表紙 目次 | ■■■■■ 2014.7.7 ■■■■■ 理研は信用構築に失敗したようだ STAP騒動を研究者がどう見ているのかは定かでなかったが、Nature論文取り下げで、ポツポツと発言が取り上げられるようになり、素人でも多少は想像がつくようになってきた。 まず、この取り下げで、これと関連しそうな以前の論文の引用を避ける必要が生じた模様。その範囲がどの程度及ぶのかわからないが、とばっちりを喰う研究者もいそう。 もともと、この論文が注目を浴びたのは、著者名効果。この人達が主張するのだから、常識を覆す大発見間違い無しと考えた訳である。 丹羽仁史多能性幹細胞研究プロジェクトリーダー 笹井芳樹グループディレクター 若山照彦現・山梨大学教授 (尚、Charles Vacanti ハーバード・メディカル・スクール教授は、専門領域がTissue engineering だから、分野外の研究者である。) それが、突如、作り話の可能性ありに変わった訳だ。従って、皆、固唾をのんで、ことの成り行きを見守っていたようである。 "For many stem-cell researchers, the most shocking part of the STAP controversy was the involvement of Niwa, Sasai and Wakayama in such troubled work." 結局のところ、STAP論文は学問上抹消された訳だが、そうなると、この3名は、それぞれ独立にSTAP「幹細胞」の存在を示す必要があるとされるようだ。 にもかかわらず、そうした動きを全く感じさせることなしに、「組織的な再検証」の方向に進んでしまった。 これがどのように映ったかは必ずしもはっきりしている訳ではないが、とんでもない組織とのイメージができあがってしまった可能性もありそう。・・・ 「不正」論文を掲載させておいて、「偽り」が暴露されたら、後から「正しさ」を検証すれば十分との姿勢と見た研究者もいるからだ。 これは、理研が、科学の世界で、ついに一線を踏み越えたとみなされたことを意味する。 しかも、troubled workと言っても、意図的としか思えない不正である。なにせ、実際とは違うモデル動物での実験結果を論文に掲載したというのだから。 その上、別な一流誌では、査読者がES細胞混入の誤認可能性を指摘したため、掲載に至らなかったがそれは真ともだったとの話も飛び交っている。 つまり、そうした指摘に実験データで反論できなかったにもかかわらず、著名研究者のお墨付きだということで強引にNatureに掲載させたことになる。 しかも不正の存在を認めておいて、再び、組織一丸となって再実験を始めたから、えらく驚いた人が多かったようである。この組織から出される論文は、今後とも、そうした可能性ありとの前提で読むべしということになるからだ。 どうも、理研はとりかえしのつかない方向に歩を進めてしまったようである。 (附記) GLP準拠で動物実験を行っているラボでは、実験ノート管理の手抜きは、「不正」と見なされるが、正反対の世界もあるようだ。 (ベースの記事) Research integrity: Cell-induced stress As a much-hailed breakthrough in stem-cell science unravelled this year, many have been asking: ‘Where were the safeguards?’David Cyranoski 03 July 2014 Nature | News Feature STAP retracted Two retractions highlight long-standing issues of trust and sloppiness that must be addressed. 02 July 2014 Nature | Editorial STAP cells succumb to pressure Retraction plans for easy stem cell recipe leave scientists wondering how the papers came to be published by Dennis Normile and Gretchen Vogel Science 13 JUNE 2014 (C) 2014 RandDManagement.com HOME INDEX |