■■■ 2012.11.12 ■■■

   ハワイ語はおそらく親類

英語の影響力が大きいとはいえ、ハワイ語は南島言語そのもの。日本語の根底にこの南島言語があるかも知れぬと感じたなら、素人にとっては、これは格好の題材。なにせ、観光業的なハワイ語入門書が多数あり、すぐに触れてみることができるからだ。
どうしてそこまで南島言語に興味が湧くかと言えば、音声表現で日本語類似点が余りに多いから。
  ・単語が母音で終わる。
  ・母音は連続することはあるが、互いの影響度は小さい。
  ・母音は5つ。
  ・子音が連続することがない。
  ・子音は8つ。
  ・濁音が無い。
  ・擬音語や繰り返し語が多い。
  ・仮名表現で2音素の基本単語(名詞)が目立つ。
      ・・・雨(ウア)、海(カイ)、潮(アウ)、池(ロコ)、砂(オネ)、石(ハク)、空(ラニ)
         家(ハレ)、部屋(ルミ)、網(アホ)、糸(ロピ)、歌(メレ)

  ・カタカナ表示的外来語(英単語)が散見される。
      ・・・色(カラ)、通貨(マネ)、紙(ペパ)、公園(パカ)、時間(ホラ)

専門家の見方は知らぬが、どう考えても、感性的になにか共有しているものがありそう。文字使用の言語だったら、かなりのことがわかる筈なのに残念至極。

ところが、そんな感覚で、チラッとハワイ語紹介の書き物を覗いてみると、コリャ全く異なる言語だゼ、となりがち。そんなこともあり、少し考えて見た。

 ○人称代名詞
最初に学ぶ人称代名詞が、日本語と違いすぎる。どちらかと言えば英語に近い感じ。ちなみに、主語として使う形だと以下のようになっている。
  私 [au]
  あなた [‘oe]
  私達二人以外の方(彼/彼女) [‘oia]

  私と、あなたの二人 [kāua] =kā+ua
  私と、他人の二人 [māua] =mā+ua
  あなたと他人の二人 [‘olua] =‘ol+ua
  全くの他人の二人 [lāua] =lā+ua

  私と、あなたと、他の人(達) [kākou] =kā+kou
  私と、他の人達 [mākou] =mā+kou
  あなた達大勢 [‘oukou] =‘ou+kou
  私達二人以外の大勢(彼等) [lākou] =lā+kou
見かけはえらく複雑だが、よくよく見れば、2人は-uaで、3人以上は-kouという接尾辞がついているにすぎず。日本語の「-達」という複数表現に近いと言えなくもなかろう。古代英語は知らぬが、単数形「I, You, He/She]から複数形[We, You, They]への変化とは考え方が違いそう。そんな気分に陥ると、日本語とハワイ語は心情的には共有するものがあるのでは、と考え始めてしまう。そして、それなりの納得感が得られる解釈ができたりするから不思議。
 (日本語の場合)
話す人としての「私」、相手たる「あなた」、様々な「他人」が混在している生活の場において、両者がそれぞれの立場を認識しあうことから会話が始まる。このことは、互いに情緒が通い合うとの前提でのコミュニケーションということでもある。換言すれば、人称代名詞が曖昧な表現であろうが、誤解を与えるリスクは小さいということ。統制がとれ、各人の地位が互いに分かり合える社会での言語を意味していそう。
 (ハワイ語の場合)
それぞれの人の立ち位置が変動し易い小集団の言語では。発言する際は、間違っても、誰かの面子を傷つけたりしないよう、「私」、「あなた」、「他人」がどう関与している話をしているか、誤解を与えないように注意を払うことになる。そうなると、人称代名詞は細かく規定しておく必要があろう。
 (英語の場合)
集団内における「私」、「あなた」、「他人」の立ち居地を考慮しているようには思えない。人の扱いにおいては、極めて冷淡な言語に映る。

 ○指示代名詞
お互いの「立場」を考え、両者の「場」を設定して会話が始まる言語だと、指示代名詞も似た用法になるのでは。英語とは一寸違うのである。
  これ [kēia] --- this
  それ [kēnā] --- 英語には概念が無いかも。(it)
  あれ [kēlā] --- that
  あれこれ [kēlā me kēia] --- this and that(逆順)

  これら [kēia mau] --- these
  それら [kēnā mau] --- 英語には概念が無いかも。(those)
  あれら [kēlā mau] --- those

 ○冠詞
ハワイ語は系統が全く違う言語と感じがちになるのは、冠詞の存在も大きい。日本語は数詞は使うが、名詞に冠詞などつけることはしないからだ。しかし、そのハワイ語の用法を見てみると、英語における冠詞的な意味は無いようだ。単に名詞であることを示すための接頭語と見なすべきもの。名詞に直接つなげる表記にしてもおかしくない。
 (ハワイ語の場合)
もともと、外来語を取り入れる機会は少なかった筈。(英語の進出以前)従って、語彙の数は極端に少ない。動詞と名詞も発音上で峻別もしなかった可能性は高い。そうだとすれば、名詞であることを示す接頭語は不可欠である。
 (日本語の場合)
名詞形は比較的判別し易い形にしている。動詞と間違えることはなさそう。従って、ハワイ語的な冠詞は不要である。ただ、古くは同じような冠詞があったかも。しかし、語彙を急増させたから、面倒な冠詞は捨て去るのが自然な姿勢。日本語で必要な冠詞相当語句は「御-」といった接頭語が似つかわしい。

 ○SV v.s. VS構文
一番悩ましいのは、文の構造の違いだろう。学校文法では日本語は「主語+述語」の順番と叩きこまれるが、ハワイ語はこの逆なのである。「動詞+主語名詞+・・・」と聞かされると、思わずのけぞる。しかし、それは単なる思い込みでしかない。コレ、日本語の普通の文章でも珍しいものではないからである。
 (日本語の場合)
日本語は「・・・+動詞。」という構造であり、細かな規則はあるが、文の構造はいたって柔軟。これが大きな特徴。と言うことは、日本語も、「動詞+・・・」であった可能性もなきにしもあらず。大陸の「主語+動詞+・・・」ルールに合わせて動詞を後ろに回せば、最後にせざるを得ない。
 (ハワイ語の場合)
日本語ほどではないが、負けず劣らず柔軟である。
下記のハワイ語文章を見ればわかるが、日本語文章として、前から順番に読んでいけば理解可能。と言うか、多少の違和感はあるとはいえ、日本語の口語文と言えまいか。文字を必要としなかったハワイ語を考えるなら、日本語と構文的にはたいした違いはないのでは。それに、日本語同様、動詞欠落文章もアリ。
  Noho ‘o Mary ma Honolulu.
      ・・・住んでるのはネ、マリーだけど、場所はホノルル。

  Maika‘i ka makani o Honolulu.
      ・・・素晴らしいんだヨ、風が、ホノルルなんだけど。

  ‘O Mary ko‘u inoa.
      ・・・マリーが、私の名前。 (動詞欠落)

  He ipo ka‘u.
      ・・・恋人なんだけと、私持ってるんだ。 (動詞欠落)


 ○疑問文
なんといっても驚いたのは、疑問文が日本語のスタイルと全く同じ点。文章で記載すれば、文末の記号一つ(?)を除けば、肯定文と疑問文はどこもかわらない。「誰」あるいは「何」という疑問文は別だが、疑問文化するのに、余計な単語を挿入したり、文章構造を変える必要は無いのである。当たり前だが、口語だから、発声で峻別することになる。語尾が上がるだけだ。日本語だと、原則的には、文末は動詞だから「あなた、行くの?」という調子。ハワイ語のVS構文だと、さしづめ「行くの、あなたは?」といった感じになる訳だが、日本語だと上げるのは動詞で、「行くの、あなたは?」かナ。そうなると、両者の考え方が違ってくるが。

こうしてざっと見ていくだけでも、根は共通なのではと思わせるような点が多々ある。このことは、文字導入以前、日本列島に住んでいた人達が南島言語族だった可能性を示唆していそう。

尚、語彙の一致が乏しかろうが、それは両者の無縁性を意味することにはならない。基本ルールに合わせて、新しい語彙を次々と導入した結果、古層の語彙が消えていったにすぎまい。特段の根拠無き予想でかまわなければ、それは1万年以上前の話である。


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