トップ頁へ>>> |
オジサンのための料理講座 ←イラスト (C) SweetRoom 2008.2.7 |
「料理講座」の目次へ>>> |
|
卵焼のお勉強…「巨人 大鵬 玉子焼き」という言葉を知っているのは, 高度経済成長期に卵を喜んで食べていた人しかいない. そんなノスタルジーを大切にしている人は, 現代の家庭の味を追求してみたら如何. お茶漬を作って、出汁の味がわかってきただろうか。 → 「お茶漬け作りのお勧め 」 (2008年1月31日) そうなると、味噌汁を作りたくなるだろうが、それは早すぎる。味噌には余りに多くの種類があり、その味で結果が大きく左右されすぎるため、味の勉強が中途半端で終わってしまうからだ。 それでは、何がよいかといえば、卵焼きに限る。 この料理、簡単に見えて、結構難しい。卵料理はそれが宿命だが、茶碗蒸しのような難しさとは違うのである。 一番の問題は、どんな玉子焼きが一番か、なんとも言えないから。好みが千差万別なのだ。それこそ、蓼食う虫も好き好きの世界である。 にもかかわらず、料亭や料理学校のプロの推薦レシピを学ぶなど愚の骨頂。自分の好みに合わせることがなにより大事なのだ。 こんな勉強ができる料理はなかなか無い。 まあ、誰しも、ご幼少の頃から玉子焼きを味わっていたには違いないのだが、その味とはどんなものかは意外とわかっていない。そして、それが美味しいと呼べるものかも。 そこで、色々と試みてみることをお勧めしたい。
前者は、もともとが鮨屋の「玉」。本来は、それぞれの店が作るものだが、それを一括して提供しているのが築地の専門店の発祥の言われ。従って、結構硬いし、甘味が際立つ。江戸時代は、鶏卵と砂糖は高級品だったから、そうなるのも無理はない。最初は鮨ネタでは無く、料亭や弁当の一品だった筈。今でもその江戸料理としての玉子焼き製法を守る店があるそうだ。 一方、後者は「だし巻き」。名前からして考え方が違う。素材を柔らかくして、出汁を十二分に含ませることで、旨味を徹底的に愉しむ食べ物に仕上げた訳だ。 こちらの主流は鶏卵屋さん。おそらく、工場製品はこちらの系統が多いのではないかと思う。ただ、それはチルド棚での話。鮮魚売り場に並んでいる玉子焼きは鮨系だろうから、魚卸の副業の可能性が高い。味も相当違うのでは。 しかし、東京の場合、卵焼きの味を知りたかったら、お蕎麦屋さんで注文するのが一番だと思う。 店によってできは様々だから面白い。硬さ、甘さ、出汁加減、色、餡の有無、大根おろしの有無、と本当に様々。これだけでも、食べ歩けば結構楽しいとおもうのだが。 ただ、仕方なく作っているとしか思えない店もある。蕎麦汁は美味しいのに、玉子焼きは今一歩の店もあるから不思議だ。自分で作った方が余程美味しいと感じることは少なくないのである。 これなら、勉強しがいがあるということである。 それはそれとして、どのように卵焼きを勉強すればよいか、ガイドラインを記載しておこう。 【初心者は道具にこだわらないこと。】 玉子焼き用の美しい道具もあるが、まずは自分の家にあるものを使うこと。フライパンだろうが、中華鍋だろうが、なんでもかまわない。 そして、勉強は、まだまだ“素材の味”を知る段階であることを忘れないようにしよう。ただ、卵焼きは、調理でも少し差がでる。ここが面白いのだが、とりあえずは、調理方法を身につけるのではなく、好きな味を知ることに力を注ごう。 従って、卵、出汁、調味料の選定は重要である。卵焼きのよいところは、これらの素材について、様々な商品を試せること。しかも、それほどお金と時間がかかる訳でもない。 健常人なら、毎日1個程度の卵の量に抑えれば、問題はないだろうから、様々な玉子焼きを食べてみることができる。これがよい。 【鶏卵、出汁は何でも結構。色々使ってみることが大事。】 先ずは、鶏卵だが、スーパーにはそれこそピンキリ状態で商品が並んでいる。差を見るには絶好の機会。 出汁も自家製にこだわる必要もない。瓶入り「白出汁」を使ってみるのも手だし、水に溶く必要はあるが、簡便そのものの粉末「出汁の素」で愉しむのもよいだろう。 コスト・便利さと味のバランスを考え、どれが良いか自分の頭で決めるだけのこと。最高の素材にこだわろうが、最安値で美味しさを追求しようと、勝手である。 これこそが自炊料理人になるための一歩なのだ。 そのために、他の素材をどう選ぶべきか簡単に記載しておこう。 【油は普段使っているものを使うこと。】 キッチンにあるからといって、胡麻油や ピーナッツオイルのように、香りに特徴があるものは避けよう。 油の美味しさで食べないようにすること。但し、油無しの電子レンジ加熱調理は勉強にならないから止めておこう。 【調味料や添加物は適宜入れるだけのこと。種類と量は自分好みで。】 目的から考えると、調味料を加えず、醤油と出汁味の餡やタレを掛けるとか、醤油と大根おろしで食べるのがよいのだが、一寸面倒である。それに、いわゆる家庭料理としての「玉子焼き」や「だし巻き」を食べたいだろうから、お好みで調味料を選んだらよい。但し、その量はできるだけ減らすこと。多く入れると急に不味くなることが多いからだ。ただ、甘いのがお好みの方はそうはいかないかも知れぬが。 ・塩、醤油 ・砂糖、味醂、酒(東肥の赤酒がなかなかのもの.)・・・甘系は多く入れると焦げ付く。 ・胡椒 添加物は、卵焼きの物理的構造を変えて、食感を良くするために使う。お勧めはしないが、ほんの微量でも効果はある。ただ、少しでも量が多過ぎると大失敗。 ・酢:焼く直前に極微量加えると蛋白質が変性し弾力性が増す。 ・片栗粉:水に片栗粉を溶かし、出汁を加えると、ふあっとした感触が出る。 【味の好みがわかったら、混ぜ物に挑戦するのもよいかも。】 自分なりの好きな卵焼きがわかってきたら、味のバラエティを考えるのは自然な流れ。ここは工夫である。ウエブを眺め、どんなものが合いそうか検討するのも一案。 よくあるのは、海苔や紅生姜。博多っ子なら明太子かも。 ただ、オムレツを作っているのではないから間違えないこと。又、ナンプラーを掛ける東南アジア系の食文化を取り入れない方がよい。しつこいが、卵料理を勉強したいのではない。目的から逸脱してしまえば元も子もない。 【焼けば必ず固まる。従って、作り方は気にせずやってみることだ。】 見栄えを気にしないこと。多少焦げたり、形が崩れたところでかまわないとの割り切りが必要。出汁と蛋白質の旨みに加え、食感の愉しさと味付けの機微を愉しめばよいと割り切ろう。 ともかく混ぜで焼くだけ。余計な心配をするより、作って食べてみること。そして、味の評価を忘れずに。 尚、茶碗蒸し作りではないから、一様に混ぜることに熱中しないように。かき混ぜて空気が入ると、玉子焼きらしくなくなるからだ。 (白身を切り、黄身を壊して、全体がなんとなく混ざっている程度の雑なやり方で十分。) 柔らかくて、旨み成分過多な卵焼きをベストと考えるなら、お勧めの作り方を参考にするのもよかろう。真似すれば、間違いなくできる。 おわかりだと思うが、これこそが現代の味の傾向そのもの。ヘソ曲がりは、この味と食感は嫌いというかも知れない。 → 「ためしてガッテン “即免許皆伝! 卵焼きの奥義” 」 (2006年8月23日) (C) NHK 勉強は奨励するが、どんな卵焼きが好きかは、個人の好みであることを忘れずに。 何回もしつこいのは、なにが美味しいか探求する楽しみを、卵焼き作りを通して知って欲しいから。従って、それを否定するような学び方は断じて避けるべきである。 楽しみがわかってくれば、自然と自炊をしたくなるものだ。 --- 参照 --- (玉子焼きのイラスト) (C) yoshie “ヴィラージュ・クッキング素材集” http://homepage1.nifty.com/steak/sozaisyu.htm 「料理講座」の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2008 RandDManagement.com |