![]() ![]() ■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[8b釋天]■■■ それに対して、「說文解字」は"年"未収録で、スタンスの違いが際立っている。文字を並べてみると、漢語の特徴をものの見事に示していると云えそうで、こちらは流石感。 ≪車≫載:乘load (→記録record →量詞year) ≪步≫歲: 木星Jupiter (→十二月一次new-years) ≪示≫祀:祭無巳worship (→代generation →年紀year) ≪n.a.≫年 (年者 取禾一孰也@「說文解字注」 ⇒≪禾≫秊:穀孰new-years) ≪齒≫齡:年person's age これではどういうことかわかり難いだろうから、字書とは直接関係が無い話だが、解説しておこう。・・・ 中華帝国とは儒教的宗族信仰を基盤とする天子独裁-官僚統治体制と同義であるが、通俗的には、漢語人の植民国家ということになろう。 従って、漢語を日本国公式言語とする方向へと踏み出すということは、遠からず中華帝国の一部分になることを意味する。間違えてはいけないのは、それを歓迎する人々も少なくないということ。(勿論、当時の日本列島の人口で見れば、大多数の人々にとっては、それは支配層内での動きでしかなく、損得勘定もできかねるから、どちらに転ぶかについて特段の関心などあろう筈もない。) その流れに棹さすべく立ち上がったのが、太安万侶。多数派が公式国文とされた漢文の国書編纂を急ぐなかで、ここぞとばかり強烈な一矢を放ったといえよう。その辺りの感覚は、サンスクリット経典を翻訳後焚書化する中華帝国の風土を知っている帰国僧侶層も同じ。漢語に熟達した知識層が、これを切っ掛けとして、急遽、日本語文法学を立ち上げたと見て間違いないと思う。「古事記」なかりせば、日本語は存在していなかった可能性大なのだ。 ・・・この辺りの感覚が無いと、漢語の特徴を肌で感じることはかなり難しいかも。 話語としての漢語の原点とも言える地は、おそらく洛陽。殷語や周語、孔子の言葉である魯語とは異なる言語と見てよいだろう。 殷語はいわば西域の異国の言語であったが、覇権国となると、驚くことに自国語を標準語とせず、中原中央部の言語を用いたようである。(当然、殷語は消滅して行く。しかし、殷代標準表記語は広く普及したようで、黄河北端から四川盆地迄の西側地域に迄、その言語的名残りが認められる。)続く周は姜族。しかし、周語を使わず、殷の規定した中華帝国語を踏襲することにしたようだ。お蔭で黄河全域を統治する一大勢力に発展できたといえよう。 要するに、殷⇒周の王朝革命があったところで、天子独裁-官僚統治体制自体は変更皆無だったことになる。そして、官僚についても、相も変わらず各地の宗族の選りすぐり(科挙)人材。従って、記述言語変らずである。・・・覇権を維持したければ、官僚機構の動きを止めかねない標準言語の変更などあり得ないということ。革命王朝は、自国語強制ではなく、標準語への転換の道を選ばざるを得ない訳だ。 ・・・全土くまなく、帝国化ありきの信仰が広がっている以上、天命を受けた天子としては故郷の母国語を棄てて、帝国標準語に乗り換えることになる。 「說文解字」が、言葉の表記化の道具としての文字を発明したのが、帝ではなく官僚トップであるとしたのは、まさに慧眼と見るのは、それを踏まえてのこと。(発明者の称号記載が無いので、帝と解釈することもできる。扱いから言えば、帝と遜色無しだし。) 越境性が保証される(方言ということではなく異国言語を取り込める。)文字表記は、意義発音共に柔軟性が容認されている漢字と、ユニバーサルで厳格な表音を指定する記号を用いるサンスクリット用文字しかないことに早くから気付いていたとも言える。そして、広大な大陸を支配するつもりなら、前者しか道はなかろう。 そう考えると、異民族王朝の姿勢で特筆ものは、六朝代の五世紀に華北を統一した北魏(鮮卑族)第六代皇帝孝文帝の母国語("北俗之語)廃止の詔勅@495年。・・・ 詔不得以"北俗之語"言於朝廷 若有違者 免所居官 これこそが連綿と続く中華帝国の特質。 清朝(ツングース系女真族)にも独自言語があり、それに対応する満州文字を作ったものの(日本国公文書館で日清条約成文を閲覧可能。)†、自ら漢語同化政策を推進。当然ながら、現在ではほとんど消滅。漢族化はほとんど完了と見てよいだろう。いまや、その残渣は、1764年に1,000家族が移住させられた20万人弱の錫伯族Xibe@吉林省扶余市で確認できるに過ぎない。植民が急速に進む新疆ウイグル・チベット両地域もその過程にある訳で。 †歴代日本国総理大臣の署名を見た後で当該条約を眺めたせいもあるが、全体調和を重視している美しい文字である。尚、署名だが、現代人のなかでは漫画首相が一番達筆であり、さもありなん。全く筆を使ったことのなさそうで踊り書きの御仁もいて、その余りの無教養レベルに驚かされた。 ⏩続 ![]() (C) 2025 RandDManagement.com →HOME |