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■■■ 本を読んで [2014.8.31] ■■■

魚の進化を考えさせられた

"BIOLOGICAL MYSTERY SEROES PRO"という文字がさりげなくタイトルの横に表示されていて、真っ黒な背景に化石写真というハードカバーの本に出会った。

大きな文字で"ORDOVICIAN & SILURIIAM CREATIRES"とか、"DEVONIAN CREATURES"と入っているので、てっきり翻訳本と思ってしまったが、日本のサイエンスライターの著作。
頁をめくると、わかり易い化石の写真と、印象的というか、魅力的な生物像再現イラストが満載。これは、まぎれもなき古生物の大人用絵本。

しかし、よくよく見ると詳細な参考資料が記載されており、「科学最前線を探る」的な方針で作られているようだ。もちろん一般向けだが、レビュー(総論)に近い内容を目指していそう。
これは是非とも読まねばなるまいということで手にとった訳である。

シリーズ第1巻は言うまでもないがカンブリア紀の大爆発。
しかしながら、浅学の身では、どうせ理解を越えるので、ここからはじめるのは気が重い。そこはとばして、大人しい内容と踏んで、2巻(O+S)と3巻(D)から始めることにした。

コレ正解。
前巻内容を踏まえた書き方になっており、全体像が見えるので、頭の整理には最高。すぐに、色々な発想が浮かんでくるから、眺めているだけで面白い。

オルドビス紀はカンブリア紀に引き続いて三葉虫が繁栄していたが、「平板型」から脱し、「スペシャリスト」と化したと見るべきなのだそうだ。・・・成程。
ナメクジウオ様の無顎脊椎動物出現は、言うまでもなく、すべての原形が揃ったカンブリア紀だが、三葉虫同様にオルドビス紀に対応力を強化したようだ。「鱗」がついたことが画期。・・・成程。
それは、遊泳能力を飛躍的に高めたが、遠泳できる体力があったとは考えられないのだと。・・・成程。
そして、続くシリル紀には有顎有鱗魚類が出現したことが知られている訳だが、そのうちの「アンドレオレピス」が現代魚類主流派の元祖であり、ヒトに繋がる血筋に近い種なのだそうな。・・・成程。

小生の興味はおわかりのように、ヒトに連なる歴史。
従って、先ずは、その観点での原初の魚を考えてみたいのである。
以下のような分類観で眺めることになるから、なんといってもシルル紀・デボン紀辺りが興味津々となる訳。
ところが、その興味に応えてくれるような本がなかなか見つからなかった。しかし、ようやくにして、「成程」本が見つかった訳である。
   「地質時代の全体観が欲しい[2013.8.24]]
(小生は、「魚類、両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類」という「並列的」というか、「平板的」な5分類で描いている本は、途中で読む気が失せる。暗記強制本に感じるから。)
   「素人的動物大分類思考のお勧め」[2013年6月8日]
↓シルル紀分岐
├┐
││↓デボン紀分岐
│├┐
│││↓石炭紀分岐
││├┐
│││羊膜類
││││↓石炭紀分岐
│││├─┐
│││単双弓類
││││↓三畳紀分岐
││││├─┐
│││   竜類[絶滅]
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││││││
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││││蜥蜴/蛇
│││├水棲哺乳類
│││陸棲哺乳類
││両生類
水棲脊椎動物[魚類]
無脊椎動物[節足動物等]

もっとも、この本が素晴らしいと感じたのは実は次の記載。
 デボン紀が始まったとき、
 地球には脊椎動物は魚類しかおらず、
 しかもその魚類は体が小さくて
 けっして「強い」といえる存在ではありませんでした。

  ・・・成程。
 しかし、デボン紀が終わるとき、
 魚類は海洋生態系の頂点に君臨し、
 両生類が誕生して上陸にも成功。

  ・・・そうなんだよネ。
 いったい脊椎動物に何があったのか?
  ・・・ソコ、ソコ。
その当たり前の疑問に何も答えない本だらけ。
読者は、その明快な解答を書いて欲しいのではない。そのヒントになりそうなものがあるなら、指摘して欲しいだけなのである。

小生は、その観点で、この本を大いに気に入った。

尚、化石標本写真をじっくり眺めていて、これは「美しい」と感じたりすると、それは、どっぷりと"こちら側"の方になってしまうことを意味するとのご指摘あり。そういう点では、えらく危険な書なのである。お読みになる際は、くれぐれもご用心のほど。

(本)
土屋健[群馬県立自然史博物館 監修]:
「生物ミステリーPRО オルドビス紀・シルル紀の生物」技術評論社, 2013.12.15
「生物ミステリーPRО デボン紀の生物」技術評論社, 2014.8分岐.25


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