表紙 目次 | ■■■■■ 2014.10.21 ■■■■■ イノベーション創出しかなかろう イノベーション創出以外に、日本を救う道があるとは思えない。 企業には、その意気込みで頑張って欲しいし、大学でも、そうした流れに合った教育をお願いしたいもの。 間違ってはこまるが、本来なら、適切な政策を打てば、経済低迷を防ぐことは可能。生産性向上のために、スクラップ&ビルドを地道に展開すれば、どうということはないのだ。熾烈な競争の業界はそうはいかないが、社会一般で言えば、経済成長にイノベーション創出が不可欠という訳ではないのである。 ビジネスセンスを持った企業家はそこかしこに存在しており、その方々が動き始める環境さえ整えば経済成長が始まることは間違いないからだ。日本にはそれだけの底力があるということ。 ただ、そのためには先ず手をつけるべきところがある。 不合理で、新しい動きを邪魔する仕組みを取り除かねば動きようがないからだ。従って、その不合理な仕組みから恩恵を受けてきた関係者にはしばらく痛みを耐えてもらうことになる。それを潜り抜け、新しい動きに適切な後押しができさえすれば、経済は再興し始めるもの。仕組み変更に当たっての、業界間の相互調整は多少厄介だが、政策立案が難しい訳ではない。実務者にまかせればどうということはない。 言うまでもないが、日本ではこうした展開はほぼ無理である。 生産性がいくら落ちようが、不合理が誰の目にも明らかであろうが、それを変革しようと言い出しただけで業界から放逐されかねないのが現実だからだ。 そのような風土だから、生産性の低下は酷くなる一方。しかし、その業界の関係者の生活を護る必要があるため、手をかえ品をかえ、カンフル注射を打ち続けることになる。それを上手に進める能力がある政治屋が幅をきかせる社会ができあがってしまったのだ。従って、悪弊を断ち切るべしと主張する政治勢力が登場する余地は皆無と言ってよかろう。この先も延々とこの状態が続くことになろう。 労働人口は減少一途だから、このままで経済成長が望める訳がない。良くてゼロ成長である。 問題は、介護老人だらけになる時代がすぐ先にせまってきたこと。本来なら危機感が満ちあふれそうなものだが、どういう訳か全くの能天気ぶり。カンフル剤を麻薬に変えればまだなんとかなろうということかも。 ともあれ、今のままでは、経済成長などありえないことを認識することが第一歩。素人でもわかる話だから、エコノミストの解説など不要である。 そうそう、「脱デフレによる経済低迷脱出策」を推進すべしと語るのは、初等エコノミクスを礼賛する人々であることにご注意のほど。 ●先ず、大企業だが、債務削減と流動資産増加が見て取れる。 つまり、国内投資を控えているので資金は余っているということになる。人口減少一途だから、この先の国内市場の縮小は見えているし、中国とドイツが圧倒的輸出力を発揮可能な為替ルートが続いている以上、輸出キャパシティ単純増強方針を打ち出す訳もないから、当然の帰結。 もちろん、理屈では、合理化やIT投資を行ってもよいのだが、雇用の柔軟性を欠くため、会社ぐるみで見れば生産性向上に繋がりようがないのが現実。こちらの投資にも消極的になるのは致し方あるまい。 ●一方、地場企業だが、資本コストを割り込み、雇用維持だけ状態の企業も少なくない。 スクラップ&ビルドを嫌う風土だから、どうしてもそうなりがち。ついにどうにもならなくなって、始めてお手上げとなり、事業が消滅していくのだ。 この手の不振企業が余りに多いと、低金利化は追い貸し放任状態とほとんど同義。生産性悪化が続くことになる。 勿論、十分な収益を出している企業もあるが、どうしても、公共投資がらみや、介護・医療といった規制業種とその周辺が多くなる。当然ながら、そうした分野の投資には限界がある。しかも、この先、年金減額が進むとの認識は一致しており、人口減も踏まえれば、地方の個人消費意欲は落ちるとの見方も定着していると見て間違いあるまい。そんな状況で、低金利だから、果敢に投資しようとのたまう企業があるとはとうてい思えない。特に、小売やサービス業は、滅多なことでは投資に踏み切るまい。 こうなると、地場相手の銀行は、投資対象を欠くことになり、勢い、国債保有による益出し事業体への変身を迫られよう。これは、銀行が本来の機能を失う方向に進んでいることを意味しており、地域一帯の投資意欲がますます弱まっていくことになろう。 結果、地域全体で見た資本効率は極めて低くなり、生産性向上に繋がる動きは滅多に見られなくなる。 ●次に、政府の財政支出というか、公共投資を考えてみよう。 生産性向上に繋がることは期待薄。地域安定化のために、需要を作りだすための税金バラマキ以上ではないからだ。一番の問題は、資本効率など全く考えない動きになってしまう点。 とは言うものの、「地域の経済発展に寄与する公共投資」との作文は立派な出来栄えのことが多い。それは、チャンスはゼロという訳ではないことを意味している。しかし、その領域に係る、生産性が低い業界の構造改革を行う訳ではないから、資本効率は最悪になってしまう。生産性はさらに低下するだけ。 ●こうした状況を、零金利状態と人為的インフレ化を図る金融政策で打開できる訳があるまい。 そもそも、資金を保有しているのは老人層であり、デフレが収まり、物価が上昇したからといって、個人消費の活発化を予想するのは、政治的心理学者だけだろう。 地場企業の状況を見れば賃金上昇とは、雇用削減を意味することにある。公共投資の大盤振る舞いで完全雇用状況が実現されたところで、実質賃金上昇は大企業正社員、公務員、プロフェッショナルといった一部に限られ、大半はそんな状況とは無縁のままだから、消費が活発化することもなかろう。 すでに述べたように、ゼロ金利だろうが、国内投資刺激にはならない。 結局のところ、国債消化がし易い人工的な金融環境を生み出しただけ。しかし、それはハイリスクなことこの上なし。財政でバラ撒きを進めれば、すぐに労働力不足が露呈するからだ。カネ余りとなれば、どこかで確実にバブルが生まれることになる。カネ余り政策は筋悪と言わざるを得ない。 なかでも厄介なのは、日本の財政は実質破綻しているため、柔軟な政策がとりづらい点。 一旦、大型金融緩和始めてしまうと、止めるのが極めて難しくなるということ。しかし、後戻りはできないのである。 後のことを考えずに突き進んだ政治のお蔭で、今の老人世代はえらい目にあった訳だが、そんな政治を囃した張本人だから同情など禁物である。 それと同じことが、現在の若い世代にもいえよう。小生は、同じような試練が待ちかまえていると見る。 ・・・こんな状態だと、イノベーション以外に救う道無しとは言えまいか。 (C) 2014 RandDManagement.com HOME INDEX |