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2008.2.21
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自炊成功の鍵とは…

  つくりたい料理イメージを浮かべることができれば 自炊は自然と続くし 楽しくなってくる. コレ, あたりまえなのだが.

 つい豚肉の塊料理をお勧めしてしまったが、和食を期待していた人はがっかりしたかも知れない。
  → 「肉料理は豚の塊料理から 」 (2008年2月7日)

 しかし、ご説明した肉料理は、和食を学ぶ上でも結構役に立つと踏んでいるのである。家庭の独自料理確立のためのスキルを磨くという点で。
 まあ、素人だから、偉そうなことは言えないが、目指す料理像がはっきりしていれば、中仏伊亜露のどれだろうが、“学び”のタネを見つけることができるものだ。
 そんなことを言われても、料理をしたことが無い人には皆目わからないかも知れないが。

 そんな方々のために、少し説明しておこう。
 目指す料理像と言うとわかりにくいが、“家庭”料理の真髄を、私はこう考えており、これからそれを学ぶつもりと、自分に言いきかせることと言えばわかるだろうか。これは是非やってみて欲しい。
 決して難しい注文ではない。素直に、何故、自炊したいのか考えるだけのこと。

 例えば、小生なら、こういう風に考える。
 “リーズナブルなコストで、自分好みの、日本の伝統家庭料理を食べるゾ。プロの料理とは全く違う美味しさを愉しむつもりだ。ただ、伝統と言っても、復古的和食ではなく、現在の状況に合わせたインターナショナルな文化の香りが欲しい。パンやパスタもその伝統のなかに取り込むべきだと思うし。”
 自分がどうしたいのかわかったら、次に、できるだけ具体的な料理像に落として見よう。
 これは簡単ではないが、毎日食事をしているのだから、考えつかなかったらおかしい。
 小生の場合は以下のようになりそうだ。 (間違えてもらってはこまるが、こんな記載をお勧めしている訳ではない。頭のなかで、この程度の整理ができないと、どんなトレーニングをしたらよいかわからないというだけのこと。)
  ・料理構成の基本パターン(澱粉系主食+おかず[副食]+液モノ)は厳守する。
    そして、できる限り、これらすべてを、同時に頂く。
  ・「おもてなし」料理と「酒と肴」はこれとは別だが、できる限り同じ発想で対処する。
    - 酒を“主食+液モノ”と見なし、食べながら飲む。
    - 様々なおかず[副食]を大皿で供すやり方でおもてなしも可能だ。
  ・自作ファーストフード(茶漬・麺類・丼物・握り飯)は、基本パターンを暗示したものになるよう工夫する。
  ・メニューは始終変え、“バラエティの豊かさ”と“バランスの美しさ”を愉しむ。
  ・素材そのものの美味しさを味わえる料理を中心にする。
    - 主食は、シンプルな澱粉食。出来立ての美味しさを重視。
    - 副食や液モノは、できる限り素材の特徴が出る調理法を選ぶ。(癖ある味を消さない。)
    - 素材の微妙な味を消しかねない調理方法[揚げ物]は避ける。(低品質素材だったら致し方ないが。)
    - 他の味を隠しかねないから、甘味はできる限り抑える。
    - 香辛料や薬味は素材を引き立たせるから上質なものを色々使ってみる。
  ・好みの味付けと独自の匙加減でわが道を行く。
    - レシピ盲従や、計量スプーン的な味付けは行わない。(自分で適当に味を決める。)
  ・素材や調味料のコストパフォーマンスをよく考える。
    - 安価な高品質素材の利用を旨とする。(高価な食材利用はベンチマーク用。)
    - 調味料類は価値に応じた利用方法を追求する。廉価品でもよいが、高価なものも不可欠。
        例えば、“一汁”には自製出汁を使うが、煮物用は効果が小さいから市販品。
        ブイヨンや中華系は使用頻度が少ないので工業製品利用。
  ・上記のルールが守られるなら、素材、調味料、料理形態、はオープン。
    (グローバルな材料と文化の取り入れ)
  ・自分好みの家庭の味を完成させる。(レシピ指定通りの調理をできるだけ避ける。)

 こんなことが決まってきたら、ポイントを定めること。
 例えば、素材の味を愉しむことと、自分なりの好みを取り入れる余地に着目する。そして、それなら、どういう勉強が望ましいか考えるのだ。
 ・・・この着目点とは、換言すれば、自炊をしたい一番の理由でもある。従って、何をすべきか見えてくるのである。
 上記の場合、素材調達は手抜きできないことがわかる。調理より、食材購入の方が重要かも知れない。又、調理本で練習しても余り意味はなさそうである。味は自分で決めるしかないからだ。
 しかし、そんなことが初心者にできるとは思えまい。無理と思うなら自炊を諦めた方がよい。今の時代、無理に自炊する必要などないのだから。
 だが、蒸し料理や、茶漬けなら、どうだろう。できないだろうか。
 これでおわかりになったろうか。

