■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[4c釋親]■■■
"宗族"は概念が曖昧なので要注意。
家系上の男系尊属という概念に慣れているので、その同類用語と見なしがちだが、全く違うと考えた方がよいと思う。

以下の様に定義した6層で頭を整理することをお勧めしたい。そのうちのどのレベルを<宗族>と呼ぶべきか考え、「爾雅」釋親が設定している4つのジャンルの意味を探ると、中華帝国に於ける"宗族"の役割が分かって来る。

民族元始魂(宇宙根源)と共通トーテム(生命創成神)を尊崇する一族
姓族有史以前の傳祖(人格[神的扱い])を共有する一族
   <姓>は女系(地母)を意味する。
   妊…伏羲 姜…炎帝 姫…黃帝 姚…帝舜 姒…禹(夏王朝創始) 妘…帝嚳

氏族(支配)地域[縣(國とも呼ばれる。)]名を冠する自称血族(男系)
親族本家家長独裁の血族(共有財産所有)[本家-分家構造]
家族献納単位
戸族同居人々(食生活単位⇒徴税対象最小単位)
    [正式構成員](相続可能な不動産所有者) (相続可能な動産所有者)
    [他] 未成人(宗廟での命名前は人として認定されない。) 非自由人
何代も経緯すれば、宗族メンバーたる戸長の数は膨大になり、地域的にも分散してしまうので、分脈化(世)必至。しかし、関係を維持するメリットがあれば消滅する道理が無い。各分脈代表や選ばれた名士(中央官僚、高級軍人、資産家)による祭祀が行われることで維持されることになる。
常識的には、地域氏族は土着の地祇祭祀をも執り行うし、邑単位では戸主の鎮守神の合同祭祀と宗族祭祀は重層化していると思われる。


・・・「古事記」では、宇宙創成期の5別神と国土と民族祖神を生む対偶祖伸が民族史の始まり。ところが、"漢族"にはこの部分は存在しない。姓や號を有する帝が<祖>。換言すれば、"漢族"とは民族では無く、漢語(文字表記言語)で成立する国体(天子独裁-官僚統治)を意味する概念ということになろう。(天帝尊崇=宗族第一主義の宗教観の核)
この見方からすれば、「古事記」での用語、"天皇"(宇宙創造~の系譜に連なる倭の大君)とは、<皇帝>に対応する倭国の地位の名称ではなく、<姓族>名称ということになってしまう。

もう一つ、似て非なる考え方があるので確認しておこう。
現在の日本国にも強固な本家-分家体制が持続しているが、中華帝国の宗族とは似て非なる構造。(概念が曖昧だと理解できない。)
中華帝国は天子独裁-官僚統治の仕組みだが、官僚統治とはあくまでも縣(國)レベル。[中華帝国の"郡"は、"縣"の上位単位で、日本の様な下位単位ではないので注意を要する。]邑の統治組織の公認官僚は派遣事務官で(徴税・徴兵・労役・等のの書類作成作業者。)、実質的権力者は地域氏族長達。これこそが"宗族"の本質と考えることもできよう。(つまり、地域に根付く宗族の連合体からなる自治組織と帝国中央組織の2層構造。)

倭国は天皇の一般呼称が宮地名であるし(母系不動産相続社会だったということかも。)、臣下の氏族とは、地域の土着民を意味していそう。「古事記」記載の主要氏族は天皇の血縁にあたるので、(例外もあるが、親衛組織か祭祀氏族に限られる。)表面的には血縁社会だが、現実には、母系色が濃い地縁優先で成り立って来た社会と考えるべきだろう。(科挙・宦官制度が完璧に忌避された点を見ても、中華帝国的2層構造を模倣する気は更々無かったようだ。換言すれば、宗族という観念がさっぱり理解できなかったのかも。)
  

     

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