■■■ 「說文解字」「爾雅」検討[18g釋獸]■■■
小篆の"子"の字形は♀によく似ている。そこで、甲骨→金文→小篆と字形が連続している印象を与える好例としてそこら中で見かけることになる。(但し、縦棒は下方一直線でなく流れていることが多い。横棒も流れるものの、左右上向きだけでなく、童形釈尊像を彷彿させる上下パターンも多い。)
ところが、同義異体の古い字形"㜽/𡿹"が並列的に存在している。上部に巛が付いているだけだが。(小生は"㜽"を日本語文章で見かけた覚えは無いが、漢籍では用例は少なくなさそう。)

「說文解字」には、さらに、それに輪をかけたような複雑で下手をすれば怪奇的と呼ばれかねない字形𢀈/𢀉も収録されている。

この程度なら、なんらかの規定があったのだろうと想定して、それ以上追求しないことになるが、金石を眺めた途端、その考え方を改めざるを得なくなる。{巛+⊗+儿}程度なら気にもならないが、そのバラエティ度は並外れているからだ。(この辺りの説明はなされていない。@「字通」)

他の文字とは違って、象形化に一様性が欠けている訳で、元義が一意的に<baby>であるとの見立ての信用度は極めて低い。

その点、字形の秩序性=系譜と考える「說文解字」は明確である。巻十四で十二支#1として収録したのだから、その字義は、十一月 陽气動 萬物滋 人以爲偁となる。象形。
   ・・・・・・・亥@「說文解字」 offspring
   寅・・・・・・@釋天 …11月

ところが、驚くことに、子と同一としか見なせない字形が十二支の"巳"にも用いられている。四月 陽气巳出 陰气巳藏 萬物見 成文章 故巳為蛇という解釈である。蛇の形とされる文字に、金文で"子"と同一の字形が登場してくる。蛇体に手が生えている象形ということになるざるを得ないが、どういうことなのだろう。
文字屋さんだらけなのに、解説をさっぱり見かけないから、ここらに関しては説明する要無しということか。
(「說文解字」を儒教的と見なす勢力とは、非儒教的思考者かと思いきや、絶大なる愛好者だった。)

釋獣に到達してからこんな話をするのは、「爾雅」の用例には、草木(植物的果實或種子)が無いから。・・・宗族主義とは男系尊属第一主義なので、babyは血族維持に不可欠ではあるものの相対的に価値は低く(子は祖の意向絶対服従で、親の為の犠牲役。)、ヒトとして扱われるべき対象ではない。一方、これと対照的な女系社会では、babyは宝物であり、offspringとその成長力こそが社会の根源と見なされる。蛇は生殖行為の象徴でもあり、その社会では大切にされることになる。

そんなことを思わず感じさせられるのが"子"文字用法。
宗族社会での"子"とは、血脈上の無味乾燥規定用語となる。動物に適用した場合は、食の対象としての峻別の要がある場合に用いる文字と考えてもよさそう。

   子子 孫孫…【引無極】
    【有斐君子 終不可諼兮】
   之者…【是@釋訓
   男子 女子
   〜…【_】@釋親
   天子@釋水
       不過 蟷蠰 其子 蜱蛸
       螱 飛螘 其子@釋蟲
📖
       鯤 魚@釋魚 📖
       鶉
       鴽
       雉之暮爲鷚@釋鳥 📖
シフゾウ
…(牡 麔 牝 麎) 其子/䴠
シカ
鹿…(牡 麚 牝 麀) 其子/𪋈/麑
ノロジカ
…(牡 麌 牝 麜) 其子/𪊹
オオカミ
…(牡 獾 牝 狼) 其子
ウサギ
嬔…[生子齊均] ≒嬎/𡢎 㛯 婏/娩 𡤹  㝃 䨲
イノシシ

クマ トラ
熊 虎醜 其子 狗  ≒豿
  犬…狗
  熊 or …狗
  馬…駒
  犢牛…𤘽
  𦍵…n.a.  羔…羊  羍[小羊]
  (豚吼声)…豞
  トガリネズミ[尖鼠]…鼩鼱
タヌキ→ ヤマネコ
𧳙 =𤝽 㹭
バク  …(牝 𧳦)
貆 =𧳔
ブタバナアナグマ

[瑞獸]貔貅/辟邪/天祿
貔 白狐 其子@釋獣
口の周りが黒いウシ
K脣 犉・・・其子
大きなニワトリ
鷄大者 蜀 蜀@釋畜
  
     

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