■■■ 2012.12.6 ■■■ 日本語文法に他動詞概念は無用では 日本語の動詞の話をしてみたくなった。と言っても、Wiki辺りをチラリ読み程度での議論だから、間違いもあるだろうし、内容的にはたいしたものではない。 とりあえず、他動詞と自動詞の峻別について書いて見ることにした。文法のド素人からすると、日本語にこのような文法用語を持ち込むと混乱を引き起こすだけではないかと感じていたから。 まあ、雑駁な話でしかないが、読者諸兄の頭の刺激にでもなれば幸い。 先ずは自動詞で検討してみよう。 日本語の自動詞には2種類ある。そんなことは誰でも知っているが、どういう訳か、学校ではまともに教えてくれない。峻別用語を覚えさせないのか、もともとそんな用語が無いのか、浅学の徒にはわからないが。 英語も、もしかすると、同じように2種類あるかも知れぬが、言語学者でもなければ、1種類と見なしても実用上なんの問題もなさそう。従って、日本語特有の分類と見てもよいのかも。 こんな話をしても、すぐにはピンとこないかナ。「誰でも知っている」と、出鱈目なこと書くなと言われるかも知れぬ。 まあ、2種類といっても単純な話。動詞の主語が意志を感じさせる生物か非生物のモノか、というだけのこと。 (意志) 「いる。」・・・犬がいる。 (モノ) 「ある。」・・・餌がある。 両者とも、「存在する。」という意味だから、目的語など考えられず、正真正銘の自動詞。ご存知のように「いる」と「ある」に互換性は全く無い。ここが肝。 従って、以下の3つの文章におかしい点はない。 (意志) 犬小屋を壊した。・・・他動詞 (受身) 犬小屋が壊された。 (モノ) 犬小屋が壊れた。・・・自動詞 犬小屋が自分から壊れる訳がなく、可笑しな表現という考え方があるようだが、それは英語の世界を日本語に投影しているから。「いる。」と「ある。」の使い訳けと同じように、意志を持たないモノと、自らの意志を発揮できる生物を峻別しているに過ぎない。 と言ったところで、納得できない方も少なくなかろう。思想あるいは宗教によっては、この感覚は理解できない可能性もあるからだ。 そこら辺りがわかるように例文をあげておこう。 (モノ) 「雨が降った。」、「雪が降る。」・・・日本語の一般的表現 (意志) 「雨を降らせた。」、「雪を降らす。」 (受身) 「雨が降らされた。」、「雪が降らされる。」 ・・・「雨に降られた。」もあるが不思議な文章である。(後述) 雨や雪を降らせるのは、一体、誰なの?、という問題が生じる訳である。発言者によって、それは違うかも知れないから、言うべきではないというのが日本社会の掟とまでは言えないかも知れぬが、まあ、わざわざ明瞭化する意味などなかろう。 もちろん明示したければしてもよいのである。 (意志) 建御名方神が諏訪湖を凍らせた。 (モノ) 余りの寒さで湖が凍った。 (意志) 天神様が清涼殿に雷を落とした。 (モノ) 怨霊の祟りで、雷が落ちた。 くどいかも知れぬが、もう一度、2種類をあげておこう。 (意志) 「屋根の雪を落とした。」 (モノ) 「屋根の雪が落ちた。」 言うまでもないが、両者の意味は違う。前者は雪下ろしのイメージだし、後者はよくある小規模雪崩。原因はなんとも言えず、他動詞にしたら主語不詳になってしまう。 ついでだから、もう少し見ておこうか。 (意志) 「近寄ったら、犬が吠えた。」 英文法的な見方なら、目的語を必要としないから、自動詞と見てよいのでは。 でも、普通は、こんな言い方はしない。受身形が好まれる。 (受身) 「近寄ったら、犬に吠えられた。」 オヤ、自動詞でなく、他動詞なのか。能動態に戻してみよう。 (意志) 「犬が、近寄った私に(向かって)吠えた。」 これって、SVO型文章と考えるべきなのだろうか。 と言うことで、今度は、正真正銘のSVO型他動詞の文章を眺めてみよう。 (意志) 「カラスが餌を盗んだ。」 これも、「盗まれた」という受動態で表現することの方が多そう。情景を考えると、普通は次ぎの如くに表現するのでは。 (−−) 「犬がカラスに餌を盗まれた。」 オヤッ、よく見ると、おかしな文章である。「犬が」は主語に見えるが、動詞に対応していないからだ。どうしてこんなことがおきるのだろう。 もちろん文法的に正しいのは次ぎの文章。 (受身) 「餌がカラスに盗まれた。」 正しいかも知れぬが、たいていは「餌を盗まれた。」と言うのでは。 前に戻るが、「雨に降られた。」は主語が「私」の受身の文章のようだ。そうなると、元の能動態は、「仮主語が、雨を、私に、降らせた。」というSVOO構文になるということになる。 他動詞、自動詞という英語文法的発想をしていると、伝統的な日本語の文章を書く能力を失っていくことになるのではなかろうか。もしそうだとしたら、そんな概念は日本語には不要とは言えまいか。 「超日本語大研究」へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2012 RandDManagement.com |