 もう少し解説しておこう。
 初心者だから、料理に失敗する可能性は高い。そうなれば、とんでもない失敗作を食べるしかない。これはたまったものではない。従って、そんなことがおきそうにない料理から順に勉強するのがベストではないだろうか。
 そんな配慮をしても、今一歩の出来かもしれない。もし、そんな状態が続くなら、自分は自炊に向かないと諦めた方が賢いのでは。まさに決断のしどころ。
 そんなのは嫌だと言うなら、不退転の決意で取り組むしかなかろう。ビジネスシーンでは、これを“創造的緊張感”が走った状態と呼ぶ。話は外れたが。
 そんな状態になれば、不思議と、凄い料理ができるもの。後は一気呵成に勉強するだけ。勉強もどんどん面白くなる。

 尚、ここで注意すべき点が一つある。
 伝統食を追及するといっても、人気の和食(握り鮨,しゃぶしゃぶ,天麩羅,すき焼き)は、上記の範疇から逸脱してしまう。このことは、これらの料理は、外食が妥当ということ。
 だからと言って、自炊の対象にしないといったドグマ論はよそう。食には、刺激も必要であり、このような類の食事は、非日常感を愉しむものとして、別途位置づければよいのである。
 その程度の柔軟さは必要である。

 ここまで説明すれば、お茶漬、蒸料理、卵焼、豚肉の塊料理をお勧めした意味がお分かりいただけたのでは。

 再び、上記の方針に戻るが、具体的に勉強するには、ポイントを絞った方がよい。全体を俯瞰し、方向付けをするのだ。方針納得のための再確認作業と言ってもよいだろう。
 例えば、新鮮な素材の美味しさを求めたいならどうすべきか。ここで、食材を生で食べるのがベストと短絡しては元も子もない。刺身で自分好みの料理などできる訳がないからだ。一方、野菜なら生食はサラダになる。だが、これはドレッシング味で食べるもの。フレンチのソース掛け食文化に近く、思想的に相容れないもの。
 そうなると、次善だ。それが、蒸料理・焼料理。ここら辺りなら、素材の味がよくわかる筈。
 しかし、煮料理になるとそうはいくまい。味付けで素材の味がカバーされかねないからだ。
 それでも、淡い味付けならまだ良いが、甘味を加えたりすれば、素材の複雑な味は皆目わからなくなる。この調理法は、低品質素材を美味しくするのには向いているが、味覚能力を下げかねない。従って、初心者が最初に挑戦すべき料理方法としては不適なのである。
 揚げ料理に至っては、ほとんどが油の旨さだ。こんなものを習ったら、折角の味覚トレーニング成果が灰燼に帰す。
 こんふうに考えていけば、どんな料理でどのように勉強すればよいか見えてくる筈。

 こんな話をしても、初心者は、なかなか合点がいかないかも知れぬ。
 どうしてかと言えば、料理経験ゼロのオジサンを対象とした家庭料理講座のカリキュラムがそうなっていないからだ。見栄えよい料理が並ぶものもあるが、以下のような料理体系を教えようと企画されているものが多い。
 ・御飯を炊き、出汁をとる。
   味噌汁(豆腐と若布、なめこ汁)
 ・包丁で野菜を切り、魚を卸し、煮物をつくる。
   魚煮物(鯖味噌煮、鰤大根)
   肉煮物(肉じゃが、冶部煮、筑前煮)
   野菜煮物(里芋煮ころがし)
 ・野菜を茹でて、おひたしを作る。
 ・他の調理方法による魚や肉の一品もの。
   魚(秋刀魚塩焼、鰤の照り焼き、鮭のホイル焼)
   肉(豚肉生姜焼、ハンバーグ)
 これはこれで悪くないカリキュラムだ。だが、こんな勉強をして、最近流行の定食屋より美味しいものができるだろうか。ここが肝心。できないなら意味は薄い。
 その割には、初心者にとっては、ハードルは結構高い学習である。
 これに輪をかけたようなものが、お洒落感ある料理コースだ。そんな勉強をしたところで、初心者は自宅に帰れば全く同じ料理しかできない。まさか同じ料理を繰り返し食べるつもりはあるまい。
 これは料理を学んでいるのではなく、自炊体験を愉しんでいるのではないか。それなら、そうと割り切るべきだろう。

