■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[4釋親]■■■
「爾雅」巻四は"親"的観点でのヒトの呼称カテゴリー。
極めて重要な文字と云ってよいだろう。

しかし、それは、相対話語の倭人が大切にしている敬語表現の重要性とは次元が異なる。
あくまでも、天子独裁-官僚統制による、個々人の精神的レベル迄踏み込んだ管理社会維持にとっての重要性ということだから。簡単に言えば、宗族用語。

どの社会でも有りうるが、社会的地位に応じた呼称を間違えずに使うことは、生きていく上で不可欠なこと。社交上での礼儀は大切であるのは当たり前だから。
しかし、中華帝国で親族関係の呼称は、その次元を遥かに超えている。

独裁者たる族長を頂点としたヒエラルキー構造維持のためには、血縁上の世代と年齢に応じた厳密な呼称体系は無くてはならぬ道具であることは自明だからだ。その管理構造が、同時に、国家組織のヒエラルキーに組み込まれているので、社会の安定性が保たれる仕組みに仕上がっている訳だ。

従って、「爾雅」記載内容は、結構細かい。
要するに、父系、母系、妻系での血族内呼称が規定されていると言う事。(「說文解字」では、父母妻は部首では無い。)
さらに、これに沿った形で婚姻による親族形成に対応する呼称も定められている。
ここらに興味が湧かないと読む気力がそがれるほど、規定される世代の巾は広い。もっとも、それは直系男子の話で、<妻之黨>になるとほとんどおざなり。

【付記】
儒教の信仰としての本質は釋親に濃縮されているといっても過言ではない。・・・
既に書いたことだが、同義語篇{≪釋詁≫[古人用例] ≪釋言≫[通常用例] ≪釋詁≫[重畳用例]}は前置き。
「爾雅」主部は事物語篇であり、その冒頭は当然ながら、≪釋親≫以外に考えられない。

萬物が儒教的秩序に依って成り立っていることの確認こそが本題。その核は宗族第一主義の天子独裁-官僚統治国家に於ける血族の扱い。その核は、儒教的独裁統制下で編成されている親族に関する記述。

儒教信奉の中華帝国にとっては、なにがなんでも、天子独裁-官僚統治の管理体制ありきで、これを根底から支えているのが宗族信仰。その言語ルールこそ≪称≫なのだから当然である。(cf. 梁章鉅[撰]:「稱謂録」32卷 1886年)
ここでは、その核としての親族だけが、触れられているに過ぎない。これだけでも、十分煩雑ではあるが、本来は天子・宗室・公主・外戚といった血族系にも触れておくべきだし、膨大な官僚名も付録としてまとめておくべきだろう。字書ということなら。

≪釋親 第四≫
考 母
王父 父王母
王父曾祖王父 王父曾祖王母
曾祖王父祖王父 曾祖王父祖王母
世父 叔父從祖祖父 父世母 叔母從祖祖母
晜弟 先生世父 後生叔父
男子先生兄 後生
謂女子 先生姊 後生
姊妹姑 父從父晜弟從祖父
從祖晜弟族父 族父子相謂族晜弟
族晜弟子相謂親同姓
子 弟子相謂從父晜弟
孫 孫曾孫 曾孫玄孫 玄孫來孫 來孫晜孫 晜孫仍孫 仍孫雲孫
王父姊妹王姑 曾祖王父姊妹曾祖王姑 祖王父姊妹祖王姑 父從父姊妹從祖姑 父從祖姊妹族祖姑 父從父晜弟從祖王母 父從祖晜弟族祖王母
兄妻世母 父弟妻叔母
從父晜弟從祖母 父從祖晜弟族祖母
從祖祖父族曾王父 父從祖祖母族曾王母
庶母
祖…【王父】
晜…【兄】
  ━━宗族

外王父 母外王母
王考外曾王父 母王妣外曾王母
晜弟舅 母從父晜弟從舅
姊妹從母 從母男子從母晜弟 其女子子從母姊妹
  ━━母黨

外舅 妻外姑
甥 舅
晜弟甥 姊妹
姊妹同出
女子謂姊妹私 男子謂姊妹
女子謂晜弟姪 謂出離孫 謂姪歸孫
女子子外孫 女子同出 謂先生姒 後生
女子謂兄嫂 弟
長婦謂稚婦娣婦 娣婦謂長婦姒婦
  ━━妻黨

婦稱夫曰:舅 稱夫曰:
姑舅在則曰:君舅 君姑 沒則曰:先舅 先姑
謂夫庶母少姑 夫兄公 夫叔 夫女公 夫女弟女妹
婦 長婦嫡婦 衆婦庶婦
女子子婿 婿
婚 父宗族 母與妻兄弟
父母 婿父母相謂婚姻
兩婿相謂亞 婦婚兄弟 婿姻兄弟…【嬪婦】
謂我舅者…【吾謂之甥】
  ━━【婚姻】
  

     

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