■■■ 2012.12.7 ■■■

   動詞の活用パターンは2種類で十分

「ある。」と「いる。」の峻別は、動詞全般に言えるという話をした。
おそらく、文法で重要視しないから、つまらないことを取り上げているように感じる人が多いかも知れぬが、それは大きな間違いだと思う。これらは、英語で言えば、「存在する」と言う意味で使う時のbe動詞に当たる訳で、この動詞を習得するのと、「存在概念」を覚えることが同時進行している可能性もあるからだ。
つまり、原初の「動詞」と考えてもおかしくないということ。それに、単語の構造も、これ以上簡単なものなどなかろう。動詞の語幹は母音1個。その語尾の活用部分は「ル(ru)」だけ。
  A-ru
  I-ru

動詞と言えば、活用の暗記勉強。それが「国語」授業の核となっており、標準化のための叩き込みがなされている訳である。
この弊害は小さなものではないが、覇権国になるには、印欧語のように明確な文法が必要と考える人が多いから、残念ながら遺憾ともし難い。「日本人の心」とか叫ぶ人に限って、学校文法の最強支持者だからどうにもならない。大きな本屋で、ざっと立ち読みした限りでは、ほとんどの本は学校文法支持者だし、批判論者に映る書き方をしているものも、まあ同類といったところ。(専門書が一般書店では限られているからド素人にはとっかかりがつかめないだけの話かも。)
といったゴタク話を始めてしまうときりが無いので、ここまでにして、ド素人の考え方をご説明しておこう。たいした話ではないし、誤解もあろうが、お読み頂けば頭の整理になると思う。従って、できれば、読了後すぐに、ご自分で、自分がどの様に日本語を使っているのか検証してみて欲しい。

先ずは活用パターン、「五段、上一段、下一段、サ行変格、カ行変格」。小生は、これは暗記用に工夫したものと見なしている。その観点では、よくできている。
しかし、「A-ru/I-ru」という動詞から眺めると、これはこまる。日本語らしさを消してしまうからだ。どう見ても、活用実態は、「ru動詞基本活用」と「r抜け動詞変格活用」の2つ。なんら複雑なものではなく、単純な規則で活用しているにすぎない。日本語で複雑なのは、そこではない。

(1) ru動詞基本活用(非五段活用すべて)
「ナイ、マス、言い切り、トキ、バ、命令」で、「学校文法」で暗記させられる活用形と「ru動詞基本活用活用」を書いてみよう。尚、「ru動詞基本活用」表示では、「−」は語幹で、文字は活用語尾である。
  ○サ行変格活用(「する/-する」のみ)
    [暗記] し、し、する、する、すれ、しろ(せよ)
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
  ○カ行変格活用(「くる」のみ)
    [暗記] こ、き、くる、くる、くれ、こい
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
  ○上一段活用(カ行の場合)
    [暗記] -き、-き、-きる、-きる、-きれ、-きろ(-きよ)
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
  ○下一段活用(カ行の場合)
    [暗記] -け、-け、-ける、-ける、-けれ、-けろ(-けよ)
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
お分かりだと思うが、語幹の定義が違うと言えるのかも。動詞は必ず語幹と活用語尾からなり、活用表は「活用語尾」のみで表示するとなれば、例えば、「来る。」は「−る」と書くしかない。「ある」「いる」「する」「くる」のような動詞の語幹は、母音1つと見なす訳である。従って、どの動詞だろうが、辞書に掲載される形の語尾は「ル(ru)」になる。それだけの話。実に単純。
そうすると、活用はすべて、「− −、−る、−る、−れ、−」となる。(ここでは触れないが、活用形も7つ必要な訳ではなく、「−、る、れ」で十分。)
当たり前だが、そうは問屋が卸さない。これだと、矛盾が生じてしまうからだ。だからこそ、面倒にもかかわらず、4つものパターンに分けて活用を覚えさせられることになる。しかし、そんなことをすると、日本語の特性がわからなくなるので止めた方がよい。

ただ、変格活用とされる動詞は確かに語幹が変化してしまうから、別パターンにしたくなるのもわからないでもない。しかし、明らかに特殊なのである。それに、そこだけ例外扱いすれば、どうという話ではない。
留意すべきは、命令形。ここだけは、理屈が必要である。簡単に説明しておこう。
「ru動詞基本活用」では、命令形は、「ル(ru)」という活用語尾は不要となる。要するに、語幹のみ。以下のようになる。
 サ変・・・「しろ」ではなく、語幹の「し/せ」(「す」が変化)
 カ変・・・「来い」ではなく、語幹の「こ」(「く」が変化)
 上一・・・「着ろ」ではなく、語幹の「き」
 下一・・・「受けろ」ではなく、語幹の「うけ」
もちろん、これは学校文法では誤った表現になる。しかし、多分、上記の語幹だけの表現での命令口調を聞いたこともあろう。(古文と混交気味ではあるが。)
ただ、語幹だけだと、わかりにくい場面も多く、なにか語尾をつけたくなるもの。もっとも、もともとは、そんなことをしないのが日本語表現の真髄なのである。典型例で言えば、こういうこと。
 平叙文原型・・・「着(き)-ル。」
 疑問文原型・・・「着(き)-ル?」
 命令文原型・・・「着(き)!」
(ついでながら、上記3つは、いずれも文章の「終止形」と言わざるをえまい。)

