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「我的漢語」
2014年5月22日

食文化の五行的差違

五行で気候風土的を決めつけ、それを食文化の基礎的な好みに押し込んでみた。一種のお遊び。
シンボリックな季節  → 新五行思想 [2014.4.21]
 中央・・・季節の変わり目
 東方・・・芽吹きの春
 南方・・・豪雨と猛暑の夏
 西方・・・吹きすさぶ風の秋
 北方・・・凍りつく冬
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お好みの味  → 五行的味わいを楽しむ料理 [2014.5.1]
 中央・・・糖分リッチ --- or 甘」
 東方・・・醗酵の酢味や旨み命 ---
 南方・・・アルカロイド系苦味愛好 ---
 西方・・・刺激希求 --- or 辛」
 北方・・・塩蔵品好み ---() or 塩」

味をこの5つで表現したくなるのは、五行になんとしても当て嵌めようとするからで、面白いことは面白いが、中華料理の現実を反映しているとはとても思えない。大帝国栄枯盛衰で食文化は始終揺れ動いたのは明らかなのだから。

それと、南方料理は「」だという話もよくみかけるが、概念的には濃-淡や、清-濁と考えるべきもの。
あくまでも補助概念とすべきで、しいて言うなら後述する「香」の変形と考えるべきものだと思うが。
そうそう、「甘」を東方に該当させる人もいるようだが、小生はそれは砂糖交易の結果と見る。風土的なものではなかろう。まあ、どうでもよい話だが。

それよりは、「南甜北鹹東辣西酸」という主張の方が問題だろう。日本人なら普通は大いに違和感を覚える筈である。ここでの東は四川から洞庭湖辺りを指すからだ。確かに、湖南の辣加減は尋常ではないが、そこが四川を含めてどうして東方地域になるのかネ。凄い地図である。要するに、五行流に言えば、「水」があるから東にあててもよかろうというすぎまい。換言すれば、海沿いのモンスーン地帯を東にはしたくないだけ。そこは南の文化の一部に組み込みたいのである。中華思想とはそういうご都合主義的なもの。政治優先の世界観と言い換えた方がよいか。
常識で考えればわかるが、四川とは盆地で、強烈な暑さであり、西域の沙漠地域となんらかわらず、スパイス食文化になるのは当たり前。(非モンスーン型なら熱帯/亜熱帯でも、日蔭にいれば涼しい。)しかし、それを認めたくはないのである。それでは西はなんだとなれば、それは水流を欠く山西辺り(広域地図なら北京周辺としか言いようがない地域)を当てるしかなかろう。だから、西は酢食だと強引に主張する訳である。それなら、山東半島の沿岸部は正真正銘の東と違うのかと思わず尋ねてみたくなるだろうが、そうした議論は時間の無駄だからおよしになった方がよい。

日本的味覚からすれば、是が非でも、ここに「」味を入れたくなるが、中華思想にはそのような科学的な概念はない。
しかし、「南甜」として、海沿いのモンスーン地帯を入れてしまうことでわかるように、甜とは砂糖的な純粋な甘味感覚ではなく、旨みが入っているのである。他の地域と違い食材が豊富であり、アミノ酸リッチな食事ということ。
「南甜=南旨」と考えてもよかろう。この辺りの概念は曖昧ということ。とにかく、北の塩漬け食の世界から見れば、甘さを感じるものは垂涎の食文化というだけの話だと思う。もちろん、甘みには付随的に必ず旨みがついてくるのである。従って、中華の中心というか、宮廷料理の基本は「甜」となるというのが小生の見方。

さて、上記の5味で欠けていると、誰でもが気付くのは、「」だろう。
これは中華料理にとっては不可欠な感じがするのだがどんなものだろうか。
さらに、よく耳にするのが、「辣 or 辛」の範疇が日本と違うという指摘。辛いとは、ヒリヒリとした刺激であって、舌が痺れるような「」は違うということ。シビレるような味は日本では苦手な人が多いようで、花椒はほとんど売られていないし、山椒も刺激を感じるほどかけないから、この概念は独立させるのが難しく、辛の一種と見なされてしまうのだろう。

