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2005.11.9
 
 


古事記を読み解く [国産み]

 “天地開闢”の話に続くのが、「いざなきの神」と「いざなみの神」 (伊邪那岐 伊邪那美)による“国産み”である。
  → 「古事記を読み解く [天地開闢] 」 (2005年11月2日)

 この兄妹ペアの神は、「天」の神から国を造るよう命ぜられ、道具を賜る。「天沼矛」である。
(修理固成是多陀用幣流之国賜天沼矛而.)

 そして、どろどろした感のある「地」を「天沼矛」でかき混ぜる。
 引き上げた矛から垂れ落ちた雫が島となる。
 その島の名前が「おのごろじま」。
(引上時. 自其矛末垂落之累積成嶋. 是淤能碁呂嶋)

 天命で、矛を武器にして、国つくりを始めた訳である。

 始めるに当たっては、天と地の中間にあると思われる「天浮橋」にたつ。直接、天からではない。
 天地開闢とは、違う次元の話であることを示している訳だ。「天」の領域は哲学的なものであるから、命ぜられたといっても、国つくりとは人類必然の流れという見方と考えればよいだろう。
 と言っても、国つくりは哲学次元ではなく、現実の話であり「天」が担当するようなものではない。さりとて「地」での話でもないから、その中間に位置する。それが、「天浮橋」である。

 作業では道具を使う。「矛」である。名称に「天」が付くから、そこらにあるものではなく、立派なものの筈だ。
 ここまで話が進むと、現実感がでてくる。

 実際の発掘結果と合致してくるからだ。北部九州で製作された広形銅矛が瀬戸内海全般に広がっている。しかも、金の装飾が施されていたという。(1)
 矛こそ、統一国家のシンボルだったのである。日本の歴史とは、この金属器「矛」が登場してから始まる訳である。

 国家統一は、この矛で、ダイナミックにかき回すことで達成したのである。“こおろ、こおろ” (許袁呂許袁呂)といった感じである。

 といっても、成功裏に、一気に統一が達成できた訳ではない。

 先ずは拠点つくりから始まった。そこが、「おのごろじま」。

 「いざなきの神」と「いざなみの神」は、「天浮橋」から、「地」の「おのごろじま」に降り立ち、すぐに神のシンボルである「天之御柱」を立て、社殿たる「八尋殿」を建てる。
(見立天之御柱. 見立八尋殿)

 “天地開闢”での神の誕生イメージはすっくと真っ直ぐに伸びる植物の葦だが、ここでは、神が存在するイメージが柱となる。但し、柱そのものはご神体ではないし、神々が住む天を支える支柱でもない。神が「天」から降り立つ場なのである。
 そして、その脇には、降り立った神が過ごす場所、社殿、が必要となる。社殿の中に格別必要なものはない。
 これが、現在まで脈々と受け継がれる神社の原点である。

 神の最初の仕事は、子供を産むこと。極めて、自発的に行われる。

 「いざなきの神」と「いざなみの神」は会話をしながら、子供作りに励む。
 その始め方で結果が左右される。

 女性主導で産まれた子供は水子だった。しかたなく、葦船で流してしまう。そして、次に生まれた島も子として認知しない。平定は一筋縄ではいかなかったのだ。
 そこで、「天」のアドバイスを受けて、女性主導を止める。それから、次々と島が生まれるのである。
 ・淡路(淡道之穂之狭別嶋)
 ・四国(伊予之二名嶋)
 ・隠岐(隠伎之三子嶋)
 ・九州(筑紫嶋)
 ・壱岐(伊伎嶋)
 ・対馬(津嶋)
 ・佐渡(佐度嶋)
 ・本州(大倭豊秋津嶋)

 瀬戸内海、日本海、本州の順である。北海道は範囲に入っていない。
 続いて、6島が入ってくる。吉備児嶋、小豆嶋、大嶋、女嶋、知訶嶋、両児嶋である。

 突然、領土の範囲から話が始まるのは、まずは国土の平定から始まるという考え方を示しているのだろう。

 しかし、すぐには上手くいかない。女性主導、すなわち宗教優先で進めたためであろう。失敗に直面し、そうした進め方は一般的でないと悟り、男性主導、すなわち武器の力で進めることとした。
 その結果、ほとんどの島を領土に編入することに成功したのである。

 国家観が披瀝されていると言えよう。
 国造りとは、平定の話なのだ。

 「古事記を読み解く」 (次回に続く)>>>

 --- 参照 ---
(1) http://bunka.nii.ac.jp/jp/heritage/detail/261010000442.html


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