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2003.10.17
 
 


燃料電池車競争 (2:By-wire化)…

 燃料電池車のキー顧客を考えてみた。 ・・・ 「1:誰が顧客か?」
 次ぎは、「どれだけ安く売れるか?」だ。

 もちろん、電池価格を如何に抑えるかで普及スピードは大きく変わる。
 しかし、パソコン価格の低下を見ていると、キー部品の価格低下が牽引したというより、産業構造の転換がすべての部材やアセンブリのコストを下げたと言えそうである。車でも同じことが起きる可能性は高い。
 実際、その引き金になりそうな技術が浸透している。「By-wire」技術である。

 「By-wire」技術とは、メカニカルな運転制御系を、コンピュータ通信(車内LAN)に変えるだけのことだ。航空機では、極く当り前の技術である。
 現時点ではどうしてもコスト高になるため、高級車が対象だが、安全性や安定性の要求水準が高まれば、不可欠な技術となることは間違いない。

 ところが、2002年初頭のNorth American International Auto Show(デトロイト)で、GMはコンセプトカー「Autonomy」を示した。「By-wire」技術を燃料電池車に投入する方針を明確にした。(GMはこの技術を「Hy-wire」と呼ぶ。)
 2002年11月には、大宇と共に、韓国でも、その考え方を提起した。
 [GM Hy-wire: Major Step Forward In Reinventing Automobile World's First Drivable Fuel Cell and By-wire Vehicle]
 (http://www.gm.com/company/gmability/environment/products/fuel_cells/hywire_081402.html)

 「Hy-wire」では、薄い車台に、すべてのパワー/運転制御機構を組み込んでいる。つまり、重心は低く精密制御が可能な車なのだ。技術を磨けば、超高級スポーツカー並の運転性能になると思われる。
 電子化されているから、操縦も、ゲーム機器のジョイスティック感覚になる。個人の好みに合わせた操縦性も実現できるかもしれない。
 その上静かなのだから、素晴らしい車だ。

 こうした構成になると、車は、パソコンのベアボーンとほとんど同じ形態と言えよう。実際、「Hy-wire」の車台中央には、ドッキング部分が設定されている。
 つまり、この車台の上に、大宇や富士重工等が、独自の考え方に基づいて、内装を施した箱、操縦桿とソフトを搭載すれば自動車が完成することになる。
 車は極めて単純なシステムで生産できることになる。新車モデルの開発期間も短くなる。
 車台は標準品でも、完成品は、汎用の廉価品から、特注品まで、様々なものを簡単に開発できるのだ。

 おそらく、全世界市場が対象でも、車台は2種あれば十分だ。これだけで、様々な車種が生産できる。車台の大量生産ができる。こうなれば、規模の経済が生きるから、破壊的な価格が実現できることになる。しかも、単純構造だから、安価で高品質なメインテナンスサービスも可能になろう。

 「By-wire」で産業構造が一変することになる。

 その結果、新しい事業が次々と生まれる。例えば、車台前方に搭載するだけで衝突衝撃を吸収できる構造体メーカーが登場するだろうし、運転ソフト専門企業も生まれるだろう。
 中古車のイメージも変わる。車台をそのまま使い、ウワモノだけを変えたり、一部のモジュール更新やソフトのバージョンアップを図ることができるからだ。


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