表紙 目次 | ■■■■■ 2014.9.14 ■■■■■ 池上さんの良識は通るまい 池上明さんの朝日新聞掲載コラム(「慰安婦報道検証」 9月4日)を今頃になって読んでみた。 もちろん、他紙の様々な記事やコラムの類も全く見てこなかった。これほど遅れて関心を持ち始める人は滅多にいないかも。 紅衛兵報道の余りのいい加減さを見せつけられた覚えがあるから、今更感しか浮かばないからだが。 どういうことで突然にして陳謝が始まったかは気になるが、外からそれがわかる筈もない。 小生は、池上さんのアナウンサー時代は出番を楽しみにしていた。クスクス笑いしかできない手の冗談を、最後に一発というのがこたえられなくて。 語り口そのものは、日本では珍しく、一般良識から判断すればこう考えられますという調子なので、面白味に欠けるが安心感を感じせるものだったように記憶している。ただ、その語り口とは違い、硬派な印象があった。従って、大組織では煙たがれそうなお方という印象も。 コラムを読んで、今もって、そんな姿勢が続いていることがわかった。 これほど柔らかい文章で、本質をついた批判はこの方ならではの技だろう。 こんな調子。 ─(1)─ 【検証結果の記事から】 疑問が出たのは、22年前 「裏付け---拒まれた」 【常識的な判断】 この時点で 証言の信憑性は大きく揺らいだ はず 【問題】 なぜ証言が信用できなくなったと書かなかったのか その点の検証がありません。 ─(2)─ 【検証結果の記事から】 「研究が進んでおらず、 −−−混同がみられ −−−誤用しました」 【常識的な判断】 93年時点で混同に気づいていた 【問題】 その時点で、どうして訂正を出さなかったのか その点の検証がありません。 ─(3)─ 【検証結果の記事から】 「他紙もしていた」 【常識的な判断】 (対象は)朝日の報道の過ち (他社は無関係) 【問題】 他社を引き合いに出すのは 潔くありません 上記で一番重要なのは(3)である。果たしてジャーナリストかという疑問を呈したともいえるのでは。 池上さんのコラム掲載拒否にしても、もしも、その判断に「外部の騒ぎ」といった理由が含まれているとしたら、それは政治組織としての動きであって、ジャーナリストではないということ。 同業者として、それでよいのか指摘しているのでは。 ともあれ、池上さんは、過ちを改めるのをはばかることなかれ、と穏やかに語りかけているのである。それをこともあろうに、掲載拒否したのだから大笑いである。 そういう姿勢から見て、池上さんの批判は全く無意味に終わることになろう。 陳謝が続いているが、それは常に「一部誤報があった」というだけのこと。おそらく、主張は正しいと繰り返すだけ。指摘された上記の問題に取り組むなど考えにくい。 その体質がわかり易い形であらわれたのが、1989年の珊瑚記事捏造事件。 世界最大級のギネスブックもののサンゴを傷つけた輩がいると、自作自演の捏造記事を掲載したのである。 地元は即座に、取材者の行為ではないかと抗議した訳だが、どういう態度を示したかが重要である。・・・行き過ぎた報道があった点に関して謝罪したのである。 そして、1か月もたってから、「カメラマンが無傷の状態であったサンゴに文字を刻み付けた」と事実を認めたのである。 どう見ても、独裁政治の国家では裏組織が使うフレームアップそのもの。民主国家のマスコミのなかに、そのような人々がいる訳である。池上さんのような良識が通用するとは思えまい。 それでよしという人達が読者ということでもあろう。 ちなみに、記事はこうなっていたという。 日本人は、 落書きにかけては 今や世界に冠たる民族かもしれない。 だけどこれは、将来の人たちが見たら、 八〇年代日本人の記念碑になるに違いない。 精神の貧しさの、すさんだ心の… 小生は、このような報道機関の存在を賞賛することこそ、日本の精神の貧しさそのものと思うが。 (コラム)(池上彰の新聞ななめ読み)慰安婦報道検証 2014年9月4日03時00分 朝日新聞デジタル (C) 2014 RandDManagement.com HOME INDEX |