■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[1c釋詁]■■■
釋詁の解釈で、該当文字数が多い"大"に触れておこう。"A=大"で示すから同じ様に見えるが、「說文解字」とは記載方針が異なっている様に見えるので。

"A=大"でなく、"A=○大 or 大○"という風に絞り込んだ記載が多いのが「說文解字」。ブロードで抽象的な意味とみなされる"A=大"はかなり限定的。
その様な文字のうち、≪大≫部所属の文字は用例探索が難しく、おそらく方言的文字。なんらかの理由で収録の要ありと判定したのだろう。
これ以外は、例外はあるものの、それらの採択理由も薄々わかるから、経典使用文字を並べたと見てよさそう。字義の抽象化が進んだのはこれだけと言わんばかり。
「爾雅」と共通なのは僅かに3文字なのも、毅然として収録文字を選定した姿勢が見えて好感がもてる。(尚、壮大はすでに通俗語化していたと思われる。)・・・

「說文解字」…天大 地大 人亦大焉
   𢧜(𡙮):大
   奅:大 (cavity→empty)
   夽:大
   奃(𡘄):大
   𡗦:大
   㚕(𡘉):大
   𡗼(𡘌):(瞋)大
  :大 ⇒(爾土宇昄章[「詩経」大雅 卷阿])
  :大 ⇒(嘉乃丕績[「書経」大禹謨])
  :大
  溥:大 ⇒(溥天之下 莫非王土[「詩経」北山])
  𡌪:大 (推定:大貌 𡖪 𡖠 㚌 𥟿 etc.の系列字)
  恢:大 ⇒(天網恢恢疏而不失[「老子」七十三章])
  嚭:大 ⇒(吴有太宰嚭[「春秋傳」])
   俟:大 ⇒(儷儷俟俟 或群或友[「詩経」小雅 吉日])
   俁:大 ⇒(碩人俁俁 公庭萬舞[「詩経」邶風 簡兮])
   俺:大 (我@北方地帯)
  單:大 ⇒(單于:遊牧国家初期君主号)
  𦤃:大…始皇者三皇 大君

「爾雅」の説明の前に、「說文解字」を採り上げてしまったが、それは、収録されている文字のほとんどは抽象化が十分に進んでいない状態だからだ。それぞれの文字が持っている元々の字義での、"○大 or 大○"という用法の"大"割愛に近いのではないかと思わせるものが多過ぎるからだ。

換言すれば、"大"の字義は曖昧で、情緒的であることを意味しよう。極めて倭語的とも言える。かなり古層の精神を反映しているということかも。(漢語は表音文字で語彙を表記しないシステムであるから抽象概念形成は苦手というだけのことと見ることもできるが。)・・・

「爾雅」】・・・
弘(厷) spread 
廊 broad 广
宏(宖) vast  
 great 
 used to indicate a great degree 
純 entirely 
夏 magnificent (吐呼羅国) 
 big/arrogant 
(龐) huge in scale 
墳 embankment 
嘏 great 
 grand 
奕 grand 
洪 immense (洚水) 
誕 absurd 
戎 expand 
駿 splended 
 artificial 
京 large 
 eminent 
 prosperous 
訏 exaggerate 
宇 universe 
 high and vast 
 grand 
路 (long) journey 
淫 gigantic 
甫 honorific 
景 amazed 
廢 collapse 广
 robust 
冢 summit 
 uncomplicated 
 flourish (grass) 
(𭨞) expansive 
 big 
 lead 
業 lofty 
蓆 vast 

字義引伸の例が続いて記載されている。・・・
「爾雅」
[覆cover] e.g.士喪禮 死於適室 幠用斂衾[「儀禮」]
[石大huge in scale(bulky)] e.g.受小共大共 為下國駿厖[「詩經」長發]
  

     

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