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2008.11.27 |
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ソニーがどこかおかしい [2]…ソニーの話をしたくなったのは、実は、株価下落からだけではない。→ 「ソニーがどこかおかしい [1] 」 (2008年11月16日) 企業全体の問題は、すでに、IBMを変革したLouis Gerstnerが2006年に指摘した通り。(1)ただ、変革はそう簡単ではないというだけのことだろう。 要するに、経営スキルも成功の鍵も全く違う事業を集めた、コングロマリット化が進みすぎたということ。この度が過ぎれば、経営トップがリーダーシップを発揮できなくなるのは当然の結果だろう。 しかも、競争相手が家電企業だけでなく、AppleやMicrosoftといった異なるタイプの企業が登場したのである。「ネットワークカンパニー」化という掛け声では、さっぱり動けなかったという見方が妥当なところか。 言い方を変えれば、ソフトや半導体の技術マネジメントスキルが欠けていたということになる。 しかし、それだけのことか、考えておく必要があるのではないか。
それに、この先どう発展させるかよく見えない点もある。 又、同じ轍を進んでいないか、えらく気になるのだ。 少し考えてみよう。 何故世界に冠たるテレビ事業が不調になったかと言えば、その原因は素人でもわかる。急速な液晶化の流れについていけなかったからだ。 そのため、急遽、サムソンとの合弁で液晶パネルを生産し、キャッチアップを図った。アモルファスTFT生産技術が蓄積されていないソニーの後追いはリスクが高すぎるから、自然な選択と言えよう。しかし、大規模投資を敢行した訳で、この生産キャパシティを生かせる販売量を実現する必要がある。ソニーならではの決断と言えよう。 さらには、シャープと合弁で、さらなる大型ガラス基板を使った生産も進めることになった。リソグラフィーからインクジェットへの転換も始まっているから、大幅コスト削減可能と踏んだのだろう。こちらにしても、ソニーが技術的に寄与できそうなのは、周辺材料止まりであり、状況は変わっていない。 この動きで見て取れるのは、両者ともに大規模投資であり、液晶テレビ時代は結構長いと踏んだということでもある。ここがポイントである。 それでよいのだろうか。 ご存知の通り、2007年10月、ソニーは世界初の11インチの有機ELテレビを\200,000で発売した。(3)2008年9月に開催されたCEATECでも、薄さ0.3mmの11型パネルを展示しており、(4)相当に力を入れているのは間違いない。トップ自らイノベーション創出の伝統復活と発言しているところを見ても、(5)有機ELを次世代のテレビ技術と認知したということだろう。確かに、この薄さと、カラーの美しさは抜群。その判断に、思わずうなづきかねないが、逆に、一抹の不安も生まれる。 液晶だろうが、ELだろうがテレビはテレビ。有機ELが主流になるなら液晶は廃れ、両者が並存する必要はないのでは。と言うことは、液晶パネル製造設備への大規模投資を敢行したのだから、有機EL時代は相当先と判断したということではないのか。 実際、中型パネルたしいが、有機ELへの投資予定額は液晶に比べると極めて小さい。(6)液晶の初期の頃の投資レベルと変わらない。 このことは、有機ELの製造コストはまだまだ高く、普及は相当先と見なしたということだろう。 問題は、この判断が正しいかだ。 そう思わされたのは、台湾のディスプレイメーカー奇晶光電[Chi Mei EL(CME)]が10月29日、日本で開催されているFPD International Exhibitionで、25インチのWXGA有機ELテレビを展示したから。(7)明らかにソニーにぶつけてきた印象。と言っても、CMEが25インチテレビを出すと発表したのは2006年のことで、(8)今更驚く必要はない。小型の有機ELディスプレーの歩留まりが十分高くなってきており、大型化に踏み込む段階に来たと言われ始めているからだ。 ここでのポイントは、封止の信頼性さえ確保できれば、有機ELテレビ製造はそう難しいものでないところまで来たということ。 もしそうなら、有機ELの勝負は価格だ。ただ、CMEが安価品を出すかも知れないが、液晶と対抗できる価格は実現できまい。それは、低温ポリシリコン[LTPS]TFT技術を用いているから。 LTPSは小型液晶で使われている技術だが、これにインクジェット技術を登用したところで、現行の主流であるアモルファスシリコンTFTと価格的に競争できまい。LTPSは製造設備が余りに高くつくからだ。 このバリアを超えるためには、有機ELを現行の大型液晶で用いられている製造設備で作る必要があろう。もしそうだとすると、先行して、LTPSプロセスで有機ELテレビを出しても、後発が大型液晶用設備で生産すれば、コスト的に勝てないことになる。 ソニーは小型液晶製造技術は磨いてきたが、大型液晶製造技術は他社依存。先発優位が生かせるとは限らない。 なぜ、こんな悲観論を述べるかといえば、液晶テレビで遅れをとった理由を思い浮かべてしまうから。 普通に考えれば、ソニーは小型液晶を用いたプロジェクションテレビで優位に立てた筈である。明らかに、大型液晶やプラズマより安価であり、映画視聴にも向く製品なのである。ところが、光源の強力化や、光学システムの大量生産方法に力を入れようとしていた風には見えない。積極的に、プロジェクションテレビ普及を進めていれば、日本市場で売れなくても、米国市場を席巻できた可能性もあったと思う。 しかし、廉価化する液晶ディスプレーを用いたテレビの波を作られてしまい、チャンスを逸したということではないか。 今回の有機ELに当てはまる話ではないが、普及を果敢に進め、流れをつくるところまで踏みけれない点が気にかかる。小型の特徴を生かしたテレビで新市場創出でもよい筈だと思う。トランジスタラジオ、トランジスタテレビ、小型レコード(CD)と小さいくせに素晴らしい性能に皆驚嘆してきたのであり、強引に市場を作ってきたのが伝統だろう。 どこを気にかけているかおわかりになるだろうか。有機ELテレビが、新技術を取り入れた「QUALIA」的商品に映ったのである。 --- 参照 --- (1) RICHARD SIKLOS and MARTIN FACKLER: “Howard Stringer, Sony's Road Warrior” NewYorkTimes [2006.5.28] http://www.nytimes.com/2006/05/28/business/yourmoney/28sony.html (2) http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/viewer/08revision/ (3) 「世界初 有機ELテレビ発売〜最薄部約3mm 未体験の高画質〜」 SONYプレスリリース [2007年10月1日] http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200710/07-1001/ (4) “「CEATEC JAPAN2008」出展のご案内 SONYプレスリリース” [2008年9月29日] http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200809/08-0929/index.html (5) Vivian Yeo: “Stringer: Sony Has Recovered its Innovation Edge” ZDNet Asia(Buseiness Week) [2008.9.10] http://www.businessweek.com/globalbiz/content/sep2008/gb20080910_683378.htm (6) 「中大型有機ELパネル生産技術確立のための約220億円の設備投資を計画」 SONYプレスリリース [2008年2月19日] http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200802/08-024/index.html (7) “CMEL introduces new tech to make better AMOLED displays” OELD.com [2008.11.4] http://www.oled-info.com/cmel-introduces-new-tech-make-better-amoled-displays (8) “CMEL and CMO develop 25-inch AM OLED TV panel, geared to produce 2.0" & 3.0" AMOLEDs.” OELD.com [2006.10.18] http://www.oled-info.com/oled_tv/cmel_and_cmo_develop_25_inch_am_oled_tv_panel_geared_to_produce_2_0_3_0_amoleds (鍵のアイコン) (C) Free-Icon http://free-icon.org/ 侏儒の言葉の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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