■■■ 「說文解字」 卷十四を眺める[7]  ■■■

十二支については触れたので、十干についても。

太安万侶的は、「說文解字」 の解説から、十二支文字の元義を読み取っていたと思う。
📅「古事記」用例
と云うことで、元漢字を推定してみた訳だが、その個々の文字が当たっているかは、どうでもよい話。重要なのは論理。
そこらに触れておこう。

8世紀初頭のことだから、知識人なら、仏典に接していた筈で、インターナショナルな文化の風に当たっていたと見て間違いないだろう。
そうなれば、十干とは10進法の原点ということがわかっていた筈。10進法数字表記が重複して存在する理由などなく、一〜十はもともとは十進法文字ではなかったと考えるべきと思う。と云うか、「說文解字」の書き方がそれを暗に示している。

漢語の数字感覚は、一見、十進法だが、前身は非十進法。
易は基本二進法。実用上、8x8の仕組み(☰☷)であり、十進法の息吹は何処にも感じられない。このことは、世界標準に合わせる必要性から、数字10を設定して十進法を使うことにしたと考えるしかなかろう。(要するに、模倣であって、「說文解字」の、文字発明者は官僚であって帝王ではないという見方は正しい。)
つまり、百=100、千=1,000は、この文字の元義ではないことになる。古代王朝が10進法採用に合わせて定めたという意味では、原義そのものだが。
もしも、もともとは12進法だったとしたら、百=12x12、千=12x12x12となっていたことになろう。

そう考えると、巻十四の数字列に"八"を所収できず、巻二で、"分れる"的な字義で位置付けているのは示唆的構成であることがわかる。("小 釆 半"との字体類似性の系譜形成では、"八"存在の必要性は極めて薄い。)
数字はもともとは8迄だったかもしれない。8=八ではないのだから。十は数字としては、8だった可能性もある訳だ。
  1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒6⇒7⇒8
  一⇒𠄠⇒三⇒亖⇒𠄡⇒☷⇒七⇒十
(倭人の観念では、数字は一〜八で、六=三x2、八=四x2。これは、中華帝国前身の古代観念を引きずっているのかも。)

要するに、十進法1〜10の文字とは、<一〜十>ではなく、<十干>。

それを踏まえて「說文解字」の字義解説を読むと面白い。4と10の対応は困難なのは当たり前にもかかわらず、強引に四季用語にしようとしたことが記載されているからだ。
そんな無理筋強制が成功する訳もなく、結局のところ身体部位に当て嵌めることになる。いかにも官僚が考えそうな解決方法だが、この用語はほとんど使われずで終わっている。(普通なら、指を用いるが、蛮族の真似は中華の沽券にかかわるから利用することはない。)
最終的に、五行で対応することにしたのだろうが、これなら兄弟で10になるから、甲〜癸の12文字は不要な筈。従って、「易」の記述の様に、なんらかの流れが措定されて、10文字があてられたと思われる。(尚、旬は10の太陽が入れ替わり登場するとのコンセプト由来。)その略文字が甲〜癸なのだろう。
  1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒6⇒7⇒8⇒9⇒10
  _⇒春⇒_⇒夏⇒_⇒中⇒_⇒秋⇒_⇒冬
  東⇒_⇒南⇒_⇒中⇒_⇒西⇒_⇒北⇒_
  __________
  頭⇒頸⇒肩⇒心⇒脅⇒腹⇒𪗇⇒股⇒脛⇒足
  𠇺⇒軋⇒炳⇒㣔⇒茂⇒紀⇒㢍⇒梓⇒妊⇒揆
  甲⇒乙⇒丙⇒丁⇒戊⇒己⇒庚⇒辛⇒壬⇒癸

当然ながら、十二進法でも同じことが行われたに違いない。それが、」<十二支>と呼ばれて定着することになった。それぞれの原義はトーテム代表であり、単なる思いつき的な寄集めでしかないが、元義は12ヶ月の筈。
中華帝国の官僚なら、それに合わせた文字を当てた筈。しかし、模倣臭は否めず、季節感なき帝国風表現に変えることになるのはほぼ必然。
 1⇒2⇒3⇒4⇒5⇒6⇒7⇒8⇒9⇒101112
 耔⇒紐⇒演⇒留⇒賑⇒抱⇒仵⇒味⇒伸⇒㾞⇒𦮠⇒核
 子⇒丑⇒寅⇒卯⇒辰⇒巳⇒午⇒未⇒申⇒酉⇒戌⇒亥
 _⇒_⇒正⇒二⇒三⇒四⇒五⇒六⇒七⇒八⇒九⇒十
 鼠⇒牛⇒虎⇒兔⇒龍⇒蛇⇒馬⇒羊⇒猿⇒鳥⇒狗⇒豚

甲…部首文字のみ 【東】
  [日+h]ということではなく、
    [象人頭]。
乙 【春】
  1画だし、[一+乚]ということではなく、
    [象人頸]。
  乙(乾)、土(圪)はあれど、"乞"は非収載。
  乙(亂 尢)としているが、乚(亂 尢)が自然に映る。
  尚、乙(乴)も非収載。
丙…部首文字のみ 【南】
  [一+内]ということではなく、[一+入+冂]だが、
    [象人肩]。
丁…部首文字のみ 【夏】
  [一+亅]ということではなく、
    [象人心]。

  [丿+弋]ということではなく、
    [象人脅]。

  已 巳があり紛らわしい。
    [象人腹]。
庚…部首文字のみ 【西】
  [象人𪗇]。
辛 【秋】
  [一+䇂]ということではなく、
    [象人股]。
壬…部首文字のみ 【北】
  [一+千]ということではなく、
    [象人脛]。
癸…部首文字のみ 【冬】
    [象人足]。
  

金幵勺几且斤斗矛車𠂤𨸏𨺅厽四宁叕亞五六七九禸嘼甲乙丙丁戊己巴庚辛辡壬癸子了孨𠫓丑寅卯辰巳午未申酉酋戌亥 
  巻一

│   巻十三


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③③③ │
垚堇里 │
│┌───┘
││  巻十四
│├┐
①①
金幵
│├┬┬┬┬┐
②②②②②②
勺几斤斗矛車
│ │   │
│   𠂤𨸏𨺅


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𠫓

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