■■■■■ 2013.9.26 ■■■■■

Windows8雑感

Windows8登場からほぼ1年経過。
ということで、新バージョンWindows8.1の技術者・開発者向け事前提供が始まった。お陰で、様々な視点での解説がなされており、素人にも、どのようなOSなのかが見えてきた。

DOS→Windows→WindowsXPという流れは、誰にでもわかる大きなステップだった。95や98はいわば、ハードに合わせての中間増補版という感じ。ところが、XPの後のOSは、位置付けがよくわからないものになってしまった。そのため、WindowsXPからの転換はさほど進んでいないと見てよいだろう。しかし、サポートが終了するというのだからユーザーは移行を迫られている訳だ。ハードの進歩にあわせるべく早めに新OSへと動いてきたユーザーも、64ビット化で能力万全にしたい時期でもあろう。

そんな環境下だから、Windows8は、次の大きなステップに当たる大看板の筈。

だが、その割にはさっぱり盛り上がらない。
なんといっても大きいのは、デスクトップとタブレットの両者対応にしただけのOSに映ったこと。コンシューマー重視に振ったので、実用性が犠牲にされたと感じるユーザーが多かったようだ。

要するに、齟齬が生まれている訳だ。
タブレットとはあくまでも「手で持つ」モバイル情報機器。必然的にタッチパネル入力型になる。アクセサリーとしてキーボードをつけたい人もいるだろうが、長時間のパソコン作業が必要な人にとっては、そんな機能にたいした意味はなかろう。
一方、ポータブル(ラップトップ)製品とは、機器運搬可能な擬似デスクトップであり、キーボードは必需品。なければ使い物にならない。タッチパネルがついたところで、指は10本しかないから、それほどの価値はなかろう。絵や手書き文字を入力したいなら、画面入力より、使い勝手がよい専用装置を取り付けたくなるのでは。
こうした点を考えれば、現時点で、両者は似て非なるものになっていると言えまいか。今から、この概念を変えて、新たな使い方にしていくのはえらく難しかろう。
固定デスクトップと移動ラップトップの組み合わせで長時間パソコン仕事をしている人が、タブレットの小画面でも仕事をするとなると、そこには高い壁があるというだけの話。

実は、この見方が難しい。
ラップトップパソコン利用していても、仕事の内容によっては、Windows8を素晴らしいOSと評価する可能性はありそうだから。ここが肝要。
Windows7迄のスタート画面の使われ方を考えれば、それを高度化するユーザーインターフェースを取り入れは、なかなか良いと評価する人がいておかしくない。
だが、もともと、スタート画面がアイコンだらけになったりするのは、それなりの理由があるから。タブレット型のスッキリ表示でこれを解決しようとの思考方法には用心が必要である。合理的に作業プロセスを簡素化すれば短期的には大いなるプラスだが、長期的には知的生産性低下の可能性がなきにしもあらずだから。

ここで押さえておくべきことがある。
インターネット接続環境が当たり前になると、すべての情報をインフラ側に置いておけば、どこでもどの端末だろうが簡単にそこにアクセスできる。そうなれば、タブレットとデスクトップ兼用型機器の魅力など霧散しておかしくない。高価な機器でなくなれば、利用パターンに応じて、様々なデザインの端末を持った方が圧倒的に便利ということ。それこそ、デスクトップパソコン不要の人がでてきて当然であり、その一方で、超高精細大画面のデスクトップがどうしても欲しい人も多数生まれるということ。しかし、データの置き場所は同じだったりする訳だ。そんな状態に対応し易いOSとはどうあるべきかが問われている訳である。

