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2008.4.9
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茄子料理への誘い…


 茄子は93%が水。従って、2日ほど放置すると、すぐに硬くなってくる。
 そんなものを買わされないように。
 当然ながら、購入して、冷蔵庫のような乾燥した場所に入れれば、すぐに萎びてくる。
 それに、間違っても、冷温(5度以下)保存しないこと。質はますます落ちるからだ。

 カリウムが含まれているとはいえ、栄養上の魅力は乏しいが、(1)親しみが湧く野菜である。
  → 「茄子の話」 [2007年8月7日]



Photo by (C) Tomo.Yun >>>


 さて、そろそろ、野菜素材をベースに料理を考える頃あいだろう。
 つまり、安価で良質な野菜を見つけたら、それを使って食事をしようということ。
 こんなことは、かつては当たり前だったが、残念ながら、今やそんなことができる人は稀である。

 それでは、どんな素材から始めたらよいかといえば、答えは自明である。
 などと語ると、小学校の家庭料理実習に出てきそうな、粉ふき芋の馬鈴薯、蒸かし芋の薩摩芋、煮物としての人参、といった類を思い浮かべるかも知れぬが、これでは余りにつまらぬ。ともかく、子供の真似など御免こうむりたいところだ。

 それなら、何が良いかといえば、茄子である。コレ、どう見ても大人の野菜だと思う。
 一応、夏が旬で、秋まで採れるとされるが、スーパーでは通年みかける。お陰で入手し易いし、なんと言ってもよいのは高価ではない点。
 しかも、良質なものが、安価で売られることがある。これが狙い目。良質で廉価な素材で料理を作りたいなら、このチャンスを逃すべきではない。

 さらに嬉しいことには、棘がついているヘタ部分を切り取りさえすれば、果肉から皮まで全て食べることができる点。
 そして、例外もあるが、生では使えない。
 初心者用の料理食材としてはピッタリではないか。ただ、袋入り5本では量が多すぎてすぐに使い切れないから、敬遠する人も多かろう。

 しかし、趣味の食事を追求するなら別だが、こうした考え方は止めるべきだ。良品が安売りされている時に、量が大目でも、購入する習慣をつけたいものである。得てして、こういう時が一番上質だからだ。実は、これこそが自炊の妙味でもある。

 そう言われても、残って捨ててしまうと思えば、購入を躊躇してしまう。従って、それを防ぐための手立ては必須である。以下の、2つの方法に慣れる必要がある。
  (1) 天日干し
    ほとんどの野菜は天日で干せば長期間使える。それに、干せば、甘味や美味しさは濃縮されるし。
    100円の2段干し網に、茄子を縦割りか、輪切りにして入れ、日光に当てるだけのこと。
    午後3時には取り込むことさえ忘れなければ、2日もあれば完了。
    多少面倒だが、なんの難しさもない。こんな使い方は、ほぼ忘れ去られているようだが。
    尚、津軽では「干なすの油炒め」(2)が郷土料理として残っているそうだ。
  (2) 軽く炒めて冷凍
    薄い輪切りにして、軽く油炒めして、冷凍保存する。どんなものにでも使える。
    切った際は、すぐに水に晒せば果肉が酸化色にならない。

 前置きが長くなったが、それでは、どんな茄子料理をしたらよいか、語ろう。
 と言っても、それは、実は簡単ではない。レシピの数が半端ではないから、初心者にとってメニュー選択は結構難しいのである。(3)

〜 茄子料理の勝手な分類 〜
A-1 焼き茄子
田楽
A-2 漬物
御浸し
A-3 [非推奨]
B-1 肉炒め 挽肉(麻婆)
豚肉/鶏肉
B-2 肉脂 カレー
C-1 油焼
C-2 油味 油炒め+調味料
チーズ焼
素揚げ/揚げ浸し
天麩羅
C-3 パスタの具
D-1 味噌汁の具
D-2 醤油煮 煮びたし
D-3 スープ類似 ラタトィユ
D-4 グラタンの具
 まあ、何から始めようとよいのだが、4種類の味の決め手を理解することが出発点ではないかと思う。
     (A) そのものの味と食感
     (B) 肉の味
     (C) 油の味
     (D) じっくりと煮込んだ味

 必修は(A-1) の「焼き茄子」である。焼いて皮を剥くだけ。熱い上に面倒だが、それだけの労力をかけても美味しいと感じることができるか、やってみること。
 その上で、(C-1) の「油焼」を作るとよい。好きな大きさに切り、フライパンに油をひいて焼き、調味料(生姜醤油とか、味付き味噌等)を付けて食べる。手がかからない簡単料理だ。
 この時、できる限り、油の量を少なくすること。「焼き茄子」や「蒸し茄子」と近ければ近いほど良い。油の美味しさで食べず、茄子の味を知るための料理にしたいからである。

 とはいえ、茄子は油とよく馴染むのが特徴。従って、味噌味も合う。
 これを理解した上で、さらに、様々な料理に挑戦したらよい。
 だが、油を食べるような(C-2)よりは、肉系料理の(B)をお勧めしたい。
 別に難しいレシピを選ぶ必要はなかろう。例えば、麻婆茄子なら、合わせ調味料もあるし、混合するだけで完成する、挽肉入りレトルトも市販されている。カレーなら出来合いのルーで煮込むだけでも出来上がり。もちろん手が込んだ料理でもよいが。

 そして、茄子が好きになったら、(D)の煮込み料理に入ろう。
 和風なら、(D-1) の「味噌汁」もよい。好きな薬味でも入れれば、茄子そのものの味を楽しめる。
 そして、家庭料理の定番である(D-2) の「煮びたし」もよかろう。洋風なら、茄子以外の野菜も加えて、(D-2) の「ラタトィユ」もよかろう。言うまでもないが、少量の油が加わっているから美味しさが増すのである。

 尚、干し茄子は、煮込む過程が入る料理なら使える。当たり前だが、時間をかけないと、硬さを感じてしまう。逆に、それだからこそ、カレーには向いていると思うが。
 ただ、油炒めの場合は、戻す必要があるから少し面倒である。

 --- 参照 ---
(1) 凍結乾燥品に生体調節機能成分が含まれているとの報告がある. [タイトルだけで論文は読んでいないから内容はわからない.]
  K.Shinohara, et.al: “Effect of Aqueous Dialyzates of Some Freeze-dried Vegetables
  on the Mutagenicity of Trp-P-2 toward Salmonella typhimurium TA 98 and TA100” 日本食品工業学会誌 38, 235-241 (1991)
(2) 「これが、歴史と風土に育まれた本物の津軽の味です。〜津軽料理遺産として133種類の郷土料理を認定しました〜」
  青森県中南地域県民局地域連携部地域支援室 [2008年1月25日] http://www.pref.aomori.lg.jp/ch-kyoku/jongara/pressrelease.pdf
  「津軽料理遺産・認定料理一覧(2008年1月23日現在)」 http://www.tsugaru-ryouriisan.com/top2/list.htm
  「ほしなすの油炒め」(新潟県高柳町)
  http://www.ecosci.jp/present/r434.html (3) [メニュー集の例] http://cookpad.com/search/category/529/
(*) 蒸し過ぎると色が悪くなるので、初心者にはお勧めできない. 蒸し料理は根菜向き.
(ナスの若実の写真) Photo by (C) Tomo.Yun http://www.yunphoto.net


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