■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[1aaa釋詁]■■■
釋詁冒頭の次は【君】。
分かる様な、解からない様な、10文字が並ぶ。・・・
   林 烝 天 帝 皇 王 后 辟 公 侯…【君】

これらの字義の最大公約数を考えると"君"で語られる内容になるということだろうが、理解をはるかに越えるご説明の仕方と言わざるを得ない。現代の辞書の基本機能を果たせていないからである。

しかし、権威者がいかようにも解釈可能であるから、官僚組織としては、こうした記述こそが最良であることは間違いなかろう。同じジャンルの書とされる「說文解字」が、原義推定"命"で記載しているのとは大きな違いといえよう。

文字はそれぞれ異なる字義であるものの、互いに類似的な意味合いを持っており、補完関係にあるとの主張なのだろう。このことは、字義だけでなく、発音でも言えると考えて構わないということになり、字義的には無関係であっても、類似音文字とも類縁性が生まれることもあると言っているようなもの。
ともあれ、権威者の言う通りに暗記すればそれで良し、とのポリシーで学ぶように、との御触れ書としての役割も果たしていることになろう。

一方、字形書たる「說文解字」的にこの箇所を読めば、様相はかなり異なる。"君"はあくまでも主の尊称。しかし、"群"系へと発展している部であって、【君】類文字の最初に記載されている"林"の様に、原義的には全く無縁な文字も類縁意義として扱うことも可能、という解釈になろうか。(「說文解字」流原義推定で云えば、叢々から盛大観を読み取るのは無理筋になるから、ここらの見方を細かく追及すると面白いと思うが、「詩経」読みは面倒極まる。素人には手を出しかねる。)

≪林≫平土有叢木曰林
  百禮既至 有壬有林 錫爾純嘏 子孫其湛  
    [「詩經」小雅 甫田之什 賓之初筵]
  叢々として、なんとも壮観なことよ
≪烝≫火气上行
  籥舞笙鼓 樂既和奏 烝衎烈祖 以洽百禮  
    [「詩經」小雅 甫田之什 賓之初筵]
  文王有聲 遹駿有聲 遹求厥寧 遹觀厥成 文王烝哉  
    [「詩經」大雅 文王之什 文王有聲]
  その意気、なんと偉大なり!
≪天≫顛…至高無上
  曾是在位 曾是在服 天降滔コ 女興是力  
    [「詩經」大雅 蕩之什 蕩]
  万能絶大な至高の神が、アッハッハ・・・
≪帝≫王天下之號
  有周不顯 帝命不時!文王陟降 在帝左右  
    [「詩經」大雅 文王之什 文王]
  天帝の御側に、・・・
≪皇≫大…始皇者三皇 大君
  皇矣上帝 臨下有赫 監觀四方 求民之莫  
    [「詩經」大雅 文王之什 皇矣]
  世之不顯 厥猶翼翼 思皇多士 生此王國  
    [「詩經」大雅 文王之什 文王]
  傑出した大勢の高官達
≪王≫天下所歸往
  四牡彭彭 八鸞鏘鏘 王命仲山甫 城彼東方  
    [「詩經」大雅 蕩之什 烝民]
  全軍の総帥は、・・・
≪后≫繼體君
  下武維周 世有哲王 三后在天 王配于京  
    [「詩經」大雅 文王之什 下武]
  古き時代の3先王
≪辟≫
  鎬京辟廱 自西自東 自南自北 無思不服 皇王烝哉  
    [「詩經」大雅 文王之什 文王有聲]
  祭祀の壇を創設
≪公≫平分
  吉蠲為饎 是用孝享 禴祠烝嘗 于公先王 君曰卜爾 萬壽無疆!  
    [「詩經」小雅 鹿鳴之什 天保]
  祖先たる〜
≪侯≫n.a. ⇒矦[春饗所䠶矦]
  質爾人民 謹爾侯度 用戒不虞  
    [「詩經」大雅 蕩之什 抑]
  官を治める
【君】尊…發號 故
  君曰卜爾 萬壽無疆!  
    [「詩經」小雅 鹿鳴之什 天保]
〆の結論的字義:
 "宗祖"=天下最高位にあり、百官を統率する偉大なる統治者
  

     

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