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2005.4.7 |
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車に感じる“思想”…運転免許を取得して、はや30年が経過したが、未だにペーパードライバーである。都会に住んでいると、いくらでもタクシーを使っても、廉価な車を持つよりずっと安くあがる。それにお酒も飲めるし、ということで、車を買ったことがない。といっても、車が欲しくない訳ではない。しかし、本当に欲しい車を購入すれば、火の車を走らせることになりかねないから、遠慮しているといった所だ。 こんな生活をしていると、車に関する流行には、どうしても疎くなる。カーマニアから聞かされる話や、週刊誌ネタで変化を知る位のものだ。 最近もひとつ勉強させられた。 米国のプリウス人気の話である。Compact carでのブランド価値のデータは見ているから、人気のほどは知っているのだが、目に見える形で示されると、納得感が違う。 → 「日韓企業の同質化 」 (2004年12月22日) 2005年2月27日、アカデミー受賞式会場での話だ。乗り付けたトップスターの車にプリウスが多かったのである。 なんと数えた人がいる。少なくとも17人いたという。(1) ハイブリッド・コンパクトカーに乗ることがステータス・シンボルになっているようだ。 一寸前は、大型リムジンが会場入り口に並んだものだが、まさに様変わりである。 高級車を乗り回すことが“誇り”だった時代は終わったようだ。 とはいえ、日本では、まだまだ、乗れぬ高級外車、行けぬ高額別荘、を所有する人達は多い。仕事で忙しいが、お金の使い道がないからつい買ってしまう人達だ。しかし、高額ブランド商品を漁ったように映らないような購入に変えてきているようだ。顕示欲で購入したとは思われたくないのだろう。 こんな状況を見ていると、車が発する“思想”が購買決定に大きく影響していることがわかる。 ヒットの鍵は、デザインや機能での差別化と見ることもできるが、魅力の素となったデザインや機能を設定した“思想”への共感であると思う。その車を所有することで、特定“思想”のシンパであることを、胸を張って示したいのだ。逆に、支持できそうにない“思想”を感じる車は避けざるをえない。 典型例をあげろと言うなら、大ヒット四輪駆動車、パジェロ(2)の衰退現象ということになろう。 おそらく、クロスカントリー用の車は以前のような形では流行らない。勝手な意見だが、人気回復は望み薄だと思う。 本格的なオフロードに飽きがきたと見ているからではない。クロスカントリー車は自然を破壊しかねないという認識が広がったことが影響を及ぼしているのだ。自然破壊を気にしない人が持つ車というイメージを嬉しがる人などいまい。 現在、好まれるオフロード向きの車種とは、エクストレイル(3)やハリアー(4)だ。 機能を見ると、クロスカントリー車とたいして変わらない印象だ。オフロードを疾走するイメージも強く打ち出している。だが、違うのである。 ユーザーはオンロードをひた走る全天候型の車として位置づけていると思う。要するに、道具を満載してリゾートエリアに遊びにいく、お洒落な車なのである。当然ながら、その辺を気楽にドライブすることも楽しい筈だ。本質的には、クロスカントリー車ではないと思う。 これを、マーケティングの発想で見れば、本格的クロスカントリー車をセダンに近づけたポジショニングとなろう。 こうした見方は避けた方がよい。流れの本質を見失う危険があるからだ。 誤解を恐れずに語ろう。 ヒット車が生み出したのは、クロスカントリー車として疾走する喜びではなく、自分達専用の遊び部屋として心地よく使える喜びである。 自然を楽しむスタイルが変わったのである。 こうした車を持つことは、そのようなスタイルでの生活を愛していると主張することに他ならない。 スポーツカーメーカー ポルシェの車カイエン(5)も同じことがいえそうだ。 見かけから言えば、クロスカントリー車とスポーツカーの中間のポジションだ。しかし、そんな中途半端なものだったら、人気はでまい。 オフロードを走れる力を持っていることに、特別な魅力がある訳ではないと思う。遊び道具を載せて、心地よい部屋にいながら、普通の道をスポーツカーの感覚で疾走できることが共感を呼んだと考えた方がわかりやすい。 おそらく、ポルシェマークが欲しいから買う車ではない。こんな車を乗り回すライフスタイルに共感する人が買うのだと思う。 従って、オフロード車としては超高級車だが、買う側は結構廉価と見なすかもしれない。 --- 参照 --- (1) 「週間文春」 2005年3月24日号“レオ様たちがアカデミー賞会場でプリウスに乗る訳” (2) http://www.mitsubishi-motors.co.jp/PAJERO/ (3) http://www.x-trail.net/ (4) http://toyota.jp/Showroom/All_toyota_lineup/harrier/menu/concept.html (5) http://content4.eu.porsche.com/prod/cayenne/cayenne.nsf/jpnjapanese/cayenne 自動車の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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