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■■■■■ 2015.7.4 ■■■■■


反科学勢力に対抗できるだろうか

「Failure in science is vital.」という当たり前の話が、Nature[Editorial]に掲載されている。なかなか面白い。
もっとも、そうは感じない人の方が多いかも。どう見ても、我々が住んでいる社会は、反科学の方が多数派だから。

どうしてそんな論説が科学論文誌に登場したかといえば、反科学カルトの脅迫に抗して、実験が完了したことは賞賛に値すると言いたかったからだろう。確かに、次のステップに様々な示唆を与える結果を出したのは間違いない。
ここで、 黙っていれば、反科学運動がさらに強まるだけだし。
なにせ、実験を防衛しなければ、物理的に破壊されかねなかったというのである。そのため、5年間で約120万ドルのところが、実際の費用は2.5倍程度に膨らんだそうだ。

この実験は植物の遺伝子組換え。
自然界で発生している現象や突然変異作出を用いる育種技術となんらかわらぬ。そのような無秩序なものでなく、コントロールされた突然変異というにすぎない。
それに対する反対派の主張とは、遺伝子組換えはモンスター発生というもの。これでは端から議論どころではない。なにせ、"bread adorned with cartoon cow heads"を持ち出して、一大キャンペーンをはったそうだから。古代の魔女狩りのようなもの。

ここまで行くと、とかくこの世は住みづらいを通り越している。
そんな人達の襲撃から、科学を護ることができたのだからここは一言書かねばということなのだろう。
反科学真っ盛りのなかで孤軍奮闘の境地か。

間違える人が多いが、反科学は遺伝子組換えという比較的新しい分野だから生じている訳ではない。一番盛んなのは食品分野。

なにせ、そのままだと黴毒を摂取しかねないので防カビ剤を塗布するというのに、これを止めさせようとする運動が盛んだという。現在の技術水準では、それ無しでは流通は無理だと言うのに。ピスタチオ等のナッツの黴毒の発癌性の凄さを知らない訳ではないと思うが。
なんと言っても圧巻は、鶏糞汚染がありうる平飼鶏卵の生食をお勧めする神経。
極めて危険な非加熱殺菌ミルクが隠れた形で流行っていなければよいが。

・・・反科学の姿勢を見せることがファッショナブル化しているのだ。

これに危機感を持つ人は極めて少数である。
と言うか、日本の場合、昔陸軍、今反科学カルトかも知れぬ。

(記事) "Success in failure --- A failed crop trial of genetically modified wheat still provides crucial lessons for those battling to provide the planet’s growing population with a sustainable food supply." Nature-Editorial 25 June 2015
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