おそらく、Windows8とは、この流れに沿う標準品となるように作られたものだと思うが、逆に映ったりもする。デスクトップ環境で日々の仕事をこなす人々には、タブレット型の仕組みを押し付けたOSと解釈されがちなのだ。なにせ、以下のような対処がなされたりする訳だから。
 ・シャットダウンボタン追加
  (時々、別途、完全シャットダウンも)
 ・スタートボタン追加
  (従来のシェル表示に慣れすぎているから)
 ・PDF Readerのインストール
  (PDF全画面表示では同時別作業不能)
 ・プログラム強制終了手順書貼り
 ・ログイン直後のデスクトップ表示化ソフト搭載
Windows8.1とは、そうした使い難さの指摘にも対応したと言えそうだが、その内容を見ると、Windows8の根本的設計思想がビジネスでの従来型利用法の変更を迫るものだったと言えそう。(その割には、外部サーバーとの同期機能導入やディスプレイ信号無線送信機能が明示的に組み込まれていないなど、中途半端感があった。特に、タッチパネル全面対応とは画面の入力機器化でもあり、新たな使い方に進むための周辺を揃える必要がある訳。Windows8.1ではそこらが妥当な形になってきた模様。)

なんといってもWindows8.1の改定で特徴的なのは、以下のようなところ
 ・キーボード/マウスでの操作性向上
 ・スタート画面のデスクトップ化可能
 ・ウィンドウ固定から分割やサイズ自由型へ
 ・複数ソフト表示の際の同等扱い化
 ・Internet Explorer 11の左右分割表示

こうして見ていくと、このOSは十分注意して使う必要があると言えよう。・・・

一つは、従前の「情報構造」を軽視していそうなこと。
情報は、カテゴリー毎に整理し、樹状(階層型)デイレクトリーで分類するのが普通。これを、簡単に検索可能になったからといって、使用頻度に見合った使い易く便利な見出しだけの表示に集約するのは考えもの。余計なことを考えずに済むので便利だが、知的創造性を考えると危うい方向かも。全体像がわかなくなるからだ。従って、見出し構造からディレクトリー構造へとすぐに移動できないと。

もう一つは、Windows8.1で改良されたとはいえ、これからの時代のコミュニケーションの基本認識がかなり違っていたという点。マルチ画面化で逆に振ったのはまさに驚き。
コミュニケーション作業に親和性ありそうに映るOSだったが、逆の可能性が危惧される。ビジネス上での円滑なコミュニケーションには、資料をすぐに参照できる環境が不可欠。そのための、マルチ画面化である。これがさっぱり理解されていなかったのは明らか。
小生は、これからなんとしても実現したいのは、会議の知的生産性をあげることだと見る。おそらく、その第一歩はインターネット会議の高度化。いくつかの資料を参考にしながら、共有ファイルに書き込む体制が高度化して行くのは当たり前の流れだと思う。まあ、イメージとしては、日本流なら、差し詰め、プロジェクト毎にロジというか、秘書あるいは世話人がつき、資料から参加者まで即時管理できるIT会議体制が敷かれるといったイメージか。
これを、ハイスピードで標準化する必要があるのは自明と思っていたら、ITの本丸に、そうは考えない人達が大勢いたということだろうか。・・・業務プロセス革新を考えると、機動性高く、対応スピードを上げ、トータルでの効率向上ということを考えると、ゴチャゴチャした画面など唾棄すべきものではある訳だが。

さらにもう一つあげておこうか。
市場は小さいが、重要なビジネスセグメントが無視されていそうな点。まあ、致し方ない訳ではあるが。
そう、WindowsXPパソコンを使った専用のほぼ「閉じた」小規模システム。多分、新OSへの簡単な移行は難しく、ほとんど作り直しになろう。
モバイルコンシューマー相手といった雰囲気のOSでは、この先どうなるかわかったものではない。この世界では、「ユーザーインターフェースの進化」などどうでもよい訳で、安定して動いてくれさえすれば十分である。64ビットに変える必要があるのは重々承知でも、この先、たびたびシステム構築を迫られるというのではたまらぬし。
仕方がないから、様子見かも。予備用XP搭載パソコン探しになる訳で、実に悩ましい。

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