表紙 目次 | ■■■■■ 2014.7.3 ■■■■■ またか、大学ベンチャー 「開業率をあげるために」、国立大学がベンチャーキャピタルを始めるそうだ。基礎研究から派生するビジネスは立ち上がるまで時間がかかるので、大学が投資することになるらしい。 総額1000億円。 小生は、目的と手段のチグハグ感を感じるが。 そもそも、シードインベストメントが日本でまともに機能しないのは、耳聞きだらけで、目利きがさっぱりいないことが大きかろう。 しかし、それは致し方ないこと。 潜在的シードインベスター層たるIPO長者が興味を示さないのだから。それは、自身の成功要因が、耳聞き力と、日本社会だけでしか通用しそうにないネットワーク作りだったという経験に根差しているからでは。そうなら、合理的判断とは言えまいか。 せいぜいがメザニン投資になるのは当然だろう。 この状態で大学が乗り出せば、状況が打開できるとの理屈は何なのか想像がつかぬ。 それと、もっと大きな問題があるのでは。 日本の大学のマネジメントは官僚制そのものに映るからだ。異端者への寛容性と、個人の直観力が勝負であるシードインベストに一番合わない風土と思われるからだ。 当たり前だが、成功すれば「大化け」して、超莫大なリターンが期待できるからこそのシードインベストメント。言い換えれば、失敗覚悟というか、その可能性の方が高いのである。 この世界では、リスク感覚が正反対な人達の呉越同舟プロジェクトなどありえないと思うが。 なんらかの別な目論見がある場合は別として、それはインベスターが一番嫌う動きだからだ。 それは勘を鈍らすからと言うよりは、身銭を切る訳でない人達の、面子重視路線と対立するのが始めからわかっているからだ。 シードインベストの目利きとは、ヨサゲなものを選ぶことだけではない。投資してみたが、コリャ駄目と感じたら即刻退場を迫る意思決定能力の方が重要とは、よく言われる話。ここでモタモタしてはアカンのである。 ほとんどの投資は失敗するが、全体ではとんでもないハイリターンになるのは、この判断が優れているか否かに左右されるからだ。 日本の国立大学がこんなことができるのだろうか。 ただ、これは一般論。 ベンチャーキャピタリスト的感覚を持った有能なリーダーがいれば、突破できない訳ではないからだ。 勝負はココ。 言うまでもないが、それは書類で判断するようなものではなかろう。すべての大学に一様に認可するなら、笊に水政策と見て間違いない。 小生は、「開業率」をあげたいなら、シード型ではなく、「シェルター構築可能な」ニッチ型の方が良いと思うが。 これは、仕組みさえ作れば成功の可能性はが高いからだ。なんといっても、それに合った有能な人材はそこここに存在するし、シードとは違い、大学が持つネットワーク活用がプラスに働くことが大きい。 それに、一歩踏み出すことができれば、次の大化け計画にカネは自然に集まるもの。まあ、そこを狙うからこその、小さなビジネスなのである。 但し、投資のハードルレートは高くする必要がある。その先の夢とゴチャ混ぜにすべきではない。 逆だと、カネの垂れ流しで終わってしまうからである。 (記事) 大学発ベンチャーに1000億円投資 東大や京大、研究成果を事業化 2014/7/1 日本経済新聞 朝刊 (C) 2014 RandDManagement.com HOME INDEX |