。なにせ、蜂の子で一杯という信州蕎麦屋で聞いた話だが、高貴な方の大好物だったそうだし。栄養価から考えればさもありなん。
小生の場合は、修学旅行でイナゴと菜の花が入った弁当が配られ、初めてそんな料理の存在を知ったレベル。その後、食生態学者本で、テッポウムシ(髪切虫幼虫)や蚕も食べられていて、それはそれは美味と賞賛する方々がおられることを知識として身にはつけたが。ヒトは雑食で、今では昆虫食は例外的だが、もともとは昆虫食性を抱えていておかしくないというのは、理屈ではよくわかるが。(食中性哺乳類の"ツバイ"は、ヒトを含む猿系と分岐した頃の動物の特徴を良く残しているとされるから。)

そんな状態で、今から、昆虫食に入っていこうという気にはなかなかなれないのが実情。ただ、昆虫食に違和感を覚えないような子供を育てて欲しいものであるという、勝手な願いはある。
余りにといえば余りの洗脳教育が社会全体で行われているからである。
そのため、尾頭付き魚が出てくると、食べるのが可哀想と言う子供がいたり、昆虫は殺してはいけないんだと幼児が演説するようなところまで来てしまった。
ジャイナ教徒でもないのに、トンデモない思想教育を施しているのだ。親がカルト信仰に染まっている訳だが、さっぱり自覚していないのである。
命の大切さを懇々と諭す一方で、家ではゴキブリに恐怖して、不快な虫達の絶滅を平然と図っているくせに。それが、日本教なのだと言われれば、返す言葉は持ち合わせていないが。

(記事)
食用や飼料に昆虫活用を 国連、食糧問題で報告書 日本経済新聞 2013/5/14 11:34
国連機関が昆虫食のススメ、「栄養があって美味」 CNN 2013.05.15 Wed posted at 10:32 JST
仏シェフ、コオロギをメニューに採用−国連も昆虫の食用推進 Paris Rudy Ruitenberg ブルームバーグ 2013/05/14 14:18 JST
昆虫類はダイエットに有効、良質な脂肪含む=FAO ロイター 2013年 05月 14日 12:47 JST
飢えている人々に対して昆虫を食べるよう呼びかけ The Voice of Russia 14.05.2013, 11:32
食糧危機克服へ「虫を食べよう」 国連専門機関が報告【ローマ=石田博士】 朝日新聞 2013年5月16日11時25分
国連が昆虫食を推奨、人気の8種とは? Jennifer Holland for National Geographic News May 15, 2013
昆虫食女子の時代? 見た目ちょっと…でもサクサク 朝日新聞 2012年8月5日9時15分
(FAOリリース)
森林の産出物は飢餓との闘いに重要−特に昆虫 新しい研究報告は昆虫の食料・飼料としての役割を強調 コンゴ民主共和国キンシャサにて乾燥イモムシを売る女性 2013年5月13日
FAO Forestry Paper 171 Edible insects Future prospects for food and feed security・・・pp151[BOX13.7]:Konchu Ryori Kenkyukai


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