■■■■■ 2013.6.29 ■■■■■

  ロシアの風土:対外的には反米で、対内的には反知識人

G8サミットの主要テーマだった筈のシリア問題は結局のところなにも進展せず。ロシアがアサド政権への武器供給続行を表明したからである。鵺的に暫定政権樹立を呼びかけるという訳のわからぬ合意文書でお茶を濁しただけ。
ソリャ、ロシアが合意する訳がない。アサド政権が崩壊すれば、シリアは国としての態をなさなくなるのは必然だからだ。宗教と民族でバラバラになり、その余波はトルコ、レバノン、ヨルダンに及ぶ。ことはせれですむ訳がなく、ロシア内部の反ロシア分子も蠢き始めるのは必定。なにせ、反アサド側の主流は、すでにシリア在住者ではなく世界のどこにでも行く雑多な勢力だというのだから。なんでもよいから、不安定化だけは避けたいということだろう。

ロシアは、ソ連崩壊後に民主化されたことになっているが、すでに半独裁国状態。かつての、米ソ冷戦時代における、紛争地帯での対立が戻ってきたかの印象がある。と言うより、それが国民から期待されている可能性が高い。
ロシアはヨーロッパの一国とされるが、その風土は余りに違うから、間違った見方をしないよう十分注意した方がよかろう。

と言うことで、ロシアの国家観を考えてみよう。

この国には、独裁者が拍手喝采を浴びる伝統がある。現在はプーチン大統領だが、その姿に、過去の独裁者を投影したくなる人はとてつもなく多いのではなかろうか。
何故、そう思うかといえば、ソ連時代におけるスターリン批判がいい加減なものだったから。決して、独裁者の仕業を徹底的に断罪した訳ではないし、批判を始めたフルシチョフにしても小スターリンでしかないのだ。それは、ソビエトが崩壊してもなんら変わらない。負の遺産を切開する気は全く無いと言ってよいだろう。
どうしてそうなるかなど自明、民衆は指導者としてのスターリンを「国力を高めた英雄」として見ているからだ。
言うまでもないが、スターリンと並び賞されるのは、ピョートル大帝やレーニンである。兵士や農民にとって、両者の体制の違いなど、ほとんど意味はない。従って、民衆の歴史では、革命前後に切れ目などあろう筈がない。帝政とソビエトを峻別するのは、知識人の思想である。・・・ここが肝。

スターリンは血の粛清で知られるが、政敵を殲滅しつくしたというより、知識層をすべて葬り去ったと見るべきだろう。そんなことが可能だったのは、ロシアの農民・兵士・工員がおしなべて知識人を嫌っていたからである。そうでなければ、膨大な数の人々を消し去るようなことは無理である。少なくとも人口の数%は消滅している筈だ。
にもかかわらず、どれだけの人が消し去られたか、今でも調べることさえできない。
つまり、過去の反知識人体質は今でもそのまま残っているということ。つまらぬことをほじくる輩は敵視されるのだ。(言うまでもないが、隣国の文化大革命とは、この真似ごと。)
プーチン政権とは、そういう風土の上で成り立っている。従って、大統領は、ピョートル大帝やスターリンのように振舞うしかない。それを怠れば、独裁体制が揺らぎかねないからである。
国民の大多数は覇権国に対抗しロシアの地位を高めよと考えているだろうから、反米感情も強い訳で、米国の意向に沿うようなことをすれば、どうなるかなど自明。


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