表紙
目次

■■■■■ 2015.4.17 ■■■■■


訪日客爆買いの見方

松濤美術館からの帰り、渋谷の量販店に電球(クリプトン球)を買いに立ち寄った。表通りは混みあって歩きづらいので、裏通りから入ったが、そこは「迎光」の世界。ニュースに登場する“爆買い”旅行客は、わざわざこんなところまで来るのだ。

どんな感じなのか興味が湧いたので、ニュースを検索してみたら、「品質」「面子」「贈り物に最適」という観点での買い物とのこと。
宮田将士:「中国人旅行者は日本みやげをこう選ぶ 重要なのは「品質」「面子」「贈り物に最適」」 2015.4.13 (C) Japan Business Press

記事のトップ写真同様に、この量販店でも「中」。しかし、売れている商品を眺めていると、上記の解説は余りにステレオタイプという感じがする。・・・"面子は中国人特有の複雑な行動規範ですが、買い物という行為に限って言えば「見栄と自慢」という考え方"とのことだが。

初めての海外旅行ということなら有りえそうにも思うが、そんな時代は終わりを告げつつあるのでは。
日本人を有名にしたかつてのNK団体旅行は、ほとんどお土産買い漁りツアーに近いと言われたもの。特に知られるのは、滅多に飲まないブランデーの陶器入り高額品の“爆買い”。贈答用品か、飾って喜ぶためのものなのだろう。
もちろん酒だけではない。覚えたてのブランド名の商品を、それこそなんでもよいから多数購入する人々と言われた。
このような行為なら、正真正銘の「見栄」と呼べる。しかし、そんなものが通用する時代でもなかろう。

今や、仕事で来日したイギリス人が、父親にHibikiを買って帰るように言われたと語る時代。一方、シングルモルトならJuraに限るという日本人がいたり。よくよく聞くと、1984を偲んで気分に浸りたいだけだという。「まあ、ある種の見栄ですな。」と自ら解説してくれたり。
それが、グローバル経済下の時代感覚では。

そもそも、日本とは違い、中国ではずっと前から、高額ブランド品は重要なセグメント。それは消費財ではない。いわばパチンコ店指定の換金用品。官僚制国家では、擬似貨幣ということ。

小生は、それらに比べると、量販店での“爆買い”はえらく健全な感じがする。

有名な「温水洗浄便座」にしても、その効用は、一度使えばすぐにわかる。それは、中国人だけでない。気に入ってしまった若者は、必ずと言ってよいほど故郷の父母に持ち帰ろうとするという。
全人代で話題になったのもソコ。国内のイノベーション不足を指摘するためのお話として持ち出されたのである。

炊飯器購入は、普段飲みつけない高級酒に手を出そうと言う話とは違う。旨いご飯が食べられるなら、誰だって日本製炊飯器が欲しくなろう。(もっとも、それに合った日本の米でなければ無理だとは思うが。)
そう感じたのは、お買い上げ第1位と第2位の炊飯器の値段を見たからである。9万円を越えるものと、3万円台。まあ、買い方としては、妥当な判断ではないか。国内の商売でも、おなじような売り方が通用するのだから。
もちろん、1位は、Made in Japan表示が目立つから、それが「品質・面子・贈り物」としての高い評価に繋がっているとの言い方もできようが。

そもそも、訪日中国人が購入した人気日本製品のランキングでの1位と2位は、医薬品と化粧品というのも、とりたてて中国の特殊性という訳でもなかろう。
国内で大人気のデパートは、化粧品売り場が絶好調なのは昔から知られた話。繁華街で一番の集客店といえば、ドラッグストアなのも、見ての通り。グチャグチャと、とんでもない数の様々な医薬品と化粧品が棚に並んでおり、見ているだけでも楽しくなるから大混雑になるのである。そこは古典的な薬局・薬店やメーカーチェーンの化粧品店とは全く違う世界。
日本人より高収入の旅客が、そのような溢れかえる新商品を眺めて、魅力を感じ“爆買い”するのは当たり前では。

そうそう、日本で購入する定番商品として、「魔法瓶」というのも、一瞬ナンダカネだったが、そういえば量販店に電気釜の横に並んでいた商品を思いだした。それは、マイボトルでもある。お気に入りのデザインが欲しいのは国内でも同じ。いつも新製品が並んでおり、これでもかという位、使い易さの追求がなされている。そんななかから選ぶことに凝るのが、いわば東京スタイル。
旅行客は、それに感応したということでは。ただ、利用方法は、日本よりずっと実質的ではないかという気がするが。

と言うこともあり、小生には、「見栄」よりは、実質本位な人々に映る訳である。
良く知られているように、廉価なパッケージ菓子も大いに売れている。スーパーや安売り標榜店にわざわざ買いに行くのだから、余程美味しいのだろう。それに、細かな気配り製品に仕上がっていたりする点も気に入っていそう。・・・まさか、これは「見栄」からではなかろう。中国のカードが使えたりすると、間違いなく“爆買い”発生とか。

そんな色々な買い物ができるからこそ、東京は大人気ということでは。

(C) 2015 RandDManagement.com    HOME  INDEX