■■■ 小篆文字検討@「說文解字」「爾雅」[𢊁]■■■
  #371≪𢊁≫【𢊁】🅱🆂/廌/𧣭:獬豸
       (一角神羊@神判)  …legendary beast

小篆の字体は両耳間に一角有。「說文解字」は忠実そのものの記載。このことは、小篆創成官僚の総意として、聖なる審判役は一角たるべしと決定されたことを物語る。確かに、二者択一で一方を角で示すのだから、極く自然な考え方。

├┬┬┬┬┬┬┐
㣇彑豚豸易象
│    𤉡/兕
├┬┐
馬𢊁
 └──鹿
しかし、二角の鹿も字体頭頂部からそれが自明ではなくなって行く訳で、足も恣意的に4点化するという大胆なデザイン変更を為し遂げるのだから、早くからその兆候ありと言えなくもないが。

ともあれ、ここは、文字系譜上鹿が繋がっている上に、字体の印象もあって比定が難しい。
𢊁(似山牛 一角)は、鹿と字体が似ている点があるから、麠(大鹿 牛尾一角)や麢(山羊而大者 細角)の雰囲気を持つ動物ではなかろうか。ここでの山羊とは、超高山岳部棲息で、(鹿と違って落角しない)牛属動物の大陸カモシカ/氈鹿(鬣羚)と思われ、同様に一角ではないが、山牛とすればターキン/塔金(羚牛)ではないかと推測する。(箱舟排除の暴虐な二角獣を、聖書の民は一角獣と見なしている。各国語翻訳はたいていは野獣になってしまう。)
📖

しかし、甲骨では二角であり、神判役を担っていた実在動物であることは確かなようだし、にもかかわらず「爾雅」成立頃には忘却の彼方化と云うことなら、その想定はそう難しくはない。・・・荒漠冷涼な辺境 ツァイダム盆地に細々と棲息している種しかあるまい。
  藏羚チベットカモシカChiru
   (外見はアンテロープに似ているものの全く異なる系列。)
…殷代以前は、ヒトが滅多に行かない地での圧倒的優勢種。超巨大群生状況だったろうが、いくら広大な地とはいえ、一旦、手を伸ばされれば激減。一気に霊的意味も失われ、legendary beast化してしまう。
(尚、ヤク、チベットノロバ、チベットカモシカはなんらかの形で記載されている筈。できる限り目立たない形で。と云うのは、中華帝国官僚は、牛馬羊牧畜3点セットのコンセプトを移入した可能性が高いからだ。)
伝承経路上でチベットとは方角的には異なるものの、酃羊@「山海經」北山経が該当していることになる。
  涿光之山区域多松柏 橿植被 栖息着酃羊等生物

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