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■■■ 本を読んで [2015.3.25] ■■■

オカンのお好み焼き

「オカン」と言えば、大阪南部言葉だが、使うことによって浪速人であることのアイデンティティを確認していいそう。
東京では、なら「おふくろの味」だが、関西では「おかんの味」でなければということのようだ。

よく言われるのは味噌汁。選ぶ味噌の種類と具の好みが出るからだろう。
しかし、味と食感の差違が際立つという点ではなんといっても煮物だろう。頻繁に登場する家庭料理なら、肉ジャガとカレーライスか。

この2つの定番だが、海軍料理である。
中国語で、海軍范[肉じゃが]哩飯[カレーライス]が紹介されている本を眺め、今更ながら、その合理性の凄さに気付かされた。ご存知のように、前者は本邦版ビーフシチュー創作命令の結果誕生したレシピだし、後者は横須賀生まれである。
   「「日本味儿」を覗く 」[2015.3.16]

それがどうした、と言われるかも知れないが、実は「おカンの味」という海上自衛隊料理本のページをめくっていたのである。
当然ながら、カンとは「艦」である。
冒頭はもちろん、カレー競作。ところが、そのすぐ後にくるのが、「お好み風」なるレシピ。お好み焼きの本質がどこにあるかを見抜いた料理なのである。

考案者は、呉地方隊呉警備隊所属の多用途支援艦[航洋曳船]「げんかい」[乗員45名]の給養員の方らしい。艦艇料理分野は昔から熾烈な競争が繰り広げられる場。(隔絶した空間に長期間滞在することになるので、仕組みが陸や空とは違うのである。)レシピ本に掲載されるということはかなり大好評ということでもある。肉ジャガやカレーに匹敵するレベルの料理の筈。

それを見ると、お好み焼きの欠くべからず特徴とはふんわり食感とそれなりの厚みにあるようだ。勿論、お好み焼き用ソースも必要だし、青海苔と花鰹のトッピングの嬉しさも重要。
となると、拙宅のレシピはお好み焼きには該当しないことになる。
   「非伝型お好み焼き」[2015.3.20]
いわば、メレンゲ入りのフリッターと、大根卸入の醤油味の付汁で食べる天麩羅の違いと言えそう。両者は、似て非なる料理な訳だ。

艦艇食とは、コストも一日材料費1,000円という制限の下で、作り方も徹底的に合理性を追求されているにもかかわらず、美味しいという優れもの。学ぶ点は多い筈。
と言うことで、そのポイントをご紹介しておこう。

○豚肉 薄切りでなく一口大に
○長葱 1cmのぶつ切
○シーフードミックス
    冷凍品を軽く湯に入れ灰汁とり
    笊上で水分をよく切る
○生地[山芋+生卵] 擦り卸しよく混ぜる

■生地に、加熱したシーフードミックスと
  「出汁の素」を入れて混ぜ合わせる。

■油を塗ったオーブン皿にすべてをのせ、
  160℃で加熱。

○つけるものとトッピング
  お好みソース
  マヨネーズ
  青海苔
  鰹節[花鰹」

成程。
材料からいえば、これは粉モンではなく、スパニッシュオムレツ系となろう。
しかし、山芋を入れるし、トッピングは紛れも無き浪速の現代お好み焼き。

更なる成程感が生まれたのは、具に使うために、冷凍シーフードミックスを加熱する際のほんの一手間の追加が推奨されていた点。
白ワインか日本酒を振りかけてから湯に入れるのだ。(艦艇内は禁酒。)

確かに。

ただ、これ以外にも秘訣があるかも知れない。本来、そのようなレシピは艦艇内機密である。

(本) 小学館出版局[海上自衛隊協力]:「海自レシピ お艦(かん)の味 元気が出る! 安くて美味しい力めし」 小学館 2010年

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