■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[18f釋獸]■■■
釋獸をザッと検討して来たが、「爾雅」を詩作手引書として見るなら、その観点で考える必要もありそう。
ということで、試しに、<兕 似牛  絶有力 䝈 牝 豝>を採り上げてみた。・・・
≪Rhinoceros 犀≫  兕/𠒅  𧰽  𤉡 
📖
:兕牛角可以飲者 其狀觵觵 故謂之觵
  柙:檻 以藏虎兕
≪Bore 現家畜豚≫ 豕 or 豬
  ≪Wild pig ヰ(猪@倭)≫    豚/小豕
  ≪Wild pig 豪的≫…[(有牙)頭部] 彘  𧱈  㣇
:牝豕

用例。・・・
  既張我弓 既挾我矢 發彼小豝 殪此大兕 以御賓客 且以酌醴
     [「詩經」小雅 南有嘉魚之什 吉日]
     弓を張って 矢を番え 小豚を射止め 大牛を射殺し
     それを以て賓客をもてなそう。かくして、ふるまい酒で大宴会。

  彼梼メ葭 壹發五豝 于嗟乎騶虞
       [「詩經」國風 召南 騶虞]
     繁茂している葦藪に出でて 一矢を射るだけで 牝イノシシ五頭。
     なんとも素晴らしき 仕事人達。


ここらの解釈には次の文字参照も意味あるかも。
觵/觥:兕牛角可以飲者其狀觵觵 故謂之觵
   …もともとは犀角製酒杯(後 牛角製や青銅製)

両者ともに、狩猟が題材だが、前詩での小豝 & 大兕の翻訳は難しい。
小型とはいえすばしっこくて喧嘩早い野イノシシと巨大で獰猛果敢なインドサイとしてもよいし、家畜化して肥え太って美味そうなブタと立派に育て上げた脂がのった飼育大牛でもかまわないからだ。
一見、吉日に挙行される好例狩猟後の客人を呼ぶ大宴会に映るものの、あくまでも暗喩であって、征伐勝利の大宴会を意味していると考えるべき。もともと、狩猟祭祀とは、当該領地王者としての振舞いで、戦争なき時の代替的行事以上では無いのだから。

これを踏まえれば、次の詩は大笑いする人もでてこよう。
"我が君流石。矢を放てば大成果。"というお話だが、要するに担当官が獲物を用意して、命中するような場所に放つのであり、余程無能でない限り誰でもできる。それを準備しお祭りとして立ち上げた臣下は凄いネ、という訳で。それを褒めているのか、馬鹿げていると解釈させたいのかは、不明。

中華帝国の中心地域では有史に突入する以前に野生種は絶滅に近く、トレース不可能ということもあり得そう。つまり、野生棲息とはwild boreではなく、家畜のdomestic pigの逃亡野生化ということになる。wild boreは簡単な罠で対応できるが、野生化pigは巨大化している上に賢いので矢で仕留めるしかないことになる。彘は野生化動物を意味しているのかも。
---非欧州/東洋系の種とグループ---
野豬/山豬
イノシシ[猪]wild bore…[絶滅:エジプトスーダン] 中東 バイカル ウスリー満州 日本 琉球 台灣 華南 ベトナム マレー パミール天山 インド セイロン
家豬ブタ[豚]domestic pig…華北 華中 華南 江海-台湾 西南 藏豬 アグ― 唐豚 ポットベリーピッグ
  
     

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