この表現の仕方だと間違い易いからまずい、と考えるのは自然な流れ。そうなるとどうなるかといえば、次ぎのように何らかの接尾辞をつけたくなるもの。
 疑問文原型・・・「着(き)-ル-ノ。」
 命令文原型・・・「着(き)-ヨ。」(「き-ロ。」)
つまり、「ナイ、マス、言い切り、トキ、バ、命令/」ということ。
そもそも「命令形」というが、否定形になるとどうなるのか考えてみるとどういうことかわかってくる。
 否定形平叙文原型・・・「着(き)-ナイ。」
 否定形疑問文原型・・・「着(き)-ナイ?」
 否定形命令文原型・・・「着(き)-ル-ナ!」
学校文法でイの一番で暗記させられる未然形「-ナイ」の文章だが、否定形になると、後ろに続くのは「-ナイ」ではなく、「-ナ」となり、終止/連体形と同じ語尾になってしまう。この変化にしっくりしないと、「-コト。」をつけたりする。文法的にはこの方が整然としているからだ。
 命令文変化型・・・「着(き)-ル-コト。」(連体形)
 否定形命令文変化型・・・「着(き)-ナイ-コト。」(未然形)

要するに、命令文にするための動詞活用は結構いい加減ということ。活用形で「命令」を示そうという態勢になっていないのである。もとに戻って、「着(き)-ヨ。」だが、余り聞かない表現だが、「せ-ヨ。」「受け-ヨ。」なら違和感はあるまい。上一段活用なら、「見-ヨ」「煮-ヨ」「閉じ-ヨ」、下一段なら、「得-ヨ」「出-ヨ」「食べ-ヨ」「入れ-ヨ」でわかるように、極く一般的な表現である。言うまでもないが、「ヨ(yo)」を活用語尾と考えることはできない。そうなると、「-ヨ」という命令形の活用語尾は無し。「語幹」だけと考えるべきとなる。
ただ、それなら「-ロ」はなんだとなる。そんなことは自明。活用語尾は「ル(ru)」の変化形が「レ(re)」しかないから、命令形にも活用語尾を付けたい気分というだけのこと。活用感を出すなら、終止/連体形「ル(ru)」の母音uを、「ヨ(yo)」の母音oに換えて、「ロ(ro)」として使うしかあるまい。つまり、「着(き)-ロ。」である。
まとめると、命令形の流れはこういうこと。
  「語幹」--->「語幹-ヨ」--->「語幹-ロ」
ただ、サ変「する」とカ変「来る」は、語幹が変化する。そして、「来る」は例外扱いせざるを得ない。
 サ変 ・・・ 「す」 --->「せ-ヨ」---> 「し-ロ」
 カ変 ・・・ 「来(く)」 --->「こ-ヨ」 --->?・・・「こ-い」
 上一 ・・・ 「着(き)」 --->「き-ヨ」 --->「き-ロ」
 下一 ・・・ 「受(うけ)」 --->「うけ-ヨ」 --->「うけ-ロ」

趣旨がだいたいおわかりになったかと思うが、残っているのが、五段活用。語尾は「ル(ru)」ではない。

(2) r抜け動詞変格活用(五段活用)

早速、「ナイ、マス、言い切り、トキ、バ、命令」で記載してみよう。
  ○五段活用(カ行の場合)
    [暗記] -か、-き、-く、-く、-け、-け
  ○ru動詞基本活用
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
こうして並べてみると、本質的には同じようなものであることがわかる筈。上記を「書く(kaku)」で考えてみよう。[暗記]だと「ka-ku」となり、「く(ku)」が活用語尾と見なされる。ru動詞基本活用の論旨でおわかりになると思うが、実はこうはならず、「kak-u」である。ru動詞活用語尾なら「kak-ru」だ。単に、「r」を抜いたに過ぎない。しかし、考えて見ると、そんなことは不可能。五段活用をする動詞は、語幹が子音で終わる子音語幹動詞だからだ。これは、日本語の鉄壁とも言える大原則に反する。語幹が「kak」となってしまい、母音で終わらないから、語幹の発音ができないのである。それが放置されることはあり得ない。従って、上記の「−」の末尾になんらかのダミー母音を入れる必要がでてくる。
  ○ru動詞基本活用(語幹の末尾は母音)
    [ru] − −、−る、−る、−れ、−
  ○r抜き動詞基本活用(見かけ上、語幹の末尾は子音)
    [r抜] −x −y、−u、−u、−e、−z
      (ダミーだから、すべて同一では真性に見えるのでまずい。)
      (x、yは終止/連体形u、e以外の母音。)
      (zはなんらかの母音)
  ○五段活用(カ行の場合)
    [暗記] -k-a/o、-k-i、-k-u、-k-u、-k-e、-k-e
まるっきり、おかしな主張をしている訳ではない。ナ行五段活用「死(し)ぬ」の終止/連体形が「しぬる」だったりするそうだから。(西日本方言、古風な文体)つまり、一部ru動詞化させただけのこと。
尚、ダミー母音だが、重要性の順に、こう考えるとよいのでは。
 [z] 命令形はru動詞の「する」は「せヨ」に。この語幹変化に習うと「-e」。
 [y] 連用形はru動詞の「くる」は「きマス」に。この語幹変化に習うと「-i」。
 [x] ともあれ、残っている母音は「-a/o」。
     未然形は続く言葉が「ナイ(nai)」。母音重複を避ければ「-o」。
     だが実態は「-a」。尚、「ウ(u)」が着くと「-o」。
     ダミーなら語幹内の直前母音重複が一番。「a」が多いかも。

ということで、以上、ド素人の動詞活用の見方でした。


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