この2つを加えた、都合、7種類が中華風味の基本分類ということになろうか。しかし、これらの組み合わせ味はなんでもOKという訳ではなさそう。

まず、感じるのは、柱があるという点。「鹹」、即ち、「塩っぽさ」である。日本語だと「塩辛さ」。刺激を感じさせないのに、「辛い」と称する訳だから、中国の概念からすれば魔訶不思議。概念のコミュニケーションの困難さを思い知らされる一瞬である。
ここは結構重要なところだと思う。「旨み」文化で重要なのは、少々の塩味。これは簡単なことではなく、塩を利かせすぎると「旨み」が飛んでいってしまい、尖った味になってしまう。これは嫌われる訳だ。ところがその一方で、多量に塩を使い、「辛い」刺激として味わうことも可能。これが日本流家庭料理。まあ、もともと塩味が原初的な味だったのだろうから、日本にその感覚が残っているのは当然のような気もする。
ただ、食塩が統制品となってしまい、精製塩に慣らされてしまったから、その感覚は失われつつある。

中華料理でいえば、 鹹甜 鹹酸 鹹苦 鹹辣 鹹香 鹹麻 という組み合わせが生じることになる。
つまらぬことを書いているように見えるが、これが結構重要なのである。2つの味であることに注意を払って欲しい。と言うのは、雑多の"奇怪"があるからだ。鹹甜酸辣、こりゃ凄すぎ。

中華の場合、なんとなくではあるが、第一義的には塩味を主張していない感じがする。
「塩っぽさ」で喜ばれるのは、あくまでも、鹹鮮と見るからだが、どうだろうか。蠣油蟹黄といった風味はこの類ということになる。そうだとすれば、は、独立的な味であり、8番目の位置づけにした方がよいかも。

すでに述べたように、大陸で人気がでるのは、「甘っぽさ」。
そうなれば、味、酸甜味、が基本となろう。
理屈では、甜鹹甜香もあっておかしくないが、さほど喜ばれることはなかろう。

その一方で、「甘っぽさ」を消し去る刺激も大いに好かれている。
麻辣味や香辣だ。日本的感覚とはおよそ合いそうにない酸辣味も、大陸では愛好者が多そう。

そして、系統。
西の文化が強まれば、香鮮の料理が主流になってもおかしくないが、今のところは、そういう方向には進んでいないようだ。
苦香でこそといったところ。ここらは、和のテーストだと、苦鹹となりそう。もっともこれは、潮と藻からつくっていた和塩の結果とも言えそう。そこには旨味が自動的についてくるからだ。岩塩系だとそうはいくまい。
しかしながら、中華の食では味は中核的存在なのではなかろうか。それは、南西の天竺、西の外れである波斯や土耳古域はスパイス・ハーブ文化から来たものか、はたまら、独自なのかはよくわからないが。
ただ、いかにもアジア的なものが入っているから、単なる渡来料理趣味とは違うのは間違いない。・・・蒜香味、醤香味が代表的だろう。蒜は現代では大蒜/ニンニク一辺倒だが、その昔は野蒜/ノビルだったか。葱香/ネギも入れたいところだが。そうなると、日本的になるのかも。
一方、醤以外としては、味/Milkを外すわけにはいくまい。

ただ、悩ましいのは椒[胡椒,山椒]の扱い。「椒香」なのか、はたまた「椒辣」や「椒麻」なのか、なんともわからず。なんとなくだが、椒香と、それを超える多種多様な香となっていそう。日本流ならそれは間違いなく咖喱/Curryだろうが、中華では五香粉(白胡椒,肉桂/シナモン,八角/大茴/スターアニス.丁香/クローブ,小茴/フェンネル/ウイキョウ,黄,豆,甘草,陳皮,etc.から)十香十三香(花椒,八角,小茴香,丁香,肉桂,豆,陳皮,;木香,砂仁,良姜.白止,山奈,紫,香葉,山査,甘草,孜然,草果,etc.)
このなかで、中華として妙な定着の仕方をしているのが孜然/クミンである。豚肉中心の料理と違い、もっぱら牛肉料理用と見なされていそう。西域から取り入れたのは間違いない訳だから、西安料理独特の香味となろう。
尚、鶏に合う香味で同じようなものがあるのかはよくわからないが、あったとすれば、それは海南料理の味とされるかも。言うまでもないが、南蛮ということで、海南島ではないが。
中華では中心は豚肉料理だが、その場合、香味もさることながら、甜味が重要となる。例えば、浙江省の金華火腿は超有名だが、日本なら紛れも無き旨み用出汁食材そのもの。しかし、旨味という概念が無い中華料理だと、甜味強調食材と見なすしかなかろう。プロシュット・ディ・パルマやハモン・セラーノのような燻製ハムではないから香味と見ることもできないし。


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