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2008.1.24
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1冊の料理本を読んだ…

 〜朝食レシピ(1)
 【材料】 水、ベーコンの塊、皮を剥いた丸ごとじゃが芋、ブイヨンのキューブ(少なめ)
 【手順】 夜 材料を鍋に入れ1〜2時間ほどストーブまかせで炊く。
        そのまま一晩置く。
      翌朝 鍋を温めセロリを刻んでふりかけスープ皿に盛り付ける。

  普通はストーブが無いから 代替調理器具としては真空保温鍋になろう。


 なぜ食事の話を始めたのかと聞かれるが、理由はご想像におまかせするとして、きっかけは、たまたま出会った1冊の料理本である。表紙の写真が印象的だったので手にとってみた。(1)
 小生の場合、中味を早く見たいので、右手で本の背を押さえ、左手で裏表紙からページをザーと捲って全体を眺めることがある。本を傷めかねないから、マナー違反だが、そうしたくなる本がある。この本はソレ。
 すると、ご自宅の窓から桜が覗く食卓の写真に出くわした。白ワインと西洋料理というなんということもない情景だが、なぜかデジャブー感に襲われたのである。と言っても、このお宅は醍醐寺近辺の緑に囲まれた一軒家。小生の住環境とは全く違うのだが。
 ともあれ、じっくり読んでみたくなったのである。

 著者はご夫婦で、サラリーマンとその奥さん。子年生まれで、70歳を越している。そのお二人の人気ブログがこの本の内容。

 これだけの情報だと、のんびり仕事をしながら、悠々自適の生活をされていると思ってしまうが、ハズレ。
 結構大変な生活だったようである。朝6:25起床、7:05に自宅を出て仕事場に向かう。昼食は喫茶店で、コーヒーとトースト。帰宅は夜10時。
 この生活パターンで、奥様の手抜きなし料理が続いてきたのだ。しかも、それが、インターナショナル感満載で素敵なのである。
(和食系を欠くインターナショナル料理紹介本ではない。自家製の切干大根・沢庵の話はあるし、蛸飯・栗ご飯・焼き鱧と水菜鍋・牡蠣雑炊・お雑煮も登場する。)

 一般人にはとても真似できそうにない。
 しかし、本来、食とはそういうものではないかと思う。そこまで追求してこその美味しさであり、その結果、食の愉しさがわかってくるのではないだろうか。
 ただ、そんなことは頭でわかっていても、一般のオジサンにはとても追求しかねるのが現実。しかし、やり方はあるのではないか。  ・・・そんな気持ちになったのである。

 と言うのは、ひょんなことに気付いたからである。
 コーヒー好きで、若い時はブルーマウンテン豆を轢いていた位だが、簡単で美味しいので、1回分のコーヒー粉がパッケージ化して売られているネスプレッソを飲むようになったという。
 そうなのである。これこそが大企業の力。安心して飲めるものに仕上げる訳だ。
 紅茶にしても同じこと。リプトン紅茶など、水が大きく違わなければ、どこで飲んでも全く同じだ。その品質管理には脱帽もの。

 ところがである。
 豆をもらい、使っていなかった立派な鋳物製のコーヒー豆轢きを使って飲んだら、その味に魅せられてしまったというのである。そこで、コーヒーはその店と決めたという。
 よくある話。食の美味しさの原点は素材だからだ。
 これは嗜好品だけにあてはまる訳ではない。

 ただ、それをどの範囲で、どこまで深く追及するかは、人によって違う。
 当たり前だが、それはそれぞれの人の生活スタイルで大きく変わる。他人の真似はできないのだ。
 料理を始めようというオジサンは、ここがはっきりしていないのである。電子レンジで調理する冷凍食品や、コンビニ弁当ではなく、どうして自分で料理をしたいのか見つめ直すことが出発点である。それができないなら、スーパーで売っている惣菜パックに頼った方が無難である。おそらく、その方が安価で時間もセーブできる。
 オジサンとホテルで食事をしていて、「ホテルで食べつけると冷凍食品など、とても食べる気がしないよ」と言われ、対応に窮したことがある。この時食べていた料理、ホテルのレシピで作ってあるが、実は、ベースは冷凍品なのである。ビジネスマンなら算盤をはじけば想像がつきそうなものだが。

 想像がつくと思うが、この料理本の著者は自家菜園をお持ち。お庭の柚子の木には、蜜柑箱4箱ぶんの実が鈴なり。しかも、窓から見える距離に農園。魚屋さんも、やってくる。旬の産物を送ってくれる方も。
 都会の住民からみれば、外食なしの、極めて贅沢な食生活を追求しているのだ。

 その典型は、ポトフのような“夜明けのポテトスープ”(冒頭のレシピ参照)や、椎茸生食の“しいたけのにんにくオイル”。
 このレシピを見て、特別な調理技術は不要だということで都会のオジサンが似たものを作っても、おそらく、たいしたものはできない。素材の質が違うからである。
 オジサンは、先ずはここを理解する必要がある。

 新鮮なジャガイモや椎茸の味は格別だが、都会ではそう簡単にその美味しさを知ることはできない。
 このお宅の椎茸は自家栽培品。それがどれだけ美味しいかは、地場の自然もの最上級品の採りたてを食べればわかる。言うまでもないが、高価である。
 間違ってはこまるが、オジサンに高級食材の使用をお勧めしているのではない。形は悪いが、スーパーの安売り品以下の値段でも素晴らしいものも多いからだ。これを見つける能力を磨く必要があるということなのである。
 はっきり言えば、都会では、高級品が不味かったりすることが結構多いのである。(時々、それを美味しいと言う人もいるが。)農産物とはそんなものである。
 わかり易いのは、採りたてのジャガイモだ。先ずは、この美味しさを知ること。不思議なことに、そんな商品が一番安価だったりする。

 一流料理人や料理研究家のレシピを参考にするのは、素材の美味しさがわかってからの話。
 先ずは素材選びと味のトレーニング。それに最適なのが蒸し料理なのである。
  → 「蒸し料理の話 」 (2008年1月17日)

 --- 追記 ---
味の訓練とは, 味そのものだけではなく、温度感覚・食感や食べ物を取り上げる際のモノの感じ(触), 料理の見かけ(視), 香り(嗅), 調理音や食べる際の音(聴)も含めた総合的なもの. 美味しさは主観的なものであり, トレーニングとは, 五感を研ぎ澄ませることの愉しみを知るためのもの. 概して, オジサンは五感ではなく, 頭で美味しさを追求しがちだから, ここから始めるべきだと思う.

 --- 参照 ---
(1) 岡西克明/松子: 「いつも、ふたりで ばーさんがじーさんに作る食卓」 講談社 2006年10月 [表紙photo: 久間昌史]
  [blog] http://sesenta.exblog.jp/
(食器のイラスト) (C) KANO'S FACTORY http://www.chocolat25.com/kfactory/



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