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「我的漢語」講座

第14回 四季 2010.8.26
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 春天是黎明最好。夏天是夜晩最好。秋天是黄昏最好。冬天是早晨最好。・・・ご存知、枕草子第一段である。(適当だから信用せぬこと。)
 どうも漢語では四季の微妙な情緒表現に今一歩感あり。
 漢詩のダイナミズムは、“青春-朱夏-白秋-玄冬”を精神の基底とするから一寸違うということかも知れない。
  四时 陶渊明(365-427)
    春水满泗泽 夏云多奇峰 秋月扬明辉 冬岭秀孤松
 まあ、現代では、このような自然の風景は絵画的世界か心象風景化しており、日本人の日常感覚的春夏秋冬とは、以下のようなところか。
   春色满园・・・迎春の気分
   夏云奇峰・・・消夏の気分
   秋高气爽・・・爽秋の気分
   冬日可爱・・・暖冬の気分

 どんな四季感なのか、中国の祝日を日本と比較して眺めてみるのも手である。

 −−− 节日−−− ■:休日
〜 国民の祝日 [日本] 〜
【新暦換算伝統行事日】
 元日 1月1日
 こどもの日 5月5日 (端午の節句)
【仮設定伝統行事日】
 勤労感謝の日 11月23日 (新嘗祭)
【二十四節気(仏教:彼岸)】
 春分の日
 秋分の日
【天皇誕生日】
 (文化の日) 11月3日 明治天皇誕生日
 昭和の日 4月29日 昭和天皇誕生日
 天皇誕生日 12月23日
【政治的な記念日】
 憲法記念日 5月3日 施行日
 文化の日 11月3日 (憲法公布日)
 建国記念の日 2月11日 (日本書紀の紀元節)
【特殊】
 成人の日 1月の第2月曜日[以前は小正月]
【休日増加用】
 みどりの日 5月4日[移動]
 海の日 7月第3月曜日 (明治丸巡幸)
 敬老の日 9月第3月曜日 (敬老会)
 体育の日 10月第2月曜日 (東京オリンピック)
〜 他の代表的年中行事 [日本] 〜
【新暦換算伝統行事日】
  小正月
  雛祭り
  七夕
  中秋の名月
  七五三
  お中元・お歳暮 衣替え
【二十四節気】
  立春/節分
  冬至
【政治的な節目】
  年度始/終
【神社・寺院の行事】
  お盆 夏/秋祭 大祓
【労働組合のみ】
  メーデー
汉字文化圏地區的农曆 [以下はもちろん旧暦表示]
 一月一日 春节■ ・・・2010年2月14日, 2011年2月3日
 一月十五日 元宵节 ・・・小正月
 三月三日 上巳节 ・・・苗族といった少数民族の節日
 五月五日 端午节■ ・・・後述
 七月七日 七夕
 七月十五日 中元节/盂兰盆节 ・・・道教/仏教系の祭祀
 八月十五日 中秋节
 九月九日 重阳节
二十四节气
 立春 ・・・新暦2月4日頃
 清明节■ ・・・新暦4月5日頃
 冬至 ・・・新暦12月日頃
公曆 [以下はもちろん新暦表示]
 一月一日 元旦 ・・・法定休日にせず実質休日ということになるのでは。
 二月十四日 情人节 
 四月一日 愚人节
 五月的第二个星期日 母亲节
 六月的第三个星期日 父亲节
 十二月二十五日 圣诞节
 十二月三十一日 “小”除夕 ・・・旧暦の大晦日が本流。

 見てすぐに気付く違いは、仏教の影響の有無だろうか。(清明節v.s.お盆+お彼岸)それと、日本は新暦換算してしまったので節目の季節感がズレてしまった点も特徴的。季節感を大事にする民族と自称するがそれは建前。実質より、形式に矢鱈こだわる性格ということ。中国は、世界標準の新暦を導入したが、農暦(旧暦)を引き続き維持するのだから立派なもの。貧農を基盤とした人民解放軍が作った国だから当然と言えば当然ではあるが。

