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2003.10.18
 
 


燃料電池車競争 (3:42V化は呼び水)…

 「By-wire」化すると、自動車産業は大きく変わる。GMは、燃料電池によるモーター駆動システム導入時に、この大転換を図ろう、との主張をしている訳だ。 ・・・ 「2:By-wire化」

 理屈では、その通りだが、まずは、燃料電池を実用レベルに進めることに集中すべき、と考える人が多いようだ。
 肝心の燃料電池の性能と価格が今一歩なら、構想倒れになりかねないからだ。

 確かに一理ある。

 すでにプロトタイプ車が走っているとはいえ、燃料電池のハードルはかなり高いのである。というのは、車用の燃料電池は、限界に挑戦しているからだ。
 例えば、出力仕様を見ると、トヨタ「FCHV」は80kW、ホンダ「FCX」は60kW、GM「HYDROGEN3」は60kWだ。これは、家庭用電源100Vなら電流値800Aを意味する。数十軒の家庭の電力使用量と同じ容量である。
 これだけの容量に対応する発電機を車台の狭い場所に押し込むのだ。しかも、安価で作る必要がある。モノ作りに熟達していなければ、簡単に実現できない。
 この視点を重視する人達は、日本企業は優位な筈、と考えるに違いない。

 しかし、こうした見方には盲点がある。燃料電池は部品であって車とは違う。部品で優位でも、車全体で競争力を持てるとは限らない。「By-wire」技術が主流になれば、部品は独立して選定することができるからだ。

 しかも、現実を見れば、燃料電池の実用化より早いスピードで、業界は「By-wire」に向かって動いている。
 燃料電池車時代を先取りした動きと解釈することもできる。

 その象徴が、電圧の42ボルト化だ。一見、技術上の大変革に見えないが、電圧規格が変われば、すべての電気部品が新しくなる。自動車技術の一大転機である。
 電圧向上でパワーが出るから、油圧やメカで動かしていた部分を、電子回路とアクチュエーターに変えることができる。
 ステアリング、ブレーキ、パワーの3大制御が一気に電子化される可能性がでてきた。

 換言すれば、42ボルト化に合わせて「By-wire」化すれば、大幅なコスト削減が狙えることになる。
 これと同時に、設計の進め方も大きく変えることができる。
 制御プロトコルが規格化されれば、ほとんどの部品に汎用性が生まれるからだ。しかも、互換性は保証されるから、設計途中で新しい部品に変えることが、いとも簡単に実現する。

 これは、競争のルールが根本から変わることを意味する。

 当然ながら、業界構造が変わる。この大転換に合わせて、キー部品である燃料電池が登場することになろう。おそらく、サプライサイドの勝ち組企業は一気に燃料電池車普及に賭ける。弱者を一掃するため、破壊的価格の燃料電池車が登場するのではなかろうか。


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