「古事記」解釈[753](20230723)

■■■　「古事記」解釈 [2023.7.23]　■■■

[753] 太安万侶:「漢倭辞典」📅

倭国は絶対年号を必要としていなかったのはほぼ間違いない。

日常生活上は、現時点から何年前で十分だったろうし、長期的な記録にしても、朝廷では天皇代毎での時間軸なのだから。皇統譜として明確にされたのは国史成立時点であり、これによって、日本国として公式の皇位継承が決定したことになるが、これを漢籍に対応する時間軸に当て嵌めるのは極めて難しいものの、そうしたいところだ。「古事記」は無理せず、こんなところでしょうと思われるものだけ、断片的な干支記録を記載することにしている。
純粋の輸入用語で対応する倭語がある訳がなく、読みは"音"であるべきだが、おそらく倭語変換がなされていると思う。そう思うのは、絶対時間表記なのだから、年に使うなら、日付についても十干十二支にしてもよさそうなものだが、恣意的に数字表記にしているからだ。
(漢籍[史書]では干支日付表記が普通。)
序文では"太歲"がらみの言葉を駆使しているから📖、この辺りのことはよくご存じの筈だし。
　＜歳次大梁＞
　　　歳星/木星紀年法(12次)は十二辰に対応し、
　　　大梁は酉年となる。
日付の数字は訓読みだとすれば、おそらく、年も訓読みにしている筈。五行(木火土金水)x陰陽(兄え弟と)＝十干とされているから、五行訓読みにすれば、それも可能だからだ。
現代人からすれば、厄介なことをするように思うが、漢語は漢字の発音に一意性を強要されるが、発音自体は王朝毎に全く異なるのだから、倭人からすれば当然の姿勢と見た方がよかろう。そんなものに全て対応していたらトンデモないことになるからだ。・・・

≪干支えと≫
干1…n.a.
　支2…那古斐支許志(汝恋ひしきし)　幷五伴緖矣支加而天降也

【十干ジュッカン】
　＿呉音/漢音
甲キョウ/コウ14…奧津"甲斐辨羅"神　邊津甲斐辨羅神x2　甲斐
乙オツ/イツ1…乙卯年三月十五日崩也　乙卯年三月十三日崩　　[序文漢文]德冠天乙矣
丙ヒョウ/ヘイ非使用
丁チョウ/テイ6…吉備國兒嶋之仕丁　白之狀具如仕丁之言　丁卯年八月十五日崩也　丁丑年七月崩　丁未年四月九日崩也　丁未年四月十五日崩
　戊ム/ボ1…戊寅年十二月崩　戊子年三月十五日癸丑日崩
　己コ/キ27…乃毎船垂入己頭飮其酒　己之佐知佐知x2　「奴乎己家似天皇之御舍而造」
庚キョウ/コウ非使用
　辛シン非使用
壬ニン/ジン4…壬戌年六月十一日崩也　定壬生部　壬申年正月三日崩　壬子年十一月十三日崩也
　癸キ1…戊年三月十五日癸丑日崩

【十二支ジュウニシ】
　子ね/シ638…壬子年十一月十三日崩也　戊子年三月十五日癸丑日崩 ⇔ 生子水蛭子・・・
　　[序文漢文]子細採摭　日子波限建鵜草葺不合尊
丑うし/チュウ2…丁丑年七月崩　戊子年三月十五日癸丑日崩
寅とら/イン1…戊寅年十二月崩
卯う/ボウ3…乙卯年三月十五日崩也　丁卯年八月十五日崩也　乙卯年三月十三日崩
辰たつ/シン1…甲辰年四月六日崩　　[序文漢文]未移浹辰
　巳み/シ1…己巳年八月九日崩也
午うま/ゴ2…甲午年九月九日崩　甲午年正月十五日崩
未ひつじ/ビ17…丁未年四月九日崩也　丁未年四月十五日崩 ⇔ 未開戶・・・ 📖卡
　[序文漢文]氣象未效　天時未臻　未移浹辰　未經幾年其旨欲滅　未行其事矣
申さる/シン2…專所顯申之汝　壬申年正月三日崩
酉とり/ユウ非使用
　　鶏/雞1…n.a.
戌いぬ/ジュツ1…壬戌年六月十一日崩也
　　犬_…布縶白犬　令取犬繩以獻上　犬婚之罪
　　狗1…n.a.
亥い/ガイ非使用
　　亥≠豕(猪 or 豚)　一説：[origin]荄根⇒孩(新芽)⇒亥
　　猪22…赤猪在此山　以火燒似猪大石而轉落　少名日子建猪心命　白猪　大怒猪出
　　豚非使用

数字については色々と見て来たので割愛。
【漢数字】[大字]📖
　　一＿二＿三＿四＿五＿六＿七＿八＿九＿十＿百＿
　　壹＿貳＿参＿肆＿伍＿陸＿漆＿捌＿玖＿拾＿佰＿
　　ひ＿ふ＿み＿よ＿い＿む＿ななや＿こ＿と＿もも
現代では使用が推奨されていなさそうな文字はこんなところか。・・・
肆7 佰9 仟1…令作横刀壹仟口萬10　[異字体]卅1…卅六年秋九月
一113 壱14(2) 二198 弐3 三177 參/参64 四70 ↑ 五87 伍9 六20 陸6 七26 漆4 八150 捌7 九14 玖[2] 十82 拾25 百45 ↑ 千27 ↑ 万＿ ↑