 いかにも日本らしいのは、新嘗祭(勤労感謝の日)か。中国の収穫祭である中秋節とは対応しないのである。
 それと、元服(成人の日)や七五三という人生の節目を季節感と結びつけているのもいとおかしといったところ。
 そんなことを考えると、両者は表面上はよく似ているが、季節と祝日の連結感が全く違ってしまったと見た方がよさそうだ。

 中国的感覚とは、春を迎える春節に始まり、春秋は清明と中秋(宗教的には本来は中元な筈だが)、夏冬は端午と冬至で成り立っている。しかも、それぞれ、その意味に合致する食が重視されていそうだ。ご馳走の正月は別として、春秋は供物。中秋なら月餅か。夏冬は、健康を気遣う必要があるから、粽と小豆となろう。
 日本は、初詣がハイライトの“冬”の正月と、“春”のゴールデンウィークがメイン。後者は端午に繋げたもの。これに春秋のお彼岸と夏の非法定的休日(休暇)のお盆が季節感を形成していると見てよいだろう。

 そうそう、日本では体育の日があるが、中国は作らないのだろうか。・・・ 夏季奥林匹克运动会 于八年八月八日八点在北京挙行。それにしても、8の数字だらけで、日本も数字の縁起かつぎが大好きだが、中国はそれを上回るようだ。
 この日の扱いがどうなるかで、中国の今後を予想できるというといいすぎだろうか。節日や祭とは、良くも悪くも、文化の固定化を意味するものだからだ。個人主義の対極にあり、個性を消し去って、民族意識を高揚させるためのもの。

 西洋の記念日は日本同様に入りつつあるような気がするが、どんな感覚だろうか。
 日本はクリスマスの大騒ぎは下火になったが、中国がそんな状況に陥るとは思えない。香港や上海のような歴史ある地域は別だが、家庭でのクリスマス“礼物”習慣もなかなか入らないのでは。
 新学期を九月にしているように、インターナショナル標準を受け入れることに吝かではない政権だが、こと宗教が係わる文化については結構神経質かも。それ以外は、脱封建制度で動ける訳だ。
 その辺りは、日本の事情とは相当な違い。日本は躊躇せず旧暦を捨てたが、年度は桜咲く四月にこだわった。海外から見るとわかりにくい考え方であることは間違いない。

 ついでながら、政治的な記念日は体制が違うから一致することはないのは当たり前であるが、見ただけで鉄砲から政権が生まれた歴史を感じさせるものがある。
记念日  ■:休日 ▲:当該対象者休日
 三月八日 国际妇女节▲ ・・・国連のIWD (今は昔、ソ連の二月革命記念日)
 三月十二日 植树节 ・・・孫文忌
 五月一日 国际劳働节■ ・・・もちろんメーデー
 五月四日 中国青年节▲ ・・・抗日運動
 六月一日 国际儿童节▲ ・・・帝国主義者による児童残害と虐殺に対する反対運動
 七月一日 中国共产党成立记念日
 八月一日 中国人民解放军建军记念节
 九月三日 抗戰胜利记念日 ・・・条約締結
 九月十日 教师节 ・・・文化大革命の反省感から新学期早々に設定か。もちろん孔子節ではない。
 十月一日 国庆节

 日本では、教師を尊ぶ風土はほぼ消えたと言ってよさそうだが、中国は大切にしていそうだ。ただ、日本留学生については、過去はその通りだが、現在はどうだろう。
 社会運動的な日を重視する姿勢は、いかにも共産党らしさ。

 児童節と子供の日は全く異なるコンセプトである点にもご注意あれ。尚、5月5日の端午は愛国詩人節である。楚が秦に併合されたことを聞いた屈原(AD343-AD278年)が殉死した日で、子供とは無関係。言うまでもないが、抗日戦争さなかの重慶での文芸運動が始まり。
 中国共産党のレゾンデートルはコミュニズムではなく、抗日運動ということ。

 と言うことで、第十四回はこれまで。
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