■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[17b釋鳥]■■■
「爾雅」所収の信仰に係る鳥は、すでに触れた<鴗 天狗> <鶠 鳳 其雌 皇> <皇 黃鳥> <鶼鶼 比翼>に過ぎないが、特筆すべきは、恐ろしい災禍を及ぼす異形の禽満載の「山海經」を無視していない点。天子独裁-官僚統治体制に悪影響無かりせば、実態(被統治部族の民俗)はママ報告されるという中華帝国文化に沿った書ということになろう。
   人面鳥 比翼(♂♀兼)
この「山海經」だが、驚く様な創作話が収載されている訳ではなく、特徴がデフォルメ的に誇張された土着のトーテム類が、帝国官僚的視点で記載されているだけの地誌書。梟類はどう見ても人面鳥以外の何者でもないし、目に見える模様のお蔭で4眼と見なされて2体合体化と見なされることなどザラ。常識で判断する必要があろう。

一方、「說文解字」はかなり風合いを異にしており、~鳥類がやけに詳しい。漢王朝が重視していたから当然の姿勢。・・・
𠘧:鳥之短羽飛𠘧𠘧
  鳳[鳥+凡]
  [虫+凡]

【神靈之精】
  羌獻鸞(鳥)
江中神鳥】
  鸑鷟 鳳屬
五方神鳥】
  東方發明
  南方焦明
  西方鷫鷞
  北方幽昌
  中央鳳皇
【鳳凰別名】
  鶠 其雌 皇

神鳥についての説明が無いので、分りかねるが、こういうこと。・・・
鷫鷞…鳩喙 圓目
       身義 戴信 嬰禮 膺仁 負智 至 則 旱疫之感也
發明…烏喙 大頸 大翼 大脛
       身仁 戴智 嬰義 膺信 負禮 至 則 喪之感也
焦明…長喙 疏翼 圓尾
       身義 戴信 嬰仁 膺知 負禮 至 則 水之感也
幽昌…   鋭目 小頭 大身 細足 脛若鱗葉
       身智 戴信 負禮 膺仁   至 則 旱之感也

  [「後漢書」五行志]
いかにも儒教らしさ芬々。要するに、東西南北に天帝が覇権する凶鳥在りということだろう。「山海經」登場の異形の鳥の再編を試みたことになる。
漢代以降は、多数ある異形の禽を都合の良い方向に纏めることになるが、非儒教的土着信仰が復活してきたと見ることもできよう。
  鳥形獸頭(獐 牛)…吉利 富貴 [「天地瑞祥志」@666年第十八禽]

これらの~鳥だが、基本、実在の鳥のイメージが根底にあるとして読み取るべきと考える。そのポイントは五彩的色彩。
  鸞(鳥)=セイラン青鸞 or カンムリセイラン冠青鸞/鳳頭眼斑雉
  鳳凰=クジャク孔雀
  鸚鵡=オカメインコ御福鸚哥(音呼)/雞尾鸚鵡
              or
キバタン黄芭旦/葵花鳳頭鸚鵡
  __=フウチョウ風鳥/極楽鳥

小生は、唐代の書「酉陽雑俎」で王朝の実態が想像できるようになったが、恐るべき異形表現であろうと、すべて現実の鳥がモデルと見た方がよい。ほとんどは、官僚層が、流布している姿形の標準を規定した上で、手を加えて固定化したイメージということ。トンデモない姿形に仕上げているなら、そこには、それなりの理由があると云うに過ぎない。
ここらのimplicationこそ、即、読解力。
五方神鳥は、外周の凶兆鳥と中央の瑞兆鳥という構造。言うまでもないが、瑞兆発見とは、天子寿ぎ行為そのもの。珍しい鳥の開陳を天帝の伝辞とする、フレームアップと思われる。
(もちろん、遠路飛来の超特殊例もある。それをどう活用するかは官僚の腕の見せ所。)儒教国の統治とは、そうした官僚の知恵で成り立っているとも言える。
  

     

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