■■■ 2012.12.1 ■■■ 数詞と助数詞の話 日本語の数表現は和漢ゴチャ混ぜ。この微妙なバランス感覚、雑種文化ならでは。よくよく考えて見ると、なかなか面白い。 [訓短] ひ ふ み よ (1拍) [訓完] ひとツ ふたツ みっツ よっツ (3拍) [漢音] いち にー さん しー (2拍) [英語] ワン ツー スリー フォー (不定拍) <日> 日数表現は、基本中の基本だと思うが、標準をどうするか悩ましいところだろう。そもそも、「ひニチ」という言い方からしてヘンテコ。まあ、それはそれとして、伝統を重んじるなら、「ひとひ」、「ふつカ」、「みっカ」とするのが妥当かも。ところが、この場合、助数詞としての「日」の呼び方が1日と2、3日で違ってしまう。もっとも、現実には、「ひとひ」を使う人など見かけたことがないから、考える必要もないか。普通は「いちニチ」と呼ぶ訳だが、こうなると、「いちニチ」と「ふつカ」では、数詞も助数詞も全く違う系列だ。コリャ、混乱の極み。 [訓訓] ひとひ ふたひ みひ よひ [訓音] ひとカ ふつカ みっカ よっカ [訓音] ひとニチ ふたニチ みニチ よニチ [音音] いちニチ にニチ さんニチ しニチ <泊> 宿泊数の呼び方が「日」と同期しないのも不思議。三泊四日は「さんパクよっカ」で、「みハク」と言う人は少数派。二泊三日も「にハクみっカ」。こちらは、「ふたハクみっカ」派も結構おられるようだが。 [訓音] ひとハク ふたハク みハク よんパク [音音] いちハク にハク さんパク しハク ただ、「晩」の場合は、「ひとバン」系列しか使わないようである。逆に、「昼夜」は「いっチュウヤ」系列。 <人> 人の数え方もなんだか。「ひとリ」、「ふたリ」、「さんニン」、「よニン」が普通の用法。なんと、3系列混合である。これには恐れ入る。 [訓訓] ひとリ ふたリ みたリ よたリ [訓音] ひとニン ふたニン みニン よニン [音音] いちニン にニン さんニン しニン <名> 人数の助数詞「名」は、生物としての「人」の数ではなく、リストに記された「名前」の数を対象としているのだろうが、実情から言えば、ほぼ同じように使われている。「おひとり様」と「ごいちめい様」のニュアンスの違いはすでに失われていそう。ただ、助数詞「名」には「ひと、ふた」系列は無いようだ。ただし、4だけは「よんメイ」だが。 [音音] いちメイ にメイ さんメイ (しメイ) 流石に、「四角形」は「しカク」で「よんカク」とは言わないようだが、この先どうなるかわかったものではない。なにせ、「ななツ」の次を「はちツ」と考える人もいるそうだから。 <組> なんといっても圧巻は、「組」では。 原則は「ひと、ふた」系列での表現。「いち、に」系列にすると、単なる数ではなく序数的意味になってしまうからだろう。序数なら、「ひとくみ目」か「いちくみ目」とすべき。ところが、「いちくみ、にくみ」が広く学級名化しているので、事実上序数表現になってしまう。そうそう、学級名称の場合も、「しくみ」でなく「よんくみ」と呼ぶようだ。 ここで忘れてならないのが、「組」を「セット」と解釈する癖。和食のお店に「セット」と名付けられた組み合わせ料理が登場する訳で、まさに雑炊仕様なのである。(正確に言えば、「セット」は「組」ではなく、「式」だと思われる。そう考える方は、代わりに「グループ」でもよかろう。)英語だから、「ワンセット、ツーセット」となるが、その先は「さんセット」と呼ぶことになる。なんらの違和感もないどころか、その方が日本語らしさが出て喜ばれるのだ。「ワンビヤー」と「ビールみっつ」の掛け声が同居すると、庶民的なお店とされる訳である。 [訓訓] ひとくみ ふたくみ みくみ よくみ(よんくみ) [音訓] いちくみ にくみ さんくみ しくみ [英英] ワンセット ツーセット スリーセット フォーセット [訓英] ひとセット ふたセット みセット よんセット [音英] いちセット にセット さんセット しセット ついでながら、序数表現は、一般的には「数詞+助数詞+目」だが、「数詞+番+目」という汎用表現も使う。この場合は、「いち、に」系列が多い。 助数詞が多いのは面倒であるが、単語の定義を曖昧にして柔軟性を持たせる言語だから致し方無い。名詞に数概念が無いのは、それが理由だと考えるべきである。 そんなことは日常生活で誰でもがわかっていること。・・・「数分に1本走っていますから、1台お持ち下さい。次ぎは8両が参ります。」これだけで、名詞などなくてもわかる。単語は同じでも概念が全く違うから、様々な助数詞が必要となるのである。と言うか、概念毎に新たな単語を作る方が余程面倒と考えていると見た方が当たっていそう。 ただ、皆が、助数詞が余りに多すぎて面倒だと思えば、「個」のような汎用表現が多用される可能性が高い。それに、グローバル化の波に対応せざるを得ないから、数量単位は科学的表現にせざるを得ない訳で、それぞれの助数詞の概念が変わってしまうかも。 そうなる前に、アジア言語間の助数詞の違いをじっくりと調べ、日本人の感性がどんなものなのか、知っておくとよいのでは。 (軽い読みもの) 飯田朝子:「数え方でみがく日本語」 筑摩書房 2005 「超日本語大研究」へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2012 RandDManagement.com |