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2005.12.14
 
 


古事記を読み解く [大国主の登場]

 「スサノオの命」が、出雲で権勢を誇るようになったという話、“八俣の大蛇”までは、ストーリーが繋がっているのだが、ここでスタイルが一変する。

 児童絵本の題材になりそうな、“因幡の白兎”の話が突然始まるからである。といっても、あくまでも、主題は“大国主の登場”だが。
  → 「古事記を読み解く [八俣の大蛇] 」 (2005年12月7日)

 これは歴史的大転換が始まったことを示していると思われる。

 大陸との交易を一手に引き受け、武器庫の役割を握ることで、日本の要石の地位を手に入れて隆盛を誇っている出雲だが、必ずしも安定していた訳ではなかった。
 もちろん、武器を抑えているから、国内的には強い立場を維持している。その上、宗教的首府である香具山近辺の勢力との連携を重視しきたから、大きな問題は発生しなかったのである。

 ところが、大陸との交易はそうはいかない。相手も変わるし、交易条件では、しばしば揉め事が生じていたのである。

 しかも、大陸との間には、海外文化で栄える淤岐嶋(隠岐)がある。ここを拠点とする「和邇」印の海賊勢力が日本海を徘徊しているのも、厄介な問題である。

 瀬戸内海から九州というルートを外し、出雲に中心を移すことには成功したのだが、海の勢力を輸送部隊として上手く活用して、大陸との交易を伸ばす政策は今一歩の状況だったのである。
 そして、ついに諍いが発生してしまった。出雲の隆盛を見て、海の勢力が、取り分が少なすぎると主張し始めたのである。お陰で、交易担当者のなかには、海の勢力に刑罰をくらう者さえでるようになってしまった。

 こうなっても、既存勢力は、伝統の呪術で対応するだけで、さっぱり動こうとしない。それどころか、事態は悪化の一途。
 スサノオ以来の武闘系の発想が強すぎ、いままで通りのやり方で海上交易を進める方針だから当然の結果とも言える。

 そのため、「兎」をシンボルとしている稲羽(因幡)の民は、危機感をつのらせた。富を蓄積してきたが、このままでは維持し続けることができるか、はなはだ疑問に感じたのである。

 兎には、たいしたことはできないが、真面目といったイメージがある。今昔物語には、非力な兎は、焚き火に飛び込んで、自ら食物となる話が載っている。「兎」の民は武力を持っていないのかもしれない。

 そこで、「兎」勢力は、「オオクニヌシの神」(大国主)の力を求めることになる。出自は既存勢力と同属とはいえ、海外の高度な知識を有する知識人として育ってきた勢力のリーダーである。従って、出雲地区では、主流ではない。しかし、知恵で問題を解決する必要がでてきたから、為政者として適任だったのである。

 稲羽一帯の為政者たる、「やがみひめ」(八上比売)の婚姻相手としては、「オオクニヌシの神」(別名は大穴牟遅神)が望ましいと考えたのである。
 交易集団は、時代が変わり始めていることに気付いたのである。
(将嫁大穴牟遅神.)
 しかし、大多数を占める既存勢力「八十神」はこれを受け入れない。
(故八十神怒.)

 ついに内部分裂発生だ。

 しかし、どうあろうと出雲勢力のなかでは多勢に無勢である。「オオクニヌシの神」派は弱い。

 もともと、国内安定志向の勢力は、交易勢力を良く思わっていないのであり、権力闘争では一枚上手であった。
 山野での狩猟・採取中心の勢力に「オオクニヌシの神」を暗殺させたのだ。
(以火焼似猪大石而. 転落. 爾追下. 取時. 即於其石所焼著而死.)

 「古事記を読み解く」 (次回に続く)>>>


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