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2005.11.22
 
 


古事記を読み解く [天安河の誓約]

 “神産み”は、民族のより所たる神への信仰をはっきりさせる話だった。そこで最後に生れた貴神が、波乱の歴史第一ページを飾ることになる。
  → 「古事記を読み解く [神産み] 」 (2005年11月16日)

 内容からいえば、“天安河(やすのかわら)の誓約”ということになるが、天照覇権確立と言った方がよいかもしれない。

 3貴神のうち、「あまてらす大神」(天照)と「つきよの命」(月読)は指示に従ったが、「スサノオの命」(須佐之男)は、海原を治めようとはしなかった。
 亡母、「いざなみの神」がいる黄泉の国へ行くと、泣き叫び続けたのだ。ところが、極めて強い力を持っている命なので、周囲に大きな被害を与えてしまう。
 お陰で、悪さをする神がはびこるようになってしまう。そこで、「いざなきの神」は「スサノオの命」を追放する。

 矛の力で日本国の平定は完了しており、さらなる武力行使は海で行うこととし、国のなかでは穏やかにすべしとの国是ができあがったのだが、武装勢力は従わなかったのであろう。
 もともと、矛という武器の輸入を一手に取り仕切ることが国力の基盤にあったから、本来ならば、九州方面でその任にあたり、独占的に武器輸入を図るべき立場にあったのだが、手を抜いたということである。

 そのかわり、国内での示威行為には熱心だったため、日本国騒乱を招いてしまったのである。おそらく、このすきをついて、武器輸入で急成長する勢力もあっただろう。その一方、農業生産余力が急速に高まり、新田開発に係わる紛争も多発し始めた筈だ。
 解決策は「スサノオの命」を権力から放逐するしかない。

 放逐の断が下ったが、「スサノオの命」は、先ずは、高天原を治めている姉の「あまてらす大神」のもとに参上する。ところが、力ある命が突然来たから、高天原を奪取しに来たと思い、弓矢で武装して迎える。
(必不善心. 欲奪我国耳.)

 このことは、「あまてらす大神」の宗派の方針と、「いざなみの神」に帰依する「スサノオの命」の考え方が微妙に異なっていることを示している。武力を重視する勢力は、宗教勢力を従わせるべく示威行動をとるが、「あまてらす大神」は毅然とした態度で臨む。
 このため、両者は対峙することになり、国は大分裂の危機に遭遇したが、天安河を挟んで、「スサノオの命」の誓約提案から和解の道に進むことになる。
 八尺の勾玉と十拳剣が交換され、神が生まれる。
(答白各宇気比而. 生子. 故爾各中置天安川而.)

 十拳剣からは、3柱の女神。
 一方、八尺の勾玉からは5柱の男神が生まれた。といっても、こちらには数多くの祖神が列記されている。

 要するに、「スサノオの命」に最後まで付き従ったのは、武闘を好む3派だけだったのである。そして、日本の各地の祖神は、こぞって「あまてらす大神」を支持した。
 不退転の決意で臨んだ「あまてらす大神」の雪崩打つような勝利である。おそらく、3派は潰されたであろう。

 「スサノオの命」は、自分が持っていた十拳剣から女神が生まれたのを見てわかるように、悪だくみなどなく、潔白なことを示すことができた。勝った、と語り、落着する。
(爾須佐之男命. 白宇天照大御神. 我心清明故我所生之子. 得手弱女. 因此言者. 自我勝云而於勝佐備.)

 国を治めるには、武力は必須だが、それで決定する訳ではない。鍵は、宗教と思想である。但し、お祭りを通して、始めて方向が決まる。政治のハイライトはお祭りなのである。

 「古事記を読み解く」 (次回に続く)>>>


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