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■■■■■ 2014.4.2 ■■■■■


ダイオウイカの話題性について

大王烏賊/Giant Squidは、窪寺 科博研究官[正式役職名は○○長の筈.]のお蔭で、一躍スターの座を射止めたのは間違いあるまい。
もともと、滅多にお目にかかれぬ世界最大の無脊椎動物ということで、その名前は古今東西遍く知られていたが、その映像が見れるとなれば誰だって飛びつくからだ。(もっとも、最大のイカは、南極沖で捕獲された大王酸漿烏賊/Colossal Squidとされたようだが。そうそう、日本人はどちらかといえば、巨大烏賊に関心は薄そう。興味はあくまでもイカ刺で、深海に棲む烏賊は不味いので興味対象から外れるからだ。)
最初の映像など、海外なら、ナショグラのNo.1ヒットの可能性大。実際どうなのかは知らぬが。おそらく、海外でたいへんな話題と聞くと、一挙に皆が見るというのが日本の風土では。

ところが、その人気に陰りが見えてきそうな雰囲気。
珍しいとはとても言えなくなってきたからだ。
なにせ、2014年に入り、続けざまのニュースである。
  1月 4日 富山県氷見漁港 体長3.5m
  1月 8日 佐渡島白瀬沖大型定置網 体長4m
  1月19日 柏崎市荒浜海岸 足のみ 体長推定4m
  1月20日 鳥取市沖合 体長推定困難
  1月21日 鳥取県岩美町網代新港 体長3.4m
  2月11日 佐渡島沖合 体長3.4m
  2月14日 佐渡島 体長4m
  2月25日 兵庫県新温泉町諸寄漁港 体長4.13m
  3月 2日 佐渡島椎泊海岸 体長3.2m
  3月12日 横須賀市走水港 体長3.6m
  3月16日 糸魚川市能生-弁天浜 漂着 体長4.5m
  3月24日 山口県見島捕獲-島根県浜田港 体長2.75m
  3月26日 佐渡島羽吉漁港 体長 4.48m,4.35m

そのため、これは気味悪しというトーンの報道も少なからず。
なかには、天変地異の予兆との、よからぬ噂を示唆する記事までもが登場。臆面もなく、こんなことを新聞に書く記者が闊歩しているのだから、トンデモナイ国である。

しかし、それは少なからず、科学者のいい加減な理屈が元凶でもある。こまったものである。
漁獲量の変化は、昔から大きな波があることが知られている。今は消えてしまったボラの大挙した来訪など典型。太古の時代は、それが神によるメッセージと考えられていた筈。その伝統「精神」が科学者の脳裏に刻まれていると考えてよかろう。ご本人はそう思ってはいないようだが、それが現実である。

実際、「駿河湾北端に近い漁場における鰺の漁獲高と伊豆付近の地震の頻度との間にある関係があるらしい」と指摘したのは、物理学者の寺田寅彦。[「物質群として見た動物群」(1933)] 百貨店の売上と天気の関係を一緒に語ることで、いかにも正当な指摘であるかのように仕立てているが、一般にはこの手の主張を眉唾理論と言う。
わからない方のために、典型的な手法をあげておこうか。 ・・・ アフリカ系「人種」の乳児死亡率が極端に高いという統計分析結果を示し、「人種」的にどういう意味があるか考えるべしと主張。

天候で買い物客の出足に影響がでるという理屈は、どのように証明されているのかは知らぬが、誰が考えてもありそうなこと。運動会があれば、その地域のコンビニ弁当が売れるのと同じようなものだからだ。
しかし、動物が地震の予知が可能という理屈は、なんの証拠も無いどころか、どのような感覚器官で、どのような現象を感じ取るのか、想像もつかない。さらに、地震発生の前段現象として、なんらかの環境変化が発生するというまともな指摘も無い。その状況で、魚が地震の前駆現象で異常な動きを見せるとの理屈を開陳するのは、茶飲話以上でもなけば、以下でもない。にもかかわらず、これを「科学」の範疇とさせたい人がいるのだ。
ほとほと、困ったもの。

そもそも、ダイオウイカが日本海に入ってくるのは、マッコウクジラに追われればありそうなこと。単に、対馬海流に乗って逃げた結果だろう。ところが、日本海深部でたまたま水温低下が発生。温度変化には耐え難いから、浮上するしかなくなる。それは簡単な話ではないから、そのうち上昇下降機能がへたってしまい、ついには海面に浮き上がってしまう。ごく自然なシナリオでは。
酒飲み話ならわかるが、摩訶不思議と新聞が騒ぎ立てるほどの現象ではなかろう。ダイオウイカに限らず、深海生物は皆同じような影響を受けているに違いない。それだけのこと。

(記事)
ダイオウイカ続々 水温低下原因か 日本海沿岸の広範囲で水揚げ 2014.2.14 10:20 。SANKEI EXPRESS
(リソーシス)
「ダイオウイカ ― 深海のミステリー」(協力:動物研究部 窪寺恒己)2010-03-01 国立科学博物館 "First Live Giant Squid Photographed" (T. Kubodera and K. Mori) National Geographic news
ダイオウイカ特集ページ NHK


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