 最後に結論を言おう。
 初心者が最初に学ぶべきは、多くの場合調理技術ではない。目標としている料理に関する、味の評価技術なのだ。
 割烹に慣れているオジサンは、料亭料理に挑戦するならよいが、上記のような家庭料理への挑戦は難しいということ。居酒屋好きのオジサンも同じ。鍋やおでんならすぐにもできるが、朝食はたいしたものができない可能性が高い。
 それに、素材調達分野でなんのスキルも持っていないから、素材でどの位味に差がでるかさっぱりわかっていない。このことに早く気付く必要があろう。

 残念ながら、料理の本は五万とあっても、調理技術の話ばかり。味の評価技術を鍛える本は見かけたことがない。従って、料理本で学んでも、見当ハズレの努力かも知れないのだ。

【実践例での解説】
ちなみに、上記のイメージに沿って、都会から離れた場所で作った休日の和風朝食は、以下のようなもの。
調理時間約40分。ポイントは地場品調達。(圧倒的に高品質で、価格は都会の半分以下の素材。当然ながら、常時あるとは限らない。参考までに、価格を記載した。)コストパフォーマンスが悪くないならナショナルブランド品も選定する。
ともかく、割ける時間を考え、予算内に収まるように、目標とする食を実際に作って見ることだ。
そして、この食事を、普段生活している都会での平日に持ち込む算段をする。ここが頭の使いどころ。どの質をどの程度担保すべきか考え、妥当な朝食予算に収まるよう、素材の調達方法とコスト増減策を練るのである。これは結構難しいがビジネスマンなら驚くような話ではなかろう。それに、主婦よりこうした勘が発達していると思うし。但し、素材の質の評価ができなければ、全くのお手上げである。ここが鍵なのである。
●典型和風朝食の場合。
 ・炊きたて御飯: 炊飯器で無洗米の胚芽米1合を炊く。 (都会で購入した精米後数日品2Kg\1,000)
 ・味噌汁: 昆布一切れと地場の削り節一把みで出汁をとり、都会で購入した好みの市販味噌で作った。
      - 木綿豆腐昨日の残り (地元豆腐屋で購入した大き目な非密封品 1丁\160)
      - 国内産干しあおさ少々 (1袋50g \500)
 ・自家製豆鯵の干物: 地元朝獲りを前日入手。すぐに手開きし1日干したものを魚焼器で焼く。 (8匹\100)
        (専用2段干し網袋は\100で売られている。干物作成に、干し網袋以外、特別な道具は不要。)
 ・大根おろし: 地場品の大根を使う。 (1本\80)
 ・戻し干し大根: 地場品の干し大根少量を戻して 酢醤油に漬け 冷蔵庫で1日保管。 (乾物1袋\100)
 ・蒸し白菜のおひたし: 地場品白菜 (小振りのもの\60)と地場採りたて柚子 (小粒5個\100)
 ・温泉卵: 生卵を鍋で10分温めた。 (賞味期限がかなり先のナショナルブランドの卵10個パック キャンペーン価格品)
      タレを作らず、醤油を数滴たらす。 (再仕込み醤油小瓶)
 ・蜜柑: 地場品中粒 (多分農家選別落ち 6個\100)
 ・食後は緑茶で一休み。
●洋風朝食なら、こうなる。
都会から離れると、低価格高品質な肉類の調達はかえって難しくなるのかも知れない。
 ・焼きたて丸パン: 市販の専用粉100g/牛乳少々/卵1個をヘラと箸で混ぜて捏ね、すぐにオーブン(電子レンジ兼用機)で20分ほど焼く。
   この専用粉は売っていないことが多いが、その時はメニューをホットケーキに変更。
 ・好みのバター/橙ママレード/レモンジェリー [メープルシロップLight No.1]
 ・ホットミルク(ノンホモ)
 ・自家製茹で豚(背ロース)数切れと粒マスタード
 ・茹で菜花、生人参スティック、自家製アイオリソース(マヨネーズ風): 地場品菜花 (1把 \100) 地場品人参 (小5本 \100)
 ・プレーンヨーグルト・ブルーベリーのせ・蜂蜜かけ: 低脂肪ではないナショナルブランドのビフィズス菌ヨーグルト(セール品)
 ・食後は紅茶で一休み。

 --- 参照 ---
(御飯と味噌汁のイラスト) (C) Hitoshi Nomura NOM's FOODS iLLUSTRATED http://homepage1.nifty.com/